エンジン以上に特別な性能が求められるミッションオイル
デュアルクラッチ、トランスアクスルなど新機構が満載のGT-R用ミッション |
このミッションの仕組みを解説すると、ちょっと長いことになってしまいますのでまた別の機会にするとして、ここで特殊なオイルが必要とされる理由を考えてみましょう。このシステムの特徴は、クラッチ板が常にオイルに浸った状態、すなわち湿式クラッチが採用されている点です。湿式クラッチはバイクにも採用されていますが、実はクルマのATミッションでも使われています。
そのため、GT-Rのミッションにも何らかのATFが使用されると思われますが、では何が特殊なのかというと、ポイントはその量ではないでしょうか。ATミッションでは、クラッチの潤滑と合わせて、変速を制御するためのバルブボディの作動もATFの油圧によって行っていますから、油量が多すぎても少なすぎてもトラブルの原因となります。
マニュアルミッションをベースとしたVW・AUDI社のDSGでも、DSG専用オイル(やはりATFが使われているようです)を交換する際には、その油量管理がとても重要だといわれています。そのためGT-Rのミッションでも、交換時の油量管理のミスによるトラブルを防ぐため、指定部品としているのでは、と推測されます。またミッションの内部にフロントタイヤへの駆動力を配分するトランスファーも内蔵するGT-Rでは、使用するオイル自体も通常の湿式クラッチ内蔵ミッションと異なる性能が求められるのかもしれません。
デフオイルやブレーキフルードも特殊?
逆にデフについては、特に一般的なデフと比べて特殊な機構が採用されているわけではないようですので(いわゆる機械式のLSDは組み込まれているようですが)、オイル自体に特別な性能が求められるということはなさそうに思われます。そのため、ここを指定部品とするのもやはり量の管理の問題なのでしょうか。
またブレーキフルードについては、指定部品にGT-RスペシャルDOT-4という以外には特別な説明はありません。しかし、サーキット走行まで視野に入れていることを考えると、DOT規格だけに捉われない高温域での安定性の高い特別なブレーキフルードが採用されていることが予想されます。エンジンオイル同様、単純に規格(または粘度)が同じだからといって、性能が同じとは限らないのがブレーキフルードなのです。
こうして見てみると、油脂類についてはメカの正確な動作と耐久性という面から考えて、クオリティがしっかりと確認された指定部品を使うことは大きなメリットがあると思われます。問題は一部のオーナーが望むであろうハードユースにおける耐久性がどれくらい確保されているのかという点ですが、今回のGT-Rに賭ける開発陣の意気込みを考えると、そうしたところまで本当に配慮された仕様と見ることができるのではないでしょうか。
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