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靴に使う「牛革」を深く考えてみる その4A(3ページ目)

今回の「メンズシューズ基礎徹底講座」では、牛革に色を付ける際の代表的な方法について解説します。革本来の色艶を活かすか?、それとも色の安定性を重視するか? 靴の使い方によりベストな選択は変化します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

色見と透明感に優れたアニリン仕上げ!

アニリン仕上げ
高級な靴のアッパーの代名詞と言っても良いのがアニリン仕上げ。特に茶系のこの仕上げはグッとくるものがあります。ただし水ジミを起こしやすいのが難点で、最近はかつてほど見なくなりました。


靴の場合は、特にアッパーの色に様々な「意味付け」がなされるので、色を出す方法はそれに用いる革を選ぶ際の重要なキーポイントになります。その中でもカーフやキップ銀付き革など、アッパー用の高級素材の代名詞となっている方法が「アニリン仕上げ」と呼ばれるものです。これは鞣す過程で「アニリン染料」を用いて染色した上で、それで僅かに塗装を施した仕上げです。

アニリン染料とは、19世紀中盤の英国で発明された合成染料の元祖で、この登場でそれまで主体だった天然染料が一気に駆逐されただけでなく、それまでの衣料品には無かった「色」を大幅に増やすのに貢献した、産業革命期を代表する創造品の一つです。マラリアの特効薬を作ろうとしたら、代わりに出来てしまったものらしい…… この仕上げを施すと、非常に優れた発色をしながら銀面の繊細な表情を壊さずに透明感も得られ、柔らかな感触を保つ事が可能になり、特に茶系のものは表情が秀逸です。

ただ、その「透明感」の追求が災いし、色落ちや水ジミを起こしやすい欠点が厳然と存在します。クリーナーで色落ちしてしまうどころか、場合によっては水拭きだけで色ムラを生じさせてしまう位に繊細な染めになっている場合もあり、トラブル防止の観点もあってか、最近はかつてほど用いられていないのが実情です。その代わりに「セミアニリン仕上げ」と呼ばれる、染料だけでなく顔料を少量塗装することで、色付きを安定させるだけでなく小傷を隠し効果も望める仕上げを採用する場合が多いようです。


最後のページでは、一番一般的な仕上げ!
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