ドイツ車に通じる徹底した機能美!
履き良い靴の必勝パターン、インサイドストレート・アウトサイドカーブに徹したgteのトプシェイプです。ペダルの感触がダイレクトに伝わり、コバの張りが少なくできるマッケイ製法を採用したのも大きな特徴です。 |
gteの名を知らずとも、その作りの凝り様では他の追随を許さないオーストリー・ウィーンのメンズシューズブランド、サンクリスピン(Saint Crispin's)の名を知らない靴好きは、ハッキリ言ってモグリでしょう。ここのオーナーであるマイケル・ローリック(Michael Rollig。読ませ方がヴィーン式です!)氏が、車好きのとある顧客からの要望を受けたところから、このgteの企画が始まりました。曰く「多少価格は張ってもいいから、最強のドライビングシューズを作って欲しい!」
もともとローリック氏も、昔ながらの手の込んだ製法でこの種のスポーツシューズを再創造させる夢を持っていたので、この提案は大いに乗り気! ただ靴の特性上、自らが持つルーマニアの工房でのウェルテッド製法は不向きと判断した彼は、友人で隣国ドイツではシュープロデューサー兼セレクトショップオーナーとして著名なディーター・コッケルコーン(Dieter Kuckelkorn。日本でも一部のセレクトショップに彼の靴が入っています)氏に、協力を依頼します。その結果、若い頃移住していたゆえコッケルコーン氏が強力なコネクションを持ち、ドライビングシューズに最適なマッケイ製法が得意でもあるスペインで製造することになったのが、「Grand Tourismo Experience」を略しスポーツカー調の名前にしたこの靴なわけです。
具体的に書くと、
1.ペダルの微妙な踏み込み加減が、足の裏に素直に伝わる。
→アウトソールは薄く、かつ硬めの方が良い。
2.アクセルからブレーキへなど、ペダルの踏み替えが瞬時にできる。
→ペダルに引っ掛かる可能性が高いコバは、張っていない方が良い。
3.運転中に足と靴が一体化し、疲れない。
→アッパーは包容感の得られる、柔らかな素材の方が良い。
などがドライビングシューズに求められる基本性能。これらを合目的的に考えると、彼らがマッケイ製法を選んだのは必然でしょう。
言わば独墺圏の靴好きの頂点に立つ両者の共同企画ですから、この靴は生産こそスペインながら、その機能美は上の例を示すまでもなく正しくドイツ車そのものです。優れたデザインのため一見解りにくいですが、つま先の形状はもちろん独墺圏の靴の得意技、足沿いに優れたインサイドストレート・アウトサイドカーブのオブリークトウ。ペダルを踏み込む際の滑りを防止するため、アウトソールの前半分には敢えて薄いラバーを予め張っていますし(雨の多い日本には別の意味でも嬉しい仕様)、ヒールもペダル操作時の足の自然な傾斜を考慮し最初から斜めにカットするなど、車内での使い心地に徹底した配慮がなされています。
更に驚くべきはかかとの形状! ヒールカーブがほとんど付いていないのです。「曲線的なヒールカーブ」こそ通常はフィット感に優れた靴の一大条件ですから、実際この靴で歩いてみると、たとえベストなサイズのものを履いていても、笑ってしまうほどかかとが見事に、抜けます! でもこの掟破りも、ペダルを踏み込む際その曲面がアキレス腱を圧迫するのを避けるための、言わば大・確・信・犯。ここまで潔く「運転第一」に徹した近年例を見ない骨太な姿勢に、また惚れ惚れしてしまうのです。
車の運転に徹したgteの最強の特徴が集約したかかと部です。ヒールが斜めにカットされているだけでなく、アッパーのヒールカーブを緩めに設定する掟破りを敢行し、運転時のアキレス腱の圧迫を防ぎます。 |
最後のページは、このgteのもう一つの最強の特徴、革質の素晴らしさに迫ります!