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給与以外の所得とは?どんなものが給与所得以外の所得にはあるか

給与所得以外に所得区分の種類は10種類あります。儲けにかかる税金が所得税なら、所得税法において「儲け」と認識されているものの種類と内容を押さえておくことが重要。例えば、医師であっても開業医と勤務医とでは税金の課され方が違います。給与以外の所得にはどのようなものがあるでしょう。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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所得税法において「儲け」と認識されているものにかかる税が所得税

ガイド記事「所得税がかからない「非課税所得」とは」では非課税所得の定義「儲けであるけれども、所得税という税金がかからないもの」と説明しました。逆にいえば、「儲けにかかる税金が所得税」なら、所得税法において“儲け”と認識されているものの種類を押さえておくことが税金を理解する第1歩となります。

<目次>  

給与所得以外に所得区分の種類は10種類

所得税法上の儲けとは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得のいずれかの区分に属するものです。ここでのポイントは、私たちが通常の会話でよく使用する「副業」という所得区分はないということです。

「副業ってどの程度ならバレない?」という質問をよく頂戴したり、耳にしたりしますが、まずは、その“副業”が何所得なのかの区分をきっちり行わないと、税務上の正しい解答にはたどりつけないので注意しましょう。
 

働くということに関連する所得の区分

ここでいう“働く”とは、一般に「汗をかいて……」というようなイメージで捉えてください。これに関連するのは「給与所得・退職所得のグループ」と「事業所得・雑所得のグループ」に分かれます。給与所得・退職所得のグループは一般に「雇用」とか「勤務」という言葉と結びつきが強いイメージでとらえてください。逆に、事業所得・雑所得のグループは一般に「顧問」「請負」とか「独立」というイメージでとらえるとわかりやすいでしょう。

一方、“働く”以外の所得の区分は「何から得ている所得か」という視点で分類するといいでしょう。たとえば、土地や建物から得られる収入から得ている所得であれば不動産所得となりますし、売却で得た所得であれば譲渡所得に区分されることになります。
金融資産で得た収入に関しては、原則、利子所得か配当所得、売却で得た所得であれば譲渡所得に区分されることとなります。
 

給与所得と事業所得の違い~会計事務所の場合~

例えば、弁護士資格や会計士資格を持っている有資格者が、そのスキルを武器に会社に勤めていて、そこからの指示・業務命令を受けて働いているのであれば、給与所得者となるでしょう。会計士資格を持っていても監査法人の一従業員や、会計事務所の一職員として働いている場合も、指示・命令が会計事務所になるだけで変わりがありません。なお、この場合、雇用契約の中での業務の最終責任の所在は監査法人や会計事務所となるのが通常でしょう。

逆に、税理士としてその会社の申告書作成や税務相談、不服申し立てといった税務業務に対して顧問契約を締結しているとすれば、一般に事業所得として取り扱うことになります。その顧問先からの指示・命令で動くのではなく、公正・独立の立場で適正な助言を行わなくてはならないからです。

この場合、雇用契約で取り決められた税務判断の最終責任の所在は、その個人事業主である一税理士が負うことになります。

これは医師という職業であっても同じです。○○大学付属○○病院の勤務医ということであれば給与所得となりますし、街中の○○クリニックを開業(法人形態を除く)ということであれば事業所得となるでしょう。
 

給与所得と事業所得の違い~税務処理の違い~

給与以外の所得とは、給与所得以外の所得

モデルや女優なら必要経費の種類も範囲も違うことになるでしょう

このように給与所得に区分されるのか>事業所得に区分されるのか?という違いは、税務処理にも影響してきます。

給与所得者の場合は、給与所得控除額といって、必要経費に該当するものが所得税法上定められています。また、年末調整という税務手続きを会社側が行ってくれて、雑損控除・医療費控除・寄附金控除(ワンストップ特例の活用を除くふるさと納税含みます)・住宅ローン控除の1年目以外の手続きは、原則として会社側の処理で完了します。

これに対して事業所得者の場合は、必要経費を積み上げなくてはなりませんし、必要経費に該当しそうなもの、算入する?算入しない?の判断も自己で行うこととなります。年末調整という税務手続きもありませんので、確定申告を毎年行うということになります。

「独立」とか「自己責任」という概念がより強くなるのが事業所得だということです。
 

給与所得に付随する「退職所得」と事業所得に付随する「雑所得」

退職所得とは給与所得に付随するもの、雑所得とは事業所得に付随するものと押さえておくといいでしょう。

退職所得とは永年の勤続の報奨や功労に対して、生前に退職手当や一時恩給に対して課税される所得のことです。したがって、給与所得を得ていないものがポンと退職所得だけ得るというのは通常はあり得ないこととなります。

事業所得と「独立」とか「自己責任」という言葉と結びつきが強いのは前述したとおりですが、「独立」とか「自己責任」ということが強くなればなるほど、その業務は「継続・反復」していくこととなります。「継続・反復」していけば、その先にあるのは「生計を維持できる規模」ということになるので、事業所得と雑所得の違いは「生計を維持できる規模」であるかどうかということです。よく生計を維持できる規模ではない、「小遣い稼ぎ」は雑所得と説明される所以もココにあります(また、年金による所得は給与所得ではなく、雑所得扱いとなるところもポイントです)。
 

仮想通貨で得た儲けは雑所得に

近年、国税庁より仮想通貨で儲けた利益は原則的には雑所得に該当するという内容のタックスアンサーが発表されました。ということは、現状の考えかたとして「仮想通貨で儲けた利益」があったとしても、「生計を維持できる規模ではない」あるいは「継続・反復・独立」していないという判断がなされていると解釈することができます。

逆に、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合は、「事業所得等の基因となる行為に付随したものである」とされ、事業所得とされることとなっています。

事業所得は「生計を立てる」ということと結びつくので、税務上有利な点があります、それは損益通算といって、損失、つまり「独立してみたけど赤字だった」というような場合であれば、給与所得など他の所得から通算、つまり、差し引くことができるのです。

雑所得の場合、この損益通算の対象とすることはできません。つまり、儲けが生じたら給与所得など他の所得に加えて確定申告することが必要となりますが、損失が生じた場合には給与所得など他の所得から差し引くことはできないのです。

このように、「所得の区分」がわかることで得ることができる情報は格段にあがります。

なお、近年、国税庁がパブリックコメントを出したことを受け、「300万円以下の副業が原則として雑所得になるのでは」と注目を集めましたが、結論からいうと「300万円基準」は修正され、
  • 収入金額が300万円以下でも記帳・帳簿書類の保存があればおおむね事業所得
  • 収入金額が300万円を超えていても、記帳・帳簿書類の保存がなければおおむね雑所得
という新しいルールができたので、原稿料や雑誌のモデル、食事配達や民泊などのシェアリングエコノミー等に代表される「副業」についても、きちんと記帳・帳簿書類の保存をしておくことをお勧めします。

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