色や香りに特徴がはっきり現れる |
みやじ豚には歯応えが感じられ、普通豚にはそれがない。普通豚はあっさりと溶けるように崩れていく。これはこれで旨い。しかし、みやじ豚は噛んだ後に残る豚肉を食べたぞ、という歯応えと後味がずっと残る。普通豚も完璧な火入れによって最大限の魅力を引き出されているせいか、予想以上に旨みが出ていると感じる。しかし、それを有り余るほどの香り、旨みで圧倒するみやじ豚。
一番の違いは「脂」だろうか。歯応えがあってとろけるようなみやじ豚に対し、普通豚は単にぶよぶよとした脂身。子供の頃は豚肉の脂身は大嫌いだったが、今は大好物の一つ。イベリコ豚もそうだが、脂身においしさを感じるのだから面白いものだ。
ちなみにこのみやじ豚だが、ランドレース種、大ユークシャー種、デュロック種の掛け合わせのいわゆる一般的な三元豚。品種的には特別なものではないが、エサと飼育方法(兄弟豚と一緒に囲い、仲良く生活させ、ストレスを与えない)で大きな差別化を図っている。そしてその飼育の様子は現地で公開されている。頻繁にBBQパーティーも開催されているのも面白い。
最初にみやじ豚を食べたときにはロースト(オーブンでじっくりと時間をかけて焼き上げる)よりもグリエ(網焼き)で旨みが引き出されるのでは、と思って北岡シェフに聞いてみたが、フランス料理として魅力を最大限引き出すには時間をかけて焼き上げるローストだそうだ。見事なほど均一なピンク色に染まる焼き加減には言葉もないが、その味わいには旨み以上に生産者の心意気と湘南の高台の爽やかな様子が目に浮かぶ。
身体に染み渡るポタージュ |
まずはキャベツのポタージュ カプチーノ仕立て。味わいの奥にシンプルにミキシングされたキャベツのざらつき感とわずかのバター香りが残る。ミルクや生クリームは一切使わず、少しのバターでキャベツとベーコンを炒め、チキンブイヨンを加えてミキサーにかけるだけ。日常的に使う素材をいかにして「料理」に仕立てるかが素人にはまねのできないプロの技ということか。スープ仕立てなのにキャベツを食べた!という気持ちになるところが楽しい。
ピューレの味わいも深く長い |
キャベツについては詳細は割愛するが、国内自給率100%とは知らなかった。そして生で食べるのもほぼ日本だけで、欧米では茹でるか、ザワークラウトにするか何かしらの加工をして食卓の上る素材なのである。
茹でると芯が甘い旨みを感じる |
素材の歴史、背景、栄養素、調理方法、実際の料理と作った料理人の生の声。料理教室ではないので実際の作り方は学べないものの、一つの素材の目利きができるポイントを押さえることができるだろう。
食材や料理を考えながらいただくことにより、食べることについてより興味が湧き、単においしい店を知ってるだけのグルメ知識から「ちょい上ナレッジ」が身につく快感。知らないことを知ることは実に楽しいことである。
このところ食材に関するニュースは暗い話ばかり続く。しかし、いつまでも食材不足や値上げといった断片情報を眺めていてはいけない。長期的には今以上に食を知ることによって動き始めるものが出てくるだろう。これは今までの料理教室とは目的が全く異なるものだ。
辻調が今年度より「料理検定」を開始した。その他、食と教育をつなげた「食育」の活動も盛んになってきた。
これからは「食べるだけの時代」から「食べることを知る時代」に変っていくことを意識して、今夜もフランス料理とワインを有意義に消費したいものである。
■プティポワン
〒106-0047 東京都港区南麻布4-2-48 TGKビル
地下鉄日比谷線広尾駅 1番出口 徒歩2分
TEL03-3440-3667 FAX :: 03-3449-7103
営業時間
ランチタイム 12:00~14:30(L.O)
ディナータイム 18:00~22:00(L.O)
年中無休(年末年始を除く)
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柴田香織さんの「フードリテラシー研究会」はこれからも継続して開催予定とのこと。詳細についてはこちらから。
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