戦う現場、状況を綿密に調べてシューズ作り
三村氏を挟んで谷口監督(左)と青木選手 |
谷口浩美 本日は、アディダスと三村さんのご契約おめでとうございます。私は陸上でずいぶんとお世話になりまして、これからは三村さんが作られるアディダスという3本ラインで、世界で戦える選手が出てくることを期待しておりますんで、ぜひ頑張ってください。
青木宣親 三村さんとアディダスのアドバイザリー契約おめでとうございます。これからもいろんな人にいいシューズを作ってもらいたいと思いますので、これからも頑張ってください。
森下(アディダス社員) 世界のトップレベルのアスリートがシューズにどういうことを求めているのとか、持っているこだわりとかだとかはなかなか理解できないところがあります。そのへんをまず谷口監督からお聞かせ願えればと思います。
「三村さんからは戦うための情報をいただいた」と谷口監督 |
世界陸上東京は、湿度の高い気象条件だったんですけども、その中で、籾殻を入れた吸着性の高いスポンジをソールに、上の部分は速乾性のあるものを作っていただいたりとか、そういうことをいろいろやっていただいて……。
自分では分からなかったんですけども、人間の足っていうのは走るたびに大きくなる、マラソン練習をしていく中で、私の足も25.5の足が約26.5に1cmくらい伸びたんですが、それは走っている中で鍛えられて大きくなるんだと話していただいたり、後半になると足のどういうところが痛くなるか、それをどう生かすかというようなアドバイスをいただいたりしたことが一番良かったことじゃないかなと。
やはり戦うためには情報を収集して、それをどう自分のカラダを使ってパフォーマンスとして出すかということですので、そういう情報をいただいたんで、世界陸上東京のマラソンでは勝てたんじゃないかなと思います。まあ、その次の年(バルセロナオリンピック)はアクシデントがありましたけども、それはシューズが悪いわけではありませんので……(笑)。
そういうことをふまえて、やはり技というか技術というのは、スポーツ選手でもこだわる人じゃないとわからないと思いますね。そういうこだわりに執着している人はやはりいいものを選んで、それが自分のカラダの一部となってパフォーマンスを出すということにつながると思います。私としてはそれは非常に貴重な情報で、三村氏との出会いがこういう結果を出させてくれたんだなというふうに思います。
シューズが変わってホームラン増!
「ホームランが増えるよと言われてその通りに」と青木選手 |
野球選手は足に鈍感だという話をされたことがあって、それから足に対する意識が高まりまして、それからケガもなく次は7年目になりますけど、ケガなくやってこられて本当に感謝しています。
三村 青木選手は、基本的には弱いところを強くし、悪いところを直していくということなんですけど、悪いところはできるだけ靴で対応していくというようにしています。
陸上の場合、基本的には、個々によって違いますからね。多いのはソールが硬いので歩幅が伸びないんです。だからちょこちょこ走りになってね。世界で金メダル取ろうと思ったらもう少し柔らかくしたら取れると思いますけどね。
森下 三村さんの「ここがすごいな」というところは?
谷口 ここがすごいというよりも、こだわりだと思うんですね。三村さん自身もこだわりをもって気持ちを入れて作っていると思います。そのこだわりを引き受けながら、2時間ちょっと走るわけで、縫製の糸がちょっと出ているだけでマメができます。実はマメができるというのは靴が悪いんじゃなくて自分の体調のほうが悪いんですよね。しかし、走ってみるとできないことの方が多い。私は素足で履くんですよね。素足で履く分差を感じますね。
青木 名工三村といわれているくらいですから、いいシューズを作るということはわかっていると思いますけども、やっぱり一番思ったのは安心感ですね。三村さんが作ってくれていると思うだけで安心です。それが一番でしたね。人柄も含めて説得力があるというカリスマ性というか、そういったものがもろに出ている人かなと思いますね。
森下 なぜアディダスを選んでくださったのでしょうか?
三村 ほとんどのメーカーからうちにこないかとお話がありました。ありがたいことだと思ったんですけど、その中でもしつこいくらいにアディダスは誘ってくれまして、根負けしたような。本当に私に惚れてくれているのかなと思いましたね。