ジョギング・マラソン/東京マラソン徹底解説&レポート

東京マラソンを契機に「突然死」の再認識を(2ページ目)

松村邦洋さんが東京マラソンで倒れたニュースは、マラソンにつきまとう突然死の危険を思い起こさせました。これから気温が高くなるにつれて危険も増します。しっかり突然死の予防法を認識しましょう。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

ゆっくりランナーにもベテランにも危険が

今回も大きな役割を果たしたAED。大会関係者の誰もがAEDの使用法知っているという状況になってほしい
今回も大きな役割を果たしたAED。大会関係者の誰もがAEDの使用法知っているという状況になってほしい
突然死の原因は、ほとんどが心臓に関する不調。心筋梗塞がその第1位です。なぜゆっくり走るマラソンランナーが心筋梗塞を起こすのでしょうか。また、一方でベテランランナーのランニング時における死亡事故も率としては高いのです。なぜでしょうか。

心臓病による突然死を簡単にいってしまうと、心臓を動かす筋肉「心筋」に送られる酸素が急に減少して、心臓の働きが止まってしまうということです。なぜ酸素の供給が急激に低下するのか。酸素は血液によって運ばれますが、この血液の運行がなんらかの理由によって阻害されてしまうということです。その理由は動脈硬化がある人だと、血管壁のプラークが血流が激しくなることによって剥がれて血栓を作ってしまうとか、激しい運動によって要求される血液の送り出しに心臓が対応できる限界値を越えてしまうとか、脱水して血液粘度が増し、血液の流れが悪くなり酸素が十分に供給されないだけでなく送り出そうとする心臓にも過度の負担がかかるというようなことが上げられます。

ゆっくり走っても相当心臓に負担

完走が目標のランナーにとっても実はマラソンという運動は、相当に体に負担をかける運動です(走ったヒトはわかりますよね)。走り込んでいない人はマラソンの後で筋肉痛に悩まされますが、心臓も筋肉の活動で動いているのです。普段から鍛えていなければ、心臓にだって筋肉痛が起きてもいいような負荷がかかっているのです。ついでにいえば、血管も筋肉でできています。マラソンは血管にもたいへんな負担をかけているわけです。

特に運動不足で心肺機能がトレーニングされていない人、特に多くの血液を循環させなければならない肥満体の方は、それだけでマラソンは過酷なスポーツなのです。

マラソン前は誰もが「未病」状態

中医学や漢方に「未病」という言葉があります。体調が一応健康のようではあるが、病気を発症する危険性を秘めている状態をいいます。マラソンを走る前のランナーは、これから不健康状態になるという意味で、健康体であっても実は「未病」状態だといえます。私はこれを「運動未病」と名付けています。マラソンは健康状態の人でもさらに健康状態を高め、「運動未病」状態を軽減してから取りかかるべき運動だといっていいでしょう。
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