黄さんにインタビュー
このお店を開くに当たって黄さんは、「3年ぐらい前から日本の友人からお店を日本でも開いて欲しいとリクエストされていました。だからその機会が出来たのはとても嬉しい。」とその動機を語ってくれました。「日本でのお茶は、僕が考えているお茶とだいぶ違うのではないかなと思う。日本の人たちは、水を飲むように食事と一緒にお茶を飲むよね。その対極に、とても形式的な特別なものとしてお茶を嗜むという茶道がある。どちらもそれぞれに意味はあって良いのだけれど、台湾のようにお茶そのものを楽しむというやり方が少ないのではないかな。もっとカジュアルに、自由にお茶を愉しむやり方を日本の人に知ってもらえたら、僕はとても嬉しいのだけれど。」
黄さんのお茶は、「自然自在」。お茶と人間の関わりは男と女のようなものだと言います。「時に夫婦のように、在る時はとても大切な恋人であったり、友人であったり。人間の本当の価値は、時間をかけなければ知ることがでない。お茶を丹精こめて育てる、そして味わうのは、人間関係をゆっくりとはぐくんでいくことにとても似てるね。自然のものだから天候の不順に見舞われても投げ出さず、手を抜かずにゆっくりと。そのような関係としてお茶として捕らえると、そこから生まれるコミュニケーションというものがとても大切だとわかるよね。」
最近台湾では工夫茶で飲むお茶は古いからと余り流行っていないといいます。「茶藝館に来るのは老人か日本人が多いよ。」と笑います。台湾で茶藝館が出来始め、工夫茶が流行った20年前、そんな新しいものを吸収しようとした若者だった黄さんはお茶に出会い、お茶にはまり、そして「今でも僕はお茶に対する思い入れはとっても強いんだ。」といいます。そんな黄さんの選ぶお茶は、非常に良質で、特定の知人から仕入れる茶葉を自分なりに焙煎したりもしています。
単なる茶だけを出す茶藝館ではなく、茶菜の楽しみを伝える工夫もこらしたり様々なチャレンジをしてきた彼は、今台北でティーバーを作る計画を持っていいます。そんな彼はお店を見まわしながら、「残念だけどこのお店はいろんな制約があって、台北の竹里館とはかなり趣がちがうんだ。でも、またちがったチャレンジの姿だろうね。」と語ってくれました。
■ 安藤さんにインタビュー
さて、そんな彼の日本でのパートナーとなった竹里館日本代表の安藤さんからもお話をお伺いすることが出来ました。
「私はお茶を通じて各地にコミュニティーを作りたい。この店は、そのための情報発信基地なのです。もともと台湾の人との交流の橋渡しみたいなことに興味がありました。台湾人である私の妻がそんな仕事をしていたということも大きいですね。数年前に2人で台北の竹里館に行って黄さんのお茶に出会ってこれだとおもいました。」
人と人との交流を応援するために、先ずは、お茶会のバックアップをし、講習会やお茶会などを通じて信頼できると思った方には竹里館のブランドを取り扱ってもらう。これらの人たちが茶を切り口にその輪を広げていけるような機会を提供していく。物より価値を提供したい、そんな思いが安藤さんがこのお店を開くベースには在ったようです。
そんな彼が竹里館ブランドでお店を出すことにしたのは、「黄さんのお茶はとてもこだわりがあります。でも、こだわりにこだわっていないところがとてもすごいなと思うのです。こだわるけれど自然で良いではないか、カジュアルなもの、新しいものへも果敢にチャレンジしていく、そんな黄さんの茶や物に対する考え方が、我々日本人にもすんなりと受入れられると思いました。」
「そのために黄さんとは時間をかけてコンセプトのずれが無いように調整をしていこうと思っています。当面台湾茶を少数に絞ったのもそのためです。きちんとスタッフがお茶をお客様に伝えることが出来るというのは、基本だと思うのですね。台北のお店のスタッフとの交流も行っていくし、台湾のやり方を継承しつつ、日本独自のやり方も導入していく。このお店のスタッフが一生懸命お茶を伝えたいと思えるように、さまざまな試みもしていきたいと思っています。」
台湾の黄さんと日本の安藤さんのそんな思いが出会って出来あがった竹里館日本。基本的なターゲットは、お茶にこれから興味を持ちたいという方々。講習会も用意され、、もう一歩先に進みたいという方には、少量しか提供できない黄さんのスペシャルティーなども飲んでいただけるようにしたいのだそうです。
近々、3つのカテゴリーのお茶を飲み比べできる「聞茶セット」をお菓子付きで1000円用意する予定だそうです。とても楽しみですね。
■ 竹里館 http://www.takeurakan.jp/ |