パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

ル・ルソール【駒場東大前】(4ページ目)

メゾンカイザーの日本での立ち上げに携わった最初のパン職人清水宣光さんが二年前に開いた店。バゲット、ヴィエノワズリ、食パン、菓子パン、惣菜パン。日本とフランスのパンの幸せな融合のスタイルをレポート。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

国産小麦へのこだわり

店名「ルソール」の意味は「バネ」。いろいろなプレッシャーや環境をバネにしたい、という意味からつけられています。

フランス修業時代に知り合った名店のシェフは清水さんと同い年だったし、後輩は今もフランスでパンを焼いています。彼らと数年後に会い「今、どんなパンをつくっているの?」という話になったとき、日本の環境にいる自分がフランスを真似ていたのではつまらない。それよりも日本のパンスペシオを教えてあげられるようになっていたい。そのとき、日本の素材を使っていなかったら寂しい気がする。そんなこともあって清水さんは自分の店を開くとき、国産小麦を使おうと心に決めました。

オープンのときの失敗談があります。すべてを国産小麦にしたら「配合 間違えたかな?」というくらい、香りも味もいつもと違うものになってしまったのです。 「甘くみていました」と笑う清水さん。現在は店で使っている小麦粉のうち国産は3~4割です。フランス産や北米産の良いところは認めていて、試行錯誤しながら日々研究しているのだそうです。

パンドミ(280円)イギリスパン(310円)
コンプレ(400円)ハード系全般に使うルヴァンリキッドも内麦使用

粉をデザインしたい

清水さんは日本で基礎を学んだ後、エリック・カイザーさんと出会い「こんなやりかたがあるんだ」と影響を受けたといいます。

「日本ではバゲットの生地をあまりミキシング しないけれど、カイザーさんはよく(ミキサーを)回す。何で回すのかな、 でもおいしいな、と思う、それが成形後冷蔵発酵に有利なやり方だと 知るわけです。生地を寝かす温度帯が大事なんですけれど、 ミキシングでグルテンの膜をつくっておけば夜間、冷蔵で 休めるときにいいんですね。朝一番は、このカイザーさんのやりかた のバゲットを出しています」それはクラストの香りと食感が強い、濃い味わいのバゲットです。

バゲットフルート(240円) こちらは午後バージョン。

午後のバゲットは成形後の発酵の温度や時間を変えたオリジナル。クラストが薄く、クラムはモチモチとしていながら軽い食感。粉の味わいが生きています。    

「教えてもらったことをやり続けるのではなく、その都度考えて、新しいことを取り入れて、よりよくしていく。継承とはそういうものだと思っています」清水さんは淡々と語ります。今後は、よりよいモノづくりを継続するために、カイザーさんのように粉をデザインするという夢があるのだそう。
現在28歳。常に先々のこと、10年先の未来像を 思い描きながらパンを焼く、素敵な職人さんです。

■ル・ルソール


所在地:目黒区駒場3-11-14 明和ビル1F 

TEL:03-3467-1172

営業時間:8:30~19:00

定休日:月曜、第3火曜(2008年6~7月は臨時で月火休)

京王井の頭線駒場東大前駅から3分
地図:Yahoo!地図情報


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