外羽根式と内羽根式は何が違うのか?
一見よく似ているようで、この2足は全く異なる靴です。どこが違うか解りますか?ブランド?確かにそうなんですが、もっと決定的に異なる点もあるのです。営業などビジネスにおすすめの靴は外羽根式
上の写真、向かって左側の靴は「外羽根式」と呼ばれるものです。甲より前の部分に、鳩目の部分が乗っかっている状態の紐靴を、こう称します。 この靴のルーツは、実はヨーロッパでの有名な戦いにあります。プロシアの陸軍元帥だったゲルハルト・レーバレヒト・フォン・ブラヘルが、このスタイルで戦闘用ロングブーツを仕立てさせ、1815年にかの「ワーテルローの戦い」で、フランスのナポレオンに立ち向かったのです。羽根の部分が全開するので、着脱が比較的素早くできるうえに、フィット感の調節も容易にできる点が靴本来の要素として大変理にかない、以後狩猟用や屋外労働用など一般的にも広く浸透します。1860年代にはブーツだけでなく短靴、つまり今日の一般的なシューズにも採り入れられ、今日に至るわけです。
鳩目部分の形状が競馬のゲートに似ているため、この形状の靴はイギリス・フランスなど主にヨーロッパ諸国ではダービーとかデルビィ(Derby)と呼ばれます。アメリカでは、考案者の苗字を英語読みし、ブルーチャー(Blucher)と呼ばれる場合が多いようです。
冠婚葬祭におすすめの靴は品がある内羽根式
一方、向かって右側の靴は「内羽根式」と呼ばれるものです。甲より前の部分に、鳩目の部分が潜り込んでいる状態の紐靴をこう称します。 こちらのルーツは、イギリスの王室にあります。正に7つの海を支配したイギリス史上最強の女王陛下、ヴィクトリア女王の夫君であるアルバート公が、1853年にこのスタイルでミドルブーツを考案したのがはじまりと言われています。羽根の部分が全開しないので、外羽根の紐靴に比べるとフィット感の調節にはやや難がありますが、見た目の清楚さから、以後パンプスなどから交代し、主にフォーマルユースや室内執務用の靴として普及してゆきました。アルバート公が好んで過したスコットランドの王室御用邸にちなんで、この形状の靴はイギリスやアメリカではバルモラル(Balmoral)と言います。特に短靴の場合は、そちらの起源にちなみオックスフォード(Oxford)と呼ばれる場合も多いです。またフランスでは、なぜかルイ王政期の宰相であるリシュリュー(Rechelieu)、イタリアでは「フランスのおじょうさん」の意味になるフランチェジーナ(Francesina)と呼ばれ、外羽根式に比べ国別の言い方はバラバラです。
ルーツを理解して、自分の足の特徴にあったデザインを選ぶことも正解
とここまで書けば、これらの靴をどのように履くのがより相応しいかは、大方予想が付くでしょう。外羽根式の靴は、どちらかと言えば活動的な場に向いていると言えます。「今日は外回りでガンガン歩かなきゃいけないんだよなぁ……」などと言う時は、微調整がより容易にできる外羽根式の靴の方が、個人的な経験でもやはり疲れ難いです。スーツやジャケットでも、ややカジュアルな柄物に合わせやすいのはこちらのような気がします。一方、内羽根式の靴はどちらかと言えば儀式的な場に向いているでしょう。冠婚葬祭や社内での式典の際などには、スッキリと見える内羽根式の靴の方が、見た目にも品格が出てきます。もちろん靴以外の装いや立ち振る舞いにも気を付けないといけませんよ。こちらは畏まった感のある無地のスーツ・ジャケットそれにストライプのスーツとの相性が良いのではないでしょうか? ただし、自分の足の特徴に合わせてどちらかを選ぶ、というのでも大正解です!極端に甲が高かったり低かったりする人には、フォーマルユースの靴でもフィット感が得やすい外羽根式の方が快適に履けるでしょうし、体格に比べて足の大きな人には、内羽根式を選んだ方がスマートに見えるかもしれません。
いずれにしても、流行に惑わされたり場当たり的に身に付けたりするのではなく、基礎を踏まえた上で自らきちんと考えて履くのが、表層的なファッションばかり注目される今日だからこそ大切だと思います。
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