パン/パン屋さん取材レポート(西日本)

シェフが語る夢までの過程~創作パンの舞台裏Vol.1 コム・シノワシェフインタビュー(2ページ目)

神戸のブランジェリー コム・シノワといえば色とりどりの魅惑的なパンが溢れる人気店。自由な発想で生まれ続けるパン。そこには理由がありました。西川功晃シェフへのロングインタビューを連載でお伝えいたします。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

日々生まれ続けるパン達


清水:自由自在な素材の組み合せや、個性的な形など、日々生まれてくるパンのアイディアはどう整理されているのですか。 書き留めるノートのようなものがあるのでしょうか?

西川(敬称略):ノートはありません。頭の中に?それもないんじゃないかな。その場で作っては消えて、作っては消えてしてね。 ルセットを教えた子が辞めていくでしょう、それと同時になくなっていきます。

その場でこうしよう、何グラムにしようってね、それを僕自身がノートしてないから、それで困る。 もう一回あれやろうという時に、仕込みの子がノートとってないで、なんぼでしたっけ?って聞かれると もうわかんないんですよ。なんでノートとってないのって怒るんですよ。

清水:大変ですね。材料もすごくたくさんあるでしょう。それがいつも揃っていないといけないというのも。

西川:いやもう臨機応変です。逆に楽しいんですけど。辛いのはお客さんの声やね。これが何時までに欲しいと 言われるとね。

同じ工程でやっているけれど毎日同じ時間では進んでいない。他のパン屋さんみたいに 表があって、このパンは何時に焼きあがってとか決められないんですよ。

窯が一台しかないから、100種類くらいだと思いますけど、あれだけの量を焼こうとなると、 隙間隙間に入れていって、成形とか焼くタイミングが遅れてしまうとか、毎日いろいろあるわけでパニックですよ。
でもそれが好きなのかもわからない。

清水:それを乗り越えるのが好き、なのですね。

西川:落ち着いて冷静に段取りよく綺麗に終わるのは自分のペースじゃないんですよ。ちょっと物足りない。
まわりが大変かもしれないけれど毎日どたばたしているほうが合うんですよ。
オーブンが詰まってどうしようもない状況を繰り返しているほうが何とか切り抜けたぞ、みたいな充実感が。


セミナー会場裏でパンを成形する西川シェフ
(この時も小さなハプニングはあったものの問題なくクリア)


ああ、この人はまるでサッカーの試合でもしているみたいに仕事している、と思いました。
きちんと発酵させ、美味しくすることは大前提。あとはチームを組んで戦うように、 時間と工程を計算しながら、その日その時に思うようなパンを生み出していく。
楽しく充実感を感じる戦いは、スポーツの試合みたいではないですか!



Vol.1
1.プロローグ
2.日々生まれ続けるパン達
3.試合のような毎日 発想のための休日

Vol.2
Vol.3
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