マラソンは仮装して走れる希有なスポーツ
スタート前の会場は、仮装参加者同士の記念撮影大会会場となる。やはり、ここでも女性は人気者。股旅者、侍など時代劇関係の仮装は多い |
さて、実際の東京マラソンですが、仮装参加者はそれほどいなかった上に、雨天でカッパを被っているランナーもいて、余計に仮装ランナーが目立たなかったようです。ここで他の大会を見まわすと、仮装参加を歓迎する(仮装賞まで設けた)大会と、はっきり不可とうたっている大会があります。前者はみんなで楽しむことを第一義に掲げるフェスティバル的な大会、後者は競技志向の大会と言ってよいでしょう。それは当然といえば当然でしょう。
しかし、ここでハタと気が付いたことがあります。マラソンというのは、仮装して参加できる大変希少なスポーツではないかということです。考えても見てください。ゴジラとキングコングの仮装でレスリングをしたら特撮になってしまいます。水泳、サッカー、野球、テニス、スキー、ゴルフ……。いかなる人気スポーツといえども仮装してスポーツを楽しむ姿なんて見たことありますか?
なぜ、マラソンだけに仮装参加者がいるのか?
例えば、東京マラソンをマラソン引退の舞台に選んだ有森裕子さんは、自分を輝かせるために走ると言っていました。引退の舞台でも大いに目立ちました。大学生アスリートには、他の競技に比べて茶髪やサングラスにネックレスなどいろいろ身に付けた選手が多いように思います。野球部や相撲部なんてみんな丸刈りです。ランニング中にテレビカメラに向かって手を振ったりガッツポーズをとる選手がいるのもマラソンならではです。プレー中にテレビカメラに向かってVサインをしている選手がいる競技はほかには見当たりません。マラソンはそのくらい余裕を持ってプレーできるスポーツでもあるのですね。
マラソンを愛好する人にこのように目立ちたがりやが多いということは、実は寂しがり屋の裏返しなのかもしれません。マラソンの練習は孤独です。仲間がいても、声が届く範囲で一緒に練習できるのは、かなり力量が近くなければわずかの時間です。1人で練習できる競技であるがゆえに1人で練習することも多いでしょう。大会では、日頃の寂しさを一挙に解消するために、他の参加者や観戦者と交歓する方法として目立ちたがる、そんなふうにも考えられます。
2つめの理由に、ギャラリーが多く、またギャラリーと近い場所でプレーする競技だという点が挙げられるでしょう。野球場に5万人の観客が来たとしても、東京マラソンの観戦者138万人には遠く及びません。ジャイアンツの年間観客動員数が290万人弱。つまり、1試合でジャイアンツの半シーズン分の観客動員数に匹敵しているわけです。おまけに近いところで大いに反応を得ることができます。つまり、手間をかけて準備し、大汗をかいてもそれだけのやりがいが得られるということです。
3つめの理由に、ランナーには変身願望の強い人が多いのではないかと推測されることです。そもそもマラソンを始める動機が、スリムになりたいとか若返りたいとかいった、変身願望にあるランナーはたくさんいます。もっと思いっきり大変化できるのが仮装です。ランナーの性分に合っているのではないかと思われます。
4つめの理由に、そしてこれが最大の理由かもしれませんが、コスプレは楽しい!ということにつきそうです。フェスティバルに仮装はつきものです。小生も体育祭で仮装をしたことがありました。ハロウィンパーティーにせよ仮装行列にせよ、する者、観る者すべてが楽しくなって大会や祭りを盛り上げるのが仮装です。お祭りにはお面がつきものですよね。
でも、日本では東京マラソンの例に見られるように、まだまだ仮装参加者が少ないようですが、仮装が名物になっている大会を次ページでご紹介しましょう。