立体的な造形に驚愕!
「雪之丞」を後斜めヨコから見た姿です。アッパーの縫い目は内踝側の一箇所のみ、しかも表面に糸を露出させないスキンステッチです。 |
ブランド設立以来足入れのよさで定評のある三陽山長の靴ですが、この新木型「208」は次ページで採り上げるメインの木型「201」から、以下のようなリファインを受けています。
- 踵周りを小さくした。
- 土踏まず部の絞り込みを深くした。
- 甲を低く抑えた。
- つま先をセミスクエアトウにし、僅かに長くした。
新木型を用いたシリーズは、「九分仕立て」と呼ばれる製法を採用したのも大きな魅力です。堅牢性を重視したこの種の靴に採用されるグッドイヤーウェルテッド製法では、アッパー・ライニング・インソール・細革(ウェルト)を接合する「掬い縫い」、ならびにインソール・細革・アウトソールを接合する「出し縫い」と、底付けの縫いが2回入るのが大きな特徴です。通常はどちらも専用のミシンで縫われ、インソール下部には前者の糸を通すため、リブと呼ばれるテープ状の布が周囲に取り付けられます。
しかしこのシリーズでは後者こそ機械で行いますが、前者つまり「掬い縫い」は手で縫われています。その結果、全体の9割を機械ではなく手でこしらえるので「九分仕立て」と呼ばれるわけです。この場合、「掬い縫い」では上記のようなリブではなく、インソール下部の周囲を凸状に掘り起こした部分を直接縫うことになり、リブのない分インソールの足への密着感が格段に向上し、同時に通常よりも遥かに軽い靴に仕上がります。簡単に申せば、堅牢さを損なうこと無く、履き心地が一層向上するのです。
容姿こそ極めてシンプルですが、この「雪之丞」は日本の靴の技術力を余すところ無くつぎ込んだ、正に渾身の力作です。
【三陽山長/雪之丞】
■色・素材 : 黒(スムースレザー)のみ
■木型 : 208
■サイズ : 6~9 Eウィズ
■価格 : \115,500(税込み)
次のページは、三陽山長のメインモデルと歴史を解説いたしましょう!