【移転】シュエット（都立大学）(2ページ目)

様々な野菜を散りばめてレモンと大葉で香りをつけたアジのマリネ

素材の産地が明確に

一歩足を踏み入れるとウッディな床に整然と配列されたテーブル、左手にはキッチンの様子が小さな窓から垣間見える。パーティションがないせいか開放感があり、どこに座っても全体が見渡せる。

メニューはとてもわかりやすく、かつリーズナブルなもの。4500円、5500円、6000円のプリフィクススタイルの3コース、アラカルトでもオーダーは可能だ。サービス料はない。食材の産地もしっかり明記されているうえにシェフの自家菜園で栽培している野菜のリストもあり、食べる側が想像しやすいメニューになっている。

トマトは高知県四万十町から、山形は平田牧場から届く三元豚、フランスからはアンジュ産の鳩、バンデ産のフォアグラ、ランド産のプーレジョーヌといったように、産地が明記されていると食べる側としてはとても安心できる。

素材をシンプルだが味わいは複雑だ

春菊が詰まった小ヤリイカのサラダは、高知県産の野生派トマトである「狼桃」とサヤエンドウやブロッコリーなどの野菜をタイムの風味をつけてさっぱりと仕上げたもの。オリーブオイルのほのかな香りと味わいがいいアクセントになっており、様々な食感が楽しめる気持ちのいい前菜だ。

特にトマトの味わいは甘みが強調されているものではなく、トマトが本来持つ酸味とのバランスが非常に印象的だ。これは間違いなく料理人の技術を介して良質の素材が「料理」として再生される。

ナスやトマト、ピーマンなどの野菜にズワイガニを加えたテリーヌはバジルの風味を絡めたオリーブオイルと調和し、しっとしりとした食感をもたらす。季節の野菜をこうして一つの料理として楽しめるのもフレンチの醍醐味か。