フランス料理
試食するときも保冷材は必須だ

本物は何か?

キャビアを仕入れるのは簡単だ。デパートにも売っており、食材専門の商社はたくさんあり、そこから買えばいいだけのことだ。が、高いお金を払って買うのは簡単だ。しかしそれだけでは実につまらない。そしてそれが求めている「本物」かどうかもわからない。そしてこんなチャンスは滅多にない。

まずはネット上で基本的な知識を仕入れたのだが、だんだんと好奇心が湧いていき、レストラン関係の友人経由で一人の人物に会うことになった。

私の疑問は、

「輸出が禁止されていると聞いたが本当か?」
「キャビアにはどんな種類があるのか、味の違いはどうなのか」
「どこで獲れるのか」
「加熱殺菌されていると聞いたが、それは自然に行われていることなのか」
「値段はいくらなのか」

要は「本物である最高のキャビアとはどういうものか」なのだ。

ベルーガが最高級品で値段は高いのだが、オセトラやセブルーガと大きな違いがあるわけではない。また、先入観として持っていたのが、皮が硬く、食感があるものがフレッシュで高価でおいしいということ。実はこれは間違いで、フレッシュ、つまり熱処理していないものは、ほのかな脂味と共にねっとりと舌にまとわり付き、心地よい潮の味わいの余韻を残す。言いようのない食の快楽世界が広がるのである。

今回、キャビアとじっくり向き合い、専門家の話を聞いたなかでわかったことは、キャビアには2種類あるということ。それは、「フレッシュかそうでないかものか」。ちなみにキャビアに似たようなものとしては、ランプフィッシュの卵がある。

フランス料理
海の黒い宝石とも言うべきか
捕れたキャビアを3%程度の塩につけて0度~マイナス3度の温度帯で輸出されるフレッシュなものは約3週間位しか最高の状態で食することは出来ない。しかし約60度の低温殺菌(パストライズという)されたものは向こう1年位は保存可能なのである。

フレッシュか、そうでないかは味がすべてを語る。そのためにはフレッシュなものがどんな味わいなのか、機会を見つけて知ることが肝要だ。ちなみにパストライズされたキャビアのほうが表皮が硬くぷちっとした食感がある。

最高級品のベルーガはバランスの取れた味わい。やや色の薄いオセトラは納豆のような味わいを感じつつ、余韻が非常に個性的だ。セブルーガは中でも塩加減の輪郭がはっきりしていて、シャンパーニュにはとても相性がいいように感じる。

キャビアには当然個体差や、時期などに差があるため、数ヶ月先にこれと同じものを食べても同じ味とは限らないのである。正解のない世界がここにもあったのだ。

これはまるでワインのようではないか。

フランス料理
カスパール社の会社案内より
そして、キャビアを生産する国として真っ先に挙がるのがイランやロシア。しかし、本物の多くはカザフスタン産であることは意外に知られていない。カスピ海に面したカザフスタンはウラル河の河口があり、チョウザメが遡上するところでもある。お腹に脂の乗った卵をたくさん詰めたチョウザメたちがカスピ海に近づく同じくところで、収穫することが出来る国なのである。ロシアのボルガ川も同じ。そしてチョウザメの産卵のために魚路を設けているのは上記の2河川だけなのである。

しかし昨今の地球温暖化の影響を受け、生態系の変化に伴い、チョウザメの収穫量は年々減っていると聞く。

かつての私にとって知らないことだらけのキャビアの世界があった。

さて、そのキャビアを料理にしたときにはどうだろうか。