パン文化研究者、舟田詠子さんの講演

日本には世界中のパンがあるけれど、世界の人々がそのパンをどのように大切なものとしてきたか、背景についてはあまり知られていません。 パン文化研究者、舟田詠子さんはその背景を現地調査し、興味深い話を伝え続けています。

今回は、7月8日に行われた舟田さんの講演「ヒトのかたちをしたパンは何を意味する?」の内容をレポートします。

講演する舟田詠子さん。南阿佐ヶ谷ドーモ・アラベスカにて。

日常のパンと非日常のパン

パンにはいろいろなかたちがあります。丸いブール、棒状のバゲット、箱型の食パン……。 日常のパンはシンプルです。一方で、非日常のパンは何かをかたどった象形(しょうけい)パンが多いそうです。生地も卵や牛乳やフルーツなどを加えた結構リッチな配合です。

ヒトのかたちのパンは非日常のパンです。ヨーロッパでは12月初旬の聖ニコラウス祭、の頃に町のパン屋さんのウィンドウに並びます。小麦粉に水分を入れてこねるパンはかたちづくりやすいので、古くから祭事のシンボルとなってきたのですね。

ヴェックマンとクランプース

甲府のパン屋さん、ヴァルト(Wald)製のヴェックマン(Weckmann)

講演で紹介されたヒト型のパンはヴェックマン(Weckmann)とクランプース(Kranpus)です。ヨーロッパ中にヒト型のパンがあります。どこの誰、という決まった人物ではなく、抽象概念を擬人化してパンにしたため、名前もいろいろです。

このヴェックマン、本場では素焼きの陶器のパイプを持っているそうですが、「人のようでありながら性別もわからず、髪もなく、聖人であるとか姫であるとかいったステイタスもわからない。どこか変ではないですか?」と先生。これも抽象概念だからです。もうひとつのクランプースは枝を持っています。こちらは、日本でいう「鬼」ですが、込められた意味はヴェックマンと同様です。

本場のクランプース(Kranpus)
撮影:舟田詠子
松戸のツオップ(Zopf)製のクランプース