月間1000kmを支えた食事の量と質の実体
路 京華氏 1952年、中国・北京生まれ。父は高名な老中医で代々医師の家系に育つ。中国中医研究院大学院卒業。中国中医研究院広安門医院客員教授。『中国漢方がよくわかる本』『免疫力』ほか著書多数、『中医内科学』監修等。現在は、中医学普及のために日本において講演、執筆活動に活躍している。 |
テレビによると、一般的に練習は早朝と夕刻の2回。それぞれ20kmのビルドアップ(4分30秒→4分)が中心。そして走った後に多少の筋トレが加わります。女子選手の練習量は、高橋尚子選手、野口みずき選手と月間1000km越えが珍しくなくなりましたが、当時はまだ月間1000kmを越える女子選手は日本にいなかったのではないかと思います。
この豊富な練習量を支えたのが、食事の質と量、そして昼寝もするという全生活をランニングに向けていた生活でしょう。
合宿に参加した浜田コーチは、「市橋も市川も食事量が少ない方ではないのに、中国の選手はその2~3倍食べた」と書いています。合宿を取材したNHKの男性記者も「自分の3倍ぐらい食べていた」と言っています。その内容は、脂肪の少ない各種の肉類と野菜を中心とし、種類は豊富だったようです。
話題になったのはスッポンと冬虫夏草だが……
しかし、馬軍団の食事に関して注目を集めたのは、スッポンと冬虫夏草でしょう。スッポンは中国でもかなり高価な食材で、毎食というわけにはいかないようですが、食べるときにはちょっと入っているなんていうのではなく、4人に1匹分ぐらい使っていました。
冬虫夏草は菌類に分類され、漢方の生薬として使われるものです。ガンに効くと話題になったこともありますが、この珍しい漢方薬を広く知らしめたのも馬軍団でした。
この2種類だけがマスコミには派手に取り上げられたのですが、番組を見たり本を読むと、日本では漢方薬として扱われている生薬のスープを朝に晩に飲用しています。本当はこちらのほうが馬軍団の好成績と大きく関係しているように思えます。それはどのようなものなのか、代々の中医師の家に生まれ育った中医師(中国の中医学の医師)の路京華先生に解説していただきました。