税金/個人事業者の税金

必要経費になる?ならない?「必要経費」の考え方

年末や確定申告の時期が差し迫ってくると、領収書のタバを目の前にしてそろそろ領収書の収集にとりかかろうという個人事業主も多いのではないでしょうか。しかし、そもそも「必要経費」とは何でしょうか。必要経費になるものとならないものとの境目とは?

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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個人事業主の必要経費とはそもそも何なのか

必要経費とは、そもそも「収入を得るために、必要な業務上の経費」を縮めたもの、と解するのが一般的です。

個人事業主の必要経費とは?

個人事業主の必要経費とは?



ですが、税法上は「業務上に必要な経費とはこれこれである」というような例示はなく、逆に「こういったものは必要経費として処理できない」という項目が多いのが事実です。その主だったものをみていくことにより、必要経費とはそもそも何なのかを考えてみましょう。

生活費は必要経費ではない

必要経費とは「収入を得るために、必要な業務上の経費」である旨を前述しました。つまり、個人の日用雑貨品といった生活用品、趣味・嗜好の強いものは必要経費になり得ません。

例えば、あなたが一個人事業主として従業員からタクシー代の精算を依頼されたとします。それが事業の業務に関連のないもので、ただ単に個人の遊興費だと発覚した場合には、すでに必要経費の精算を済ませてあった場合でも、返金など必要経費の精算の取り消しを求めるのではないでしょうか。考え方としては、個人事業であってもその事業をひとつの「会社」とみなし、必要経費を精算を許可するということは、その「会社」の業務に必要な経費として認識される行為と考えるといいでしょう。

家事部分と業務部分が混然一体となっている場合は
必要経費にはならない

例えば、1階で事務所を経営、2階を他人に賃貸、3階が自分たち家族の居住スペースなどという建物が巷にはよくあります。このような場合であっても、ガスや水道、電気といった水道光熱費や固定資産税などは一緒になってしまうことのほうがむしろ多いのではないでしょうか。

このような場合には、その建物のうち業務に使用している部分は事業所得の必要経費、賃貸に使用している部分については不動産所得の必要経費と考えられます。しかし、事務所分・賃貸分・居住分が混然一体となっている場合のことを家事関連費といいます。このケースでは、建物の床面積の基準で区分するといったように、合理的な基準で業務に必要な部分とそうではない部分を分ける必要があります。他にも、プライベートで使用した車のガソリン代と業務用で使用した車のガソリン代(走行距離で区分)とか、プライベートの会食と業務上の打ち合わせに必要な会食(プライベートの会食を自己否認)など、さまざまなケースが想定されます。家事関連費が必要経費と認められるためには、業務に必要な部分を明らかにしておく必要があるのです。

同一生計の親族への給料の支払いは必要経費にならない

個人事業主である納税者が、その納税者と生計を一にしている配偶者その他の親族に対して給料を支払っても必要経費にはできません。必要経費にするためには、青色専従者給与や白色専従者控除といった決まりがあります。


 

青色専従者に該当する者とは?

青色専従者に該当する者とは
  • 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に従事していること(年の中途開業、休業、長期の病気、他に職業のある人などの場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間その青色申告者の営む事業に従事していること)
です。これらの要件は白色専従者控除に該当する者とはと変えた場合でも同じです。

青色専従者に給料を支払う場合、必要経費にカウントするためには?

「青色事業専従者給与に関する届出書」を、所轄の税務署長に青色事業専従者給与を支払う年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2ヵ月以内)までに提出していること、といった条件が必要となります。

つまり、税法の考え方は「納税者と生計を一にしている配偶者その他の親族に対して給料を支払っても必要経費にはできない」ことが原則なので、必要経費として取り扱うためにはこのルールを遵守することになるのです。

支出した金額が必要経費になるとは限らない

少し極端な話ですが、「1000万円経費を増やすのに、1000万円の高級車を購入してしまえばOK」と考える人もいるようですが、実際はそのようなことにはなりません。

耐用年数といって、自動車の場合は6年、パソコンの場合は4年というように、使用や時の経過に応じて徐々に費用化していく方式が取られることになります。この手続きのことを減価償却というのですが、使用や時の経過に応じて価値が減少していくと考えるとわかりやすいでしょう。

耐用年数6年といった場合には「税法上6年で費用化する」と考えるということですから、定額法という計算方法によると、1年では1/6しか価値が減らないということになり、12月に納車になったとすれば、さらに1/12ヵ月分しか価値が減らないとなります。算式の考え方は以下のとおりです。
  • 1000万円×1/6年×1/12ヵ月=13.8888………万円
正確には税法の規定と相違しているところもあるのですが、「1000万円支出したとしても、必要経費になるのは14万円弱」という事例です。

白色申告者の場合には20万円以上、青色申告者の場合でも30万円以上の場合には、この減価償却の仕組みを通じて必要経費に算入されることになります。また、確定申告を行う際にも減価償却の明細の添付は必須ですので、重要なポイントでもあります。

なお、近年、減価償却制度は税制改正が相次いでいます。損益と収支が相違することを理解していないと、確定申告はおろか経営そのものも立ちいかなくなるケースもでてきますので、「自分の場合はどうなるのか?」と疑問に思われる方は専門家のアドバイスを受けてみることをお勧めします。

このように、必要経費に算入するためには税法上、必要経費とならないものをくぐり抜け、必要経費とするための適正な手続きと書式の添付が求められるものがあります。早目に準備し、適正な確定申告を行いたいものです。

【関連情報】
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