マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

またしても発覚した、不動産をめぐる「偽装」の連鎖(2ページ目)

今年6月、「大臣認定の仕様に適合しないコンクリートが用いられている可能性がある」というニュースが飛び込んできました。「宇部三菱セメント」と「吉田建材」が製造したコンクリートに、その疑惑がかけられました。「またしても偽装か…」―― 誰もが同じ感想を抱いたに違いありません。それほど、業界には偽装が蔓延しています。被害者にならないためにも、住宅セーフティネットの知識をしっかり頭に入れておいてください。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


瑕疵には「物理的な欠陥」「法律的な欠陥」「心理的な欠陥」がある

まずは欠陥(瑕疵=かし)とは何なのか、その定義から確認しておきましょう。文章で表現するのは簡単ではありませんが、一般的に「隠れた瑕疵」について、以下のような説明がなされています。

  1. 目的物が取引上、通常有するべきものとされる品質や性能の欠陥
  2. 当事者が契約上、予定した使用目的に対する適正の欠陥
  3. 売り主が特に保有すると保証した品質や性能の欠陥

具体的には、雨漏り・白アリといった構造上の不具合や土壌汚染など「物理的な欠陥」が最も一般的です。マンションの引き渡しを受けた後に、たとえば鉄筋不足が発覚した場合、物理的な欠陥と判定されます。

また、重要事項説明が不十分だったようなケースは「法律的な欠陥」とされます。都市計画で道路用地として予定していた敷地を、その事実を告げずに売却したとして、その取引が「隠れた瑕疵」と認められた判例があります。

さらに、「心理的な欠陥」も今では瑕疵担保責任の1つとして認められるようになりました。自殺物件や暴力団組員が居住するマンションの売買が、その典型例です。こちらも裁判で争われ、被害者が勝利を勝ち取ったことで、広く「心理的な欠陥」が認知されるようになりました。

消費者保護の広がりを受けて、欠陥の対象範囲は拡大解釈される傾向にあります。われわれ消費者も制度の内容を正確に把握し、万が一に備えて知識武装しておきたいところです。

欠陥が見つかると、売り主に「損賠賠償」と「契約解除」の請求ができる

では、上述したような欠陥が自宅マンションで見つかった場合、買い主は売り主に対してどのような請求ができるのでしょうか。

売買契約では「隠れた瑕疵」が見つかった場合、買い主は売り主に(1)損害賠償を請求することができます。加えて契約の目的が達成できないときは、(2)当該契約を解除することも認められています。よく「売り主の瑕疵担保責任」という言葉を耳にすると思いますが、売り主が買い主に負う(1)と(2)の責任のことを「売り主の瑕疵担保責任」といいます。

ただ、その際、気をつけなければならないのは、売買契約の場合、「売り主の瑕疵担保責任」の中に欠陥部分を無償で修理する責任(買い主側からすると修補請求する権利)は含まれません。被害者心理としては、欠陥部分を修理してほしいという気持ちが最も強いのですが、現行制度では修補請求は対象外となります。この点、誤解のないようにしなければなりません。

 【売り主の瑕疵担保責任とは?】 (売買契約で隠れた瑕疵が見つかった場合)
  • 買い主の請求に応じて売り主が損害賠償する責任
  • 買い主の請求に応じて契約解除する責任 

景気が良かろうと悪かろうと、欠陥住宅が完全になくなることはありません。それだけに、後の祭りにならないためにも、住宅セーフティネットの知識をしっかり頭に入れておいてください。
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