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レザーソールの修理方法……オールソール交換・ハーフラバー貼り付け

今回は、レザーソールの「修理方法」について解説致します。オールソール交換にするかハーフラバー貼り付けにするか、その判断は靴の製法にも関わっているのです。レザーソールの修理費用や修理に掛かる時間だけではない選択基準を考えます。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

 

レザーソールの修理方法はどう見極める?

レザーソールの修理方法は?

牛革のアウトソールに穴が開き、中身のコルクが見えそうになっています。ここまで来てしまう前に既に要修理段階なのですが、その方法は意外と迷うところです。

「レザーソールとは!革靴の「底」について深く考えてみる」では、レザーソールの厚みの種類について解説しました。アウトソールにミッドソールを加えるか否か、加えるとしたらどう入れるか次第で、単に靴の重量だけでなくその性格も大きく変わってしまう事をご理解いただけたかと思います。雰囲気ばかりで選ぶ仕様ではないのです(が、実際はそうなってしまっているものも少なくないのが辛い……)。

ただ、どのような厚みのものであれレザーソールに避けて通れない宿命が、地面との摩擦による擦り減りです。そう簡単に減るものではありませんが、ラバーソールに比べこの点ではどうしても劣り、気付かぬうちに上の写真の如くアウトソールの中央部に穴が開き中身が見えていた、なんて事も起こり得ます。流石にここまでの状態にならなくても、路上の小石等の凸凹を直接感じるようになり、そこがペコっと容易に押せる程度の薄さに擦り減ってしまったら、そろそろアウトソール交換(いわゆるオールソール交換)が必要なサインですよ。

で、この修理を行う段階になって初めて、選択に結構戸惑う案件が一つ、出て来るんだよなぁ…… 修理店のメニューに上記の「オールソール交換」だけでなく「ハーフラバー貼り付け」と言うものがあるのは、皆さんご存じでしょう。文字通りレザーソールの前半分に薄いラバーソールを張り付ける修理で、前者に比べ圧倒的に費用もかからず、開いた穴も十分防げるので、「これでもいいか!」とふと思えてしまうものの、「底に封をして、靴に余計なダメージを与えないかな?」と一抹の不安も感じるのではないでしょうか。読者の方からも度々ご質問いただく、この「オールソール交換」VS「ハーフラバー貼り付け」、果たしてどちらにすべき?
 

オールソール交換・ハーフラバー貼り付けの判断は靴の製法にもよる

ハーフラバー
オールソール交換にすべきか? はてまたこのようにハーフラバー貼り付けにすべきか? 両者は単に費用や時間だけで選ばない方が賢明な気がします。選択のカギになるのは、例えば靴の製法です。
レザーのアウトソールが要・全面修理となった際に、縫い直してオールソール交換を行うか? 或いはハーフラバー貼り付けにするか? もちろん実際には、修理に掛かる費用の高低や時間の長短で選択されてしまうケースが大半なのでしょう。多くの靴修理店で後者の修理がヒール交換とセットメニューになっている点からもお解りの通り、世間一般ではハーフラバー貼り付けで十分と考えられているようです。

それを否定するつもりは全く無いのですが、靴をある程度ご存じの読者の皆さんならば、是非とも別の観点で、もうちょっと突っ込んで比較検討していただきたい! その判断材料の一つになり得るのは、ズバリ靴の製法だと思います。つまり
「アウトソールを縫い直しても、靴全体の形状に変化が起こり難い製法」
ならば、オールソール交換の方がその靴本来の性能を明らかに維持・回復できますし、逆にその形状に変化が起こり易いものならば、一度目の修理はハーフラバー貼り付けの方が無難かも知れないのです。

具体的には、グッドイヤー・ウェルテッド製法で作られた靴のように、底付けの縫い工程がウェルト(細革)を介して二段階(掬い縫いと出し縫い)に分けてアッパーと間接的に繋がるものは、個人的には矢張りオールソール交換をお勧めしたいです。アウトソールの縫い直しは、すなはち「出し縫い」のみを縫い直すだけの工程なので(実際には「だけ」とは申しても非常に難しいものですが……)、この修理を行っても靴の形状に劇的な変化は起こり難いですし、レザーソールのしなやかさと通気性の良さは、半分とは言え下手にラバーを貼ってしまうと味わえなくなってしまう快適さだからです。また「雨用靴にしちゃおうかな?」みたいな場合ならば、いっそのことアウトソールをレザーではなく、潔くラバーソールに全面交換してしまった方が靴の活用性は広がる気もしますので。

一方、マッケイ製法で作られた靴のように、底付けの縫い工程が出し縫いのみの一段階でアッパーに直接繋がるものについては、初めてのソール修理の場合ならば、逆にハーフラバー貼り付けの方が得策かも? たとえ木型を入れて修理を行っていても、アウトソールを縫い直すことが「アッパーを縫い直す」ことに直結し、靴の形状に大きな変化が起こるリスクがどうしても高くなってしまうからです。特にコインローファーのように、この製法でかつライニングも爪先部の芯(先芯)も踵部の芯(月型芯)も付けずに作られた靴の場合は、オールソール交換を行うと履き心地自体も大分変化しがちですし、アッパーを傷めず「全面交換できるチャンス」を少しでも多く残しておく為にも、しなやかさや通気性を多少犠牲にしても、一回目はこちらが現実的かつ理想的な解となるような気がします。
 

レザーソール修理のハーフラバーはあくまで「修理用」

炭化
インソールの内側(普段は見えない方)にこびり付いてしまった、汗の塩分が炭化したものです。履き下ろす前にレザーソールにハーフラバーを貼り付けてしまうと、この種の劣化が酷くなるリスクが高まるのは、知っておいて損はありません。
と、ここまで書くと「履き下ろす前に、レザーソールに予めハーフラバーを貼り付けてしまうのはどうなの?」との声も、当然ながら聴こえて来そうな気がします。靴を長持ちさせる目的で、これをやられている人が案外多くいらっしゃるみたいですね。ただ、本当に長持ちさせたいのであれば、紳士靴の場合はむしろ逆効果ですよ。

ハーフラバーを貼ると確かに丈夫さや安定性、それに耐水性は増すのですが、それはレザーのアウトソールに厚い覆いをかぶせる事も意味し、持ち味である通気性は大きく損なわれてしまいます。その結果、インソール(中底)とコルクの間に溜まる汗の塩分の逃げ場がなくなり、その場で炭化するのを通じて、アウトソールではなく足に直接触れるインソールを劣化させる事に繋がるからです。インソールは一部のメーカーを除いて交換は事実上不可能ですので、どちらが靴としての長寿に繋がるかは明らかでしょう。

ラバーソールの靴でも近年では、レザーソール並みに軽くて見た目もスマートなものが増えていますし、境界部の接着技術の進歩で「前半分ラバーソール・後半分レザーソール」なる複合系を搭載した靴も出て来ました。滑り難さや耐水性を重視したい場合には、それらを初めから買い求める方が素直でもあるので、履き込んでレザーのアウトソールがある程度薄くなった後なら兎も角、履き下ろす前からいきなりハーフラバーを貼り付けてしまうのは、紳士靴の場合はまるで良質な赤ワインをコーラで割って飲む様なもので、もはや「勿体ない」の一言です! ヒールの高さや細さ、それにレザーソールの薄さの為に安定性に難のある婦人靴ならば、「最初から……」と言う選択肢もまだ理解できますが、紳士靴ではそれはあくまで修理用と考えた方が良い気がします。

と言う事で今回は、レザーソールの「修理」に焦点を当ててあれこれお話し致しました。
これも靴の使用環境や履き手の体格や歩きグセ次第で、選択肢は変化し得るものですので、まあ、あくまで目安とお考えいただけると嬉しいです。

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