フレンチ/フレンチ関連情報

ル・マスカレ(ノルマンディー)(2ページ目)

津波のように押し寄せるフィリップの斬新なオリエンタルフレンチ。寄り添うマダムのナディアのサービスに酔いしれ、フランス料理の深遠な世界にただひたすら身を委ねる。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

ブランヴィルの小路

街から5分も走れば「ル・マスカレ」に到着。小さな学校のすぐまん前の坂の途中にある。通された部屋は非常にユニークだった。入ると右手にトイレとシャワーブースと洗面台が全部一緒になっている。現代風の前面ガラス張り。ところがトイレットペーパーホルダーがない。いちいち手に持ってちぎらないといけない。まあ、この程度で不便も便利もないが、なんか不思議。その先は庭に面してリヴィング。その奥にベッドルーム。で、ベッドのまん前に長いバスタブがある。これもまた不思議。タイル張りだから水はこぼれても多少は問題ないが石鹸やタオルを置く場所もない。部屋は横に長いのでよく歩かなくてはいけない。
客室
客室も所々にオリエンタルな雰囲気が。

フィリップが厨房でも見に来るかという。仕込み途中の厨房は若い料理人が3人黙々とディナーの仕込みに精を出す。この時まだ6時。ピアノ・ブランでランチをたらふく食べたのでまだまだお腹がすく気配がない。レセプションに聞くと7時から食事ができるが、とは言われたが8時過ぎにしてもらう。この時期ディナーは8時以降というのが普通だから。
キッチン
黙々と仕込みに専念する若いキュイジニエ

お腹をすかせるために散歩に出た。町に何があるわけでもない。ツーリストインフォがあり、ちょっと覗くと朝食つきのシャンブルドット、いわゆる小さな民宿がツインで40~50ユーロ程度。フランスは日本と違って部屋単位の課金なのでかなりお得だ。

教会があり、花が咲き乱れる墓地があり、手入れされた小さな庭を持つ家並みを眺め坂を上ったり降りたりしながら、時間をすごす。途中小さな牧場に馬が2頭いて見慣れる人が来たので何かくれるのかとおもったのか、葦毛のほうがつかつかと寄ってきた。手前にあった雑草を差し出すと首を伸ばし美味しそうに食べ始める。なんかすごく愛しい。しばらくそこで遊んでいたが、馬は僕が帰るまで草を食べなくてもずっと近くにいてくれた。すこし不思議な時間だった。

乾燥はしているものの、30度近くまであったのでそれなりに暑い。空は時折機嫌が悪くなり、雨が降ってくる。すぎに止んで青空にスイッチするがあっという間に分厚い雲が現れて光を吸い取るかのように空の真ん中に陣取る。
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