DTM・デジタルレコーディング/DTM基礎知識

【シリーズDTMの基礎知識 4】 MIDIファイル互換性の秘密

何気なく利用しているMIDIファイル。WinでもMacでも利用できるし、異なったシーケンスソフトでも読み書きできます。でもそれはなぜなのでしょうか?ここを追求してみましょう。

藤本 健

執筆者:藤本 健

DTM・デジタルレコーディングガイド

ふだん、何気なく利用しているMIDIファイル。もちろんシーケンスソフトを利用している人も、とくに深く意識せずにシーケンスソフトへ読み込んで使っているのではないでしょうか?このMIDIファイルはWindowsでもMacintoshでも利用できるし、異なったシーケンスソフトでも読み込んだり、書き出したりすることができます。これはなぜでしょう、なにか規格があるのでしょうか? 今回は、その点について触れたいと思います。

【1】多くのソフトでサポートされているMIDIファイル

PCでMIDIを扱う際のファイル形式としてMIDIファイルというものが、広く用いられています。正確にはスタンダードMIDIファイル(Standard MIDI File)のことで、標準MIDIファイルと呼ぶこともあれば、SMFと略したり、単純にMIDIファイルと呼ばこともあります。

このMIDIファイルはWindowsでは拡張子が.midとなっているもので、Macintoshの場合は、TypeがMIDIとなっているものです。

MIDIファイルは、MIDIの演奏データの保存方法を決めたファイルフォーマットで、WindowsとMacintoshのように異なるコンピュータ間、またシーケンサ間で演奏データをやり取りすることができます。MIDIファイルであれば、現在あるほとんどのシーケンスソフトでサポートされていて、読み書きが可能となっています。

これは文書ファイルにおけるテキストファイルのようなものだと考えてもいいかもしれません。もちろん、さまざまな情報を記録できるMIDIファイルはテキストファイルほど単純ではありませんが、どのシーケンスソフトでもサポートしているという意味では近い存在といえるでしょう。

このMIDIファイルは、もともとは1988年に米国のOpcode社によってMMA(米国のMIDI協議会)に提唱されたものです。それまではシーケンサによってファイル形式がばらばらだったため、MIDIデータを異なるシーケンサで共通使用することはできなかったのです。MIDIファイルはまずMacintoshで広がり、次第にDOS、Windowsの世界にも普及していったのです。

しかし、このMIDIファイルも、GMなどと同様に、MIDIの規格そのものというわけではないのです。そのため、シーケンスソフトのファイル形式は現在でもMIDIファイルだけではなく、シーケンスソフト固有のファイル形式も存在しているのです。

せっかく標準の規格ができたのであれば、すべてそれに統一したほうがいいようにも思いますが、現在でもシーケンスソフト固有のファイル形式が存在するのはなぜでしょうか?

その最大の理由は、MIDIファイルはMIDIを演奏するという最低限の目的を果たすものであり、それ以上の情報を入れることができないからです。

たとえば、シーケンスソフトには普通、演奏のデータのある範囲を繰り返し演奏するループ機能を持っっていますが、MIDIファイルにはループという概念がありません。そのため、ループしているデータをMIDIファイルにするためには、すべてを展開した長いデータにする以外にはありません。

また、譜面を扱うことのできるソフトも数多くありますが、MIDIファイルには譜面の概念もありません。よって、ある短い音があったとして、それが4分音符のスタッカートなのか、32分音符なのかを判別することもできないのです。このように、最近の高機能なシーケンスソフトの機能を生かすには、MIDIファイルでは力不足なのです。そのため、それぞれのシーケンスソフトの機能を生かすためには、独自のファイル形式も使用することが不可欠なのです。


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