パン/パン屋さん取材レポート(西日本)

フール・ドゥ・アッシュ(大阪・本町)

幼少時の記憶や、修業時代の経験、お客さんから感受するイメージからパンが生まれる。それは日々更新され、訪れる人を喜ばせる。アーティスティックなパン職人、フール・ドゥ・アッシュの天野さんを取材しました。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

大阪の人気店

ここ数年、All Aboutの人気投票で、関西のパン屋さんへの票も多く集まるようになりました。大阪のFour de h(フール・ドゥ・アッシュ)は「いろいろなものが入った斬新なパンが面白い」「いつも新しいパンが並んでいてワクワクする」などのコメントとともに、毎年上位にランクインされる人気店です。(参照:ベストパン★2008)

お店は本町駅に程近いオフィス街の一角。お昼時には15~16人ほどの列ができ、横に長い店内をパンを選びながらレジまで進みます。 さまざまなパンが並んだカウンターの向こうのひろい厨房には、パンをつくる天野尚道(ひさみち)さんの姿が見えます。

現在パンをつくるのは天野さん一人。マダムの恵美子さんも手伝う。店名は尚道さんの頭文字hをとって「hのオーブン」という意味。オーブンはパンの大切な最終工程をつかさどるのです。

ピンク色の「小さな花美のフリュイセック」は5歳になるお子さんの名前。マンゴー、リンゴ、クランベリーをイチゴリキュールに漬け込んで、生地に練りこんでいる。楽しい雰囲気を持ったハード系のプチパンが多い。

イマジネーションから生まれるパン

天野さんはもとは菓子職人。東京のイル・プルー・シュル・ラ・セーヌで働いていました。本格的にパンをつくり始めたのは、エリック・カイザーさんがプロデュースしたブーランジェリーイブー(現在は閉店)から。 2004年に独立するときには、パンとお菓子半々の店にしたかったそうですが、最初に冷蔵庫が故障してしまい、とりあえずパンだけでスタートすることに。そういえば店名の前に"PATISSERIE ET BOURANGERIE IMAGINATION"と書かれています。イマジネーション?「基本的に、最初にイメージがあるんです」と天野さん。

店のオープンは2004年。マンゴーフロマージュは今年で5回目のモデルチェインジ。今年はホワイトチョコを練りこみ、表面にマンゴーシロップ。

思わず見入ってしまうのはパンの名前。 「清冽なオランジュ」、「森をさまようミエル」、「'09マンゴーフロマージュ」など、どこか作品ぽい名前がついています。「 もともと芸大で油絵をやっていて、画家を目指していたんです。でも27歳の頃挫折したんですね。ケーキが好きで、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌの弓田さんとの出会いがありました。”ゴッホのようなバナナ”というケーキがあるんですけど、弓田さんは”ゴッホの黄色しか思い浮かばない”とおっしゃって、その意味が僕にはよくわかったんです。そうなんだ、お菓子を作るのも絵を描くのも同じプロセスなのかもしれない。やってみよう、と思ったんです」

パレオマロン(210円)はマロングラッセ、焼き栗入り。フランスでパレロワイヤルを散歩しながら食べた焼き栗のイメージ。

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