ゴシゴシは絶対禁物!
液体クリーナーを用いる際に絶対してはいけないこと、それは「ゴシゴシ擦って汚れを落とそうとすること」です。慣れないとついやりたくなってしまうのですが、これをすると革の表面は確実に、傷みます。 |
スムースレザーの靴に付いた汚れだけでなく、古い乳化性クリームや油性ワックスを落として表面をスッピンに戻すクリーナー。かつてはチューブ式が圧倒的にポピュラーでしたが、今日では液体式が主流で、後者は更にミンクオイルなどの栄養分が付加されているものとされていないものとに分けられます。ここでは「栄養分が付加されていないもの」、つまり純粋に汚れ落しに徹したものに限定し、触れてみたいと思います。
この種の液体クリーナーを用いる際、一番やってはいけないことはズバリ
「力を入れて、ゴシゴシ擦って一気に汚れを落とそうとする」
ことです! 液体クリーナーを用いて痛い思いをしたことのある方の大半の理由が、恐らくこれの筈で、たとえどこの会社のものを用いたとしても、これをしてしまうと間違いなく革の表面(銀面)は確実に、荒れます。理由は簡単で、クリーナーを製造する際、そのように「乱暴に」用いることを想定した成分配合は行っていないからで、どんなに素晴らしい革でも一度銀面を荒らすと正直、全く同じレベルには回復できないので注意が必要です。使い方を間違えたにもかかわらず、それを製品の責任にするのは、何かお門違いのような気がするのですが……
ではどうするか? 以前もこの記事やこの記事で軽く触れていますが、より具体的にポイントを3つ挙げてみますのでご参考になされてみて下さい。このコツが掴めると、後述する例外を除けば、全く怖がらずにこの種の商品を用いることができると思いますよ。
1.コットンパフや布に、量を気持ち多めに浸して用いる。
→何と言うのでしょうか、靴に付いている汚れの類を液体にくぐらせるような感覚で用いると効果的です。
2.指は優しく、革の表面をゆっくり撫でるように動かす。
→ゴシゴシ細かくかつ激しく指を動かさなくても、暫くすると汚れは配合成分の効果で確実に浮き上がって来ますので、心配無用です。
3.汚れの程度が酷い場合は、焦らずもう1度クリーナーを入れ替える。
→1回目で汚れを革の表面から浮き上がらせ、2回目以降でそれを取り除く、みたいな意識で用いると尚更確実です。
もちろん液体クリーナーを用いる前に、馬毛ブラシでブラッシングしたり、湿った雑巾(おしぼりより気持ち水気が多い程度がベスト)で靴全体を軽くかつまんべんなく拭いたり等を通じて、簡単に落とせるほこりや汚れは事前に落としてしまうような、一種の下ごしらえも大切でしょう。また、時々「アンティーク加工が液体クリーナーで落ちてしまったのだけれど……」とのご質問も頂くのですが、その種の仕上げは一般的には乳化性の靴クリームで行っていますので、要はそれが抜けただけですからその色もむしろ落ちて当然でして、これもクリーナー側の問題・責任ではありません。回復しようと思えば回復できますので、トラブルとしては実はまだ全然かわいい部類で、決して人任せではなく、今度はご自身の力で「オリジナルの経年変化」を行うステージがやって来たのだと、その際は前向きに割り切っていただければと思います。
ただこの種の液体クリーナー、使用しない方が望ましい例外も、僅かながらあるようです。詳しくは次のページへ!