練習十分でも記録が伸びない理由
弱点を抱えたままでスタートするランナーは多い。その結果は… |
「十分に練習を積んだはずなのに、レースで目標タイムに達しなかった」という経験をしている人は多いと思います。マラソンは練習量が記録に反映されやすいスポーツ。特にはじめのうちは、練習が増えるほどにタイムを短縮してきたという経過をたどってきているので練習を十分に積んで挑んだレースで予想通りの成果が得られないと、悪天候や体調不良などの要因がない限り、ガッカリするし迷いもするでしょう。
タイム短縮の要素
タイムを短縮するためには、どのような要素をチェックする必要があるのでしょうか。練習を10%増やしたら、タイムは10%短縮されるでしょうか。10%とはいいませんが、練習量に比例して必ず短縮されるものでしょうか。もう一度タイム短縮の要素を考えてみましょう。タイムを短縮する要素は数限りなくあるでしょうが、主な項目としては次のようなものが挙げられます。
・ 工夫され、量も十分な練習による体力と走力のアップ
・ フォームの改善
・ 栄養摂取の改善
・ 減量
・ レース展開(最適のペース配分)
・ 適したウエアやシューズの選択
・ 故障がない絶好の体調
このほかに外部要因として、
・ 暑くなく風もなく適度に湿度がある気候
・ スピードが出やすいコース
・ 絶好のペースメーカーの存在
さらに、
・ 応援
・ ライバルに対する競争心
・ 何らかのインセンティブ(名誉や賞品など)
なども挙げられます。人によってはお守りやネックレスのようなものも心理的に記録アップに貢献しているのかもしれません。
記録アップは様々な改善を少しずつ重ねた結果だが…
フルマラソン3時間15分のランナーがサブスリーを達成するためには、約8%のタイム短縮が必要です。8%のタイム短縮は容易ではありません。しかし、ここに挙げたタイム短縮の要素で、それぞれ1%分タイム短縮のために改善したとすると、13%のタイム短縮が可能になります。サブスリーはおろか2時間50分という記録になります。すべての要素が同じような比率でタイム短縮に貢献してくれるわけはありませんが、私が言いたいことは、大幅なタイム短縮はさまざまな要素を少しずつ改善して積み重ねる事によって案外容易に実現できるということです。逆にいうと、ただ闇雲に走り込みの距離を伸ばしても思ったほどにはタイムは短縮されないということなのです。
ここに上げた要素の中でも比重はさまざま。練習や減量は比重が高いでしょう。すでに長距離用シューズを履いている人が、それよりちょっと機能が良いシューズを選んだからといって短縮できるタイムはごくわずかなものかもしれません。しかし、この要素が1%、あの要素は0.5%というわずかな数値を積み上げてその合計が8%に達すれば、3時間15分のランナーはサブスリーを達成できます。10%になれば、3時間20分のランナーがサブスリーです。3時間5分のランナーならたった3%分でサブスリーです。
しかし、忘れてはいけないことがあります。ある一部の要素だけでも弱点が残っていると、それがために合計では目標値に達しているはずなのに見合う成果が出ません。なぜなのでしょう? 次ページで説明しましょう。