カーメンテナンス/車の点検ポイント

ドライブシャフトブーツの点検方法を解説

FF車のドライブシャフトブーツは、亀裂が入りやすい宿命があります。発見が遅れ、破損すると交換の必要があり高額な修理になってしまいますので、ちょっと古めのクルマに乗っている人は、異音に注意するなどこまめに気を付けて点検するようにしましょう。

執筆者:高山 則政

文章 : 高山則政(All About Japan「カーメンテナンス」旧ガイド)

ドライブシャフトブーツが裂けて破れる原因は?

ドライブシャフトブーツの破損は早期に発見したいところ

ドライブシャフトブーツの破損は早期に発見したいところ


エンジンからの出力は、ミッションからドライブシャフトという棒でホイールに伝わります。FF車や4WD車では、前輪を駆動しますが、ステアリングを切らなくてはならないので、ドライブシャフトが大きく曲がるようになっています。これを覆っているゴム製のブーツがあります。

このブーツはドライブシャフトブーツといいますが、ゴム製のため硬化やヒビ割れを起こして割れてしまうことがあります。発見が遅れると、ドライブシャフトそのものまで痛めてしまい、大きな出費が必要になることがあります。そうなる前に、早期発見できるようにしておきたいものです。
 

ドライブシャフトとは

ドライブシャフトって、どこにあるの? と思った方は、ステアリングを切ってバンパーの下あたりからタイヤの裏側をのぞいて見てください。

クルマの真ん中あたりから、ホイールの中心に向かって鉄の棒が伸びているのが分かると思います。これがドライブシャフトです。もちろん、ステアリングを切ってのぞくのはフロントタイヤですが、この場合はFF(前輪駆動)車か4WD(4輪駆動車)ということになります。
ドライブシャフトを保護する役割がある、ドライブシャフトブーツ

ドライブシャフトを保護する役割がある、ドライブシャフトブーツ

今では、FF車というのはごく当たり前のことですが、かつては少数派でした。FF車では、タイヤを操舵しながら駆動するために、曲がり角の大きなシャフトが必要なことから、この実用化が大変だったようです。

FR(後輪駆動車)も、後輪の間に位置しているデファレンシャルからホイールを駆動するためのシャフトは付いていますが、こちらは主にサスペンションの上下動に追従すれば良く、角度はそれほど大きく変わりません。商用車など、リヤサスペンションが独立タイプでない場合はケースに収められて、外からは見えませんが、このタイプではシャフト自体に曲がる機能はありません。
 

ブーツが裂けて破れるとどうなるか?破損して異音が発生する前に

さて、ドライブシャフトの曲がる部分は等速ジョイントと呼ばれていますが、ここはグリースで潤滑するようになっていて、ゴムのジャバラで密封しています。これがドライブシャフトブーツです。ステアリングを切るたびに、この部分が大きく曲げられているのです。

クルマが新しいうちは何ともないのですが、古くなってくるとゴムそのものが硬化したり、ジャバラの谷が裂けてきたりします。

こうなると、内部のグリースが回転するときの遠心力で飛散して、潤滑ができなくなってきます。また、走行中に巻き上げた砂埃や水しぶきが入ると、ジョイント内部に噛み込んだり、グリースを流してサビを発生させたりします。

このような状態になると、ジョイントの動きが極端に悪くなって、走行中にステアリングを切るとコトコトと異音を発生するようになってきます。よほどのことがない限り、折れるような破損には至らないとは思いますが(ジムカーナなどのモータースポーツでは折れることもあります)、かなり不快な思いをすることになるでしょう。また、音が出始めると、内部にキズが残ってしまうことがあり、その後グリースを入れ直しても直らないことがあります。このため、ブーツが切れた場合は、早めに修理する必要があります。
 

ドライブシャフトブーツの寿命はどのくらい?

ステアリング切ることが多いとブーツに負担をかける

ステアリング切ることが多いとブーツに負担をかける

ドライブシャフトブーツの寿命は、どのくらいかというのは、それぞれの使用環境や運(?)によって異なってくると思われるので、一概に言いづらいのですが、最低でも5年5万km? くらいは平気なのではないかと思われます。ステアリングを切らない方がストレスはかからないので、高速走行主体の使用では距離ほどには傷まないでしょう。反対に、狭い路地を切り返す走行が多い場合や、駐車するときにステアリングを左右いっぱいに切る使い方が多い場合は、きつい状態といえるでしょう。

また、最近はゴムではない樹脂ブーツもあるそうですが、破損の確率は極めて低いそうです。
 

時々は下回りをのぞいて見ましょう

そうはいっても、ブーツが切れたことを知らせてくれる機能はありません。知らないうちに等速ジョイントまで痛めていたということのないようにするためには、実際に目で見てチェックするしかありません。新しいうちはザッと見ればよいと思いますが、クルマが古く走行距離が増えてきた場合は、ブーツ表面にグッと寄って見てみます。
谷の部分に細かいヒビ割れが出ている場合は、チェックの頻度を上げるようにした方がよいでしょう。

ドライシャフトブーツが完全に裂けると、内部のグリースが飛び散ります。タイヤハウスに湿った感じの黒っぽい斑点が目立つ場合、それが飛散したグリースのことがあります。そんなわけで、時々は下回りを見るようにしておきましょう。エンジンやミッション、ステアリング周りなどのオイル漏れなども発見するかもしれません。
 

ブーツの修理は?破損の場合は交換が必要

破損の場合は交換が必要

破損の場合は交換が必要

ドライブシャフトブーツが破損している場合は、新品に交換するしかありません。すぐにシャフトがダメになるわけではないので、出先でなおすほどの緊急性は低いのですが、砂利道や雨天走行は避けた方が良いでしょう。もちろん、修理は早いに越したことはありません。

修理は、ディーラーや整備工場でやってもらえます。ブーツは両端に径の大きなジョイントが、その間に細いシャフトがあるという形状で、ブーツはその中間にあるので、ドライブシャフトを外して分解してからの交換となります。そのため、簡単なパーツの割に手間が掛かるのですが、最近はいろいろと便利なものが登場しています。

その筆頭が、分割ブーツです。これは、ジャバラをタテに切ってあり、ドライブシャフトの脱着が一切不要なタイプです。当然、スピーディに作業できるのでカーショップでも修理を受け付けてくれるところがあります。費用は工賃込みで1万円前後になるようです。

ただ、このタイプのブーツでリペアしたシャフトを分解したことがあるのですが、内部に水が入っていたことがあります。これは、非常にレアなケースでメカニックのミスかもしれませんが、そういう可能性が無いとは言い切れないと思います。この辺は、修理する際にどのタイプのブーツを使用するのか、確認した方が良いかもしれません。

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