フレンチ/フレンチ関連情報

ル・マスカレ(ノルマンディー)(3ページ目)

津波のように押し寄せるフィリップの斬新なオリエンタルフレンチ。寄り添うマダムのナディアのサービスに酔いしれ、フランス料理の深遠な世界にただひたすら身を委ねる。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

究極のオリエンタルフレンチ

8時を回ったころ、ダイニングへ。マダムのナディアと3年ぶりの再会を果たす。ブルガリア人の彼女の影響もあってかインテリアに東欧やオリエンタルな小物や絵があったりと、ところどころに仕掛けがあって楽しい。ダイニングでは全部で10名ほどのゲストがのんびり料理やワインを選んでいる。私はデギュスタシオンコースを。
レセプション
レセプションはバーカウンターを兼ねている。

インテリアはオリエントの雰囲気を感じるモダンさとは違う、ナディア風とも言うべき、どちらかというとゆる~いダイニング。テーブルの上には「ル・マスカレ」つまり、津波を表す言葉からインスピレーションされたナディアの作品が置かれている。とても不思議な作品で、最初は一体なんだろう、何に使うのだろうかと考えてしまうがこれは単なるテーブルの飾り。
ダイニング
食欲をそそる赤が基調のダイニング

アミューズは4つの小さな料理にロシア風のパンケーキを合わせる。蛸のマリネ、マグロのタルタル、塩の効いたサワークリーム、杏のコンポート。これはごく普通の特徴のないおつまみなのだが、なんてことのないサワークリーム、普段はあまり食べないのだが、キリリと締まった塩加減が非常に舌に心地よい。

自家製のバターはスモークがかけられた無塩と有塩が2つ並び、どれも異様に旨い。パンを食べ過ぎるとメインディっシュの頃にお腹が膨らむのでなんとか抑えないといけない。パンはごく普通であったことが嬉いが、こうした特徴あるあるバターを出されるとパンはますますごく普通の、味のないパンであってほしい。

料理の前にバドワがサービスされる。食事の前に天然微発泡の水で胃が刺激されたかどうかわからないが、この時点で落ち着いていた胃袋はすべて空になり、一気に食べるための食欲のスイッチがオンになる。

小さなスープはナディアの故郷、ブルガリアのもの。コンソメ、サフラン、ガラムマサラ、セル・ド・メール(海塩)を煮詰めたもの。これまた不思議な味だ。ほんのわずかなスープなのに妙に印象に残るのは初めて感じた舌の感覚だったからかも知れない。

キールロワイヤルを飲み終えることには、次は白ワイン。ミネラル分が強いガスコーニュのワインだそうだ。

「次はフォアグラのお刺身よ」と運ばれた料理にはフィリップの遊び心が感じられると同時に、いつも期待通りの「フォアグラ料理」というものに新鮮さを吹き込む意欲的な作品。

フレッシュな薄切りのフォアグラのクオリティは語るまでもなく、テリーヌを挟んだマカロンにあった。硬めに焼かれたマカロンにはシナモン、ペッパー、コリアンダー、ジンジャーといったスパイス類が使われ、これらの味わいに強めに煮詰められたバルサミコが実に合うではないか。ワインもグラスでアルザスのリースリングが注がれる。
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