またしても発覚した、不動産をめぐる「偽装」の連鎖
それからもうすぐ5年。100年に一度と言われた金融危機も何とか乗り越え、分譲マンション市場にはようやく薄日が差し始めてきました。首都圏の新築マンション契約率は今年に入り、6カ月連続して好調・不調の分かれ目となる70%を上回っています(不動産経済研究所調べ)。
総務省による6月の完全失業率は5.2%と、4カ月連続で悪化傾向が続いていますが、緊急経済対策を始めとする政策の効果や改善が続く企業収益を背景に、景気は着実に持ち直しています。マンション市場もどうやら「最悪期は脱した」と判断してよさそうです。
ところが先月、上向きつつある市況をまたしても下振れさせかねない悪いニュースが飛び込んできました。6月18日、「宇部三菱セメント」のセメントを使用した高強度コンクリートに、大臣認定の仕様に適合しないコンクリートが用いられている可能性があることが分かりました。驚いたことに、その12日後の6月30日には、今度は「吉田建材」が製造した高強度コンクリートに大臣認定の仕様に適合しないコンクリートが用いられている可能性があることが分かりました。
振り返れば2007年10月、東証一部上場の大手建材メーカー「ニチアス」が、防火用軒裏天井材や間仕切り壁の一部製品を不正に大臣認定取得していた不祥事がありました。その偽装手口は発熱量の少ない塗装を使用したり、水溶液を浸透させて含水率を高めるなど、試験体に細工をするという悪意性の高いものでした。同社は「断熱分野のパイオニア」と言われるほど断熱材の歴史がある企業だっただけに、その衝撃は住宅市場全体を揺さぶるほどのネガティブ・インパクトとなりました。
また、超高層マンションの「安全神話」を覆した事例として、千葉県市川市の45階建てマンション「ザ・タワーズ・ウエスト・プレミアレジデンス」(総戸数573戸)で、工事中に128本の鉄筋不足が判明したニュースも忘れられません。ゼネコン最大手の「清水建設」を中心としたJV(企業共同体)が施工受注、「三井不動産レジデンシャル」と「野村不動産」が事業主および販売を担当していました。公(おおやけ)にはなっていませんが、不祥事の発覚により数十件の解約申し出があったと聞いています。今ではすっかり過去の話になってしまいましたが、決して風化させてはいけないでしょう。
前出の「宇部三菱セメント」と「吉野建材」による騒動に関しては、国土交通省が専門家会合を開催して技術的検討を行った結果、どちらも「強度その他の性能には支障がないとの所見が得られた」そうです。実害がなかったことが不幸中の幸いです。とはいえ、いつ自分が今度は被害に遭うかもしれません。
そこで、次ページで欠陥住宅に対する法的セーフティネットを確認しておきましょう。