カーメンテナンス/車の点検ポイント

ハブベアリングとは? 車の燃費にも影響大な注目のパーツ

車の走行性能はもちろん、燃費にも影響するハブベアリングは、まさに自動車の縁の下の力持ち的な部品です。今回は、普段ほとんど気にすることのない、ハブベアリングの交換・メンテナンスについてご紹介していきます。

執筆者:宮島 小次郎

ハブベアリングとは

ハブベアリングは燃費にも影響大の部品

ハブベアリングは車のスムーズな走行を支えるとても重要な部品

ハブ
ホイールと一体になって回転する部分がハブで、ハブベアリングはその中にセットされる
クルマの燃費性能を左右する要因としては、エンジン自体の効率が最も影響しますが、クルマが走行する際に生じる様々な抵抗も無視できません。走行抵抗の代表的なものとしては、ボディが受ける空気抵抗、タイヤが転がる際に生じる転がり抵抗、駆動系を中心とした伝達系統の抵抗などが挙げられますが、そうした中のひとつにハブベアリング回転抵抗が挙げられます。

ハブベアリングというのは、クルマのメカに詳しくない人にはちょっと聞きなれない名称かもしれません。まずハブというのは、簡単にいえばホイールが装着されている部分で、ホイールと一体になって回転します。ハブの内部には、ベアリングが仕込まれており、ナックル側から突き出たスピンドル(棒状の突起とでもいえばいいでしょうか)が、このベアリング内部を貫くようにセットされることで、ホイールをスムーズに回転させながらも、しっかりと車体に固定することができる仕組みとなっています(車種によって構造が異なることもありますが、基本的な考え方は同じです)。
 
ハブベアリング
分解したハブベアリング。グリースが黒くなっているのは、劣化している証拠だ
このベアリングは、通常ハブの内側と外側にセットで組み込まれ、ハブ内部に封入されたベアリング・グリースによって潤滑されていますが、このグリースは使用を続けていくうちに、次第に劣化してきます。そうなるとハブベアリングの潤滑を十分に行うことができなくなり、やがてベアリング自体の摩耗が発生することとなります。こうなるといわゆる「ハブのガタ」が生じ、ハブがスムーズに回転しなくなる、すなわち抵抗が大きくなってしまうのです。

また、それ以外にも、ホイールが装着されている部分にガタが発生するのですから、ハンドリングの悪化や高速走行時に不安定になりやすいといった症状もあらわれてきます。このあたりは、日頃乗り慣れている自分のクルマでは、なかなか気付きにくいものですが、ガタの出たハブベアリングを交換してみると、ハンドリングがしっかりとしたようなフィーリングを味わうことができたり、クルマがスムーズに走るようになったりして、それと分かることもあります。

では、ハブベアリングの劣化はどのように見極めればいいのでしょうか?
 

ハブベアリングの交換時期は? 異音の発生やガタの有無で劣化を判断

ガタの点検
簡易的にガタを点検するには、ジャッキアップした状態でタイヤ・ホイールを揺すってみる方法が有効
通常ハブベアリングで劣化が発生しやすいのが、フロント側です。これはフロントが転舵も担当しているため、負担が掛かりやすいからと考えられます。チェックする方法は、まずジャッキアップしてタイヤを路面から浮かせた状態にします。簡易的なチェックであれば、ホイールを装着したままでもできないことはありませんが、可能であればホイールを外し、ブレーキローターを直接掴める状態します。このとき、ハブボルトなどを利用して、ローターをしっかりとハブに固定するといいでしょう。

そして、ローターの上下をしっかりと掴み揺するように力を加えます。ハブベアリングのガタは、軸方向の遊びとして現れますから、イメージとしては押したり、引いたりして、軸方向のクリアランスを探るような要領です。このとき、遊びが出ているようであれば、ハブベアリングのガタが発生していると考えられます。ただ、このあたりの判断には経験が必要になりますので、できれば信頼のおける整備工場などに点検を依頼するといいでしょう。

一般のユーザーでも分かりやすい見極め方としては、異音の確認です。音だけに文章で表現するのはちょっと難しいですが、ハブベアリングが劣化してくると走行中に「ゴォー」というタイヤのロードノイズに近い音や「ゴロゴロ」といった音が出てくるようになります。走行中はいろいろな音が聞こえてきますから、なかなか判断は難しいですが、車速が上がるにつれて異音が大きくなる、ステアリングを切ると音が変化する、といった場合はハブベアリングの可能性が高いといえます。
 
グリースの交換
分解可能なタイプであれば、洗浄して新しいグリースに交換するというメンテナンスも可能だ
ガタが発生したハブは、その劣化の程度によって、調整もしくは交換が必要となります。FR車のフロントなどではベアリングの締め込み具合を調整できるタイプのクルマもありますので、劣化がそれほど酷くないようであれば、締め込んでクリアランスを詰めることで、一時的にガタを減らすこともできます。このとき、ベアリングを分解できるタイプであれば、一度ベアリングを分解・洗浄し、新しいベアリンググリースに交換することで、さらにコンディションを回復することができるでしょう。

国産車に多い圧入タイプのハブベアリングの場合は、基本的に調整はできないものと考えていいでしょう。こうしたクルマでベアリングのガタが大きくなってきたときには、早めの交換をおススメします。ハブベアリングのガタが大きくなってくると、前述のように走行抵抗が増えて燃費が悪化したり、ハンドリングが不安になってきたりといった症状がまず現れますが、放っておくと最悪の場合、ベアリングが焼き付いて走行不能になることも考えられるからです。
 
ベアリング
一般的には10万km以上はもつように設計されているハブベアリングだが、使い方によっても寿命は変わる
ただ、一般的にはハブベアリングの寿命は、10万km以上はもつものと考えていいでしょう。もっとも車種によっては、もともとベアリングの容量が小さかったり、設計に問題があるなどして、比較的早めにベアリングが劣化するケースもあるようです。また、本来よりも大幅にグリップ性能の高いタイヤを装着している場合や、サスペンションのアライメントを極端なセットにしている場合も、ベアリングに負担を掛けてしまいます。

その他、特殊な例では、サーキット走行などで、コーナー内側のいわゆる縁石に乗り上げるような走り方を頻繁に行ったり、一般道でもタイヤ・ホイールを路肩などに強く打ちつけてしまうと、ハブベアリングを傷めてしまうことがあります。いずれにしても、ハブベアリングはそれほど頻繁にトラブルが発生するものではありませんが、何かのときにこういうトラブルもあるということは知っておくべきでしょう。

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