ゲームソフトの数とゲームソフトの価格の違い

ゲームタイトル数を比較する図
グラフにすると大変な差があります。しかし、ゲームビジネスの構造的な差と、そこから生まれるコンテンツの質の違いを無視してグラフを示すことにどれ程意味があるでしょうか?
イベントで強烈にアピールされたのは、iPod touchで遊べるゲームソフトの数です。PSPは607タイトル、DSは3,680タイトルですが、iPod touchは、21,178タイトルもあるということでグラフが提示されました。また、ゲームソフトの値段も圧倒的に安く、iPodtouchには10ドル以下、つまり100円程度でもゲームが買えることをアピールしています。

確かに、iPod touchのゲームがオンラインでダウンロード購入できるApp Storeには、DSやPSPに比べて遥かにたくさんのタイトルが、しかも低価格で売られています。しかし、iPod touchとDSやPSPではゲームビジネスにおける構造の差から、出てくるコンテンツの質に違いがあります。理由はいくつもありますが、1つ、流通の例を挙げてお話してみましょう。

App Storeによるオンラインダウンロード販売のみのiPod touchは長い年月をかけて大きな開発費で大作ソフトには向いていません。パッケージソフトであれば、メーカーの利益は実売が出る前、お店による発注で確定します。ですから、メーカーがお店に売る力、営業力によって読める数字というのがあるんです。ただでさえ当たりはずれの激しいコンテンツ産業ですから、大手が大規模な開発に先行投資をする場合、こういった営業的背景は重要です。しかし、iPod touchでは、そういった営業的パワーは通用しません。最初からお客さんとガチンコ勝負になります。流通コストは削減できますが、数字を読むのは難しくハイリスクハイリターンになります。

もちろん流通を通さないメリットもあります。パッケージソフトの場合、営業力のない小さなメーカーはお店の棚に自分の居場所を確保することがまず困難です。お店の棚に並ばなければ、当然売れません。しかし、iPod touchならどんな弱小メーカーのゲームもオンラインを通じて世界中からアクセスできます。そうすると、小規模ながらに切り口の良いソフトが思わぬヒットを生むことがあるんですね。また、ダウンロード専用なら在庫リスクを心配する必要もありませんから、小さくて小回りの効くメーカーがローリスクハイリターンを狙える構造です。

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大手ゲームメーカーがたくさんの開発費をかけて徹底的に作りこんだ強力なキラータイトルが市場を牽引していく構造を持つのが今までのゲーム業界です。開発に数年かけたというようなリッチなコンテンツが登場する反面、リリースできるメーカーはある程度の規模を持っている会社に限られてきますし、実績のない新規タイトルをヒットさせるのが困難で、売れたタイトルの続編が多くなります。

対して、場合によっては個人にさえチャンスがあって、低価格で非常にたくさんのゲームがあるのがiPod touchです。ローリスクでゲームが出せるので、実験的、挑戦的ゲームも生まれやすく、多様性を確保しやすい構造ですが、開発規模の小ささからチープなコンテンツが多いのも事実です。

その2つを単純に数字で比べて、多い少ない、高い安いという話をしてもあまりピンときません。違和感があるんですね。

さらに、アップルがアピールするゲームの購入体験についてのアピールや、ゲームコンテンツの紹介の仕方についても違和感があります。