資産運用に関する所得を解説

確定申告の手引等には「所得税には利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得の10種類があり、それぞれ……」というような記載になっているものがほとんどですね。

確かにこの時点で所得の区分が不明確だと、その後、得たい回答や結論がかけ離れてしまうことがあるのも事実です。しかし、だからといって所得の区分に神経質にならず、「アパートやマンションで家賃収入を得ている」「株の売買で売却益が出た(あるいは損がでた)」「仮想通貨を実際に利用して商品を購入したことがある」などというように、どんなことを行い、どんな儲けが出たのか(あるいは損失がでたのか)を説明できるようにしておけば、論点がハッキリしてくるのではないでしょうか。

世の中の8割の人は給与所得者

世の中の8割以上の人は給与所得であるといわれています。つまりどこかの会社に所属し、そこから支給される給与で生活をしていると考えると、所得の区分を押さえるときにも給与以外に所得にはどんなものがある? という視点でザックリ分類したほうがわかりやすいと思います。「給与以外に所得にはどんなものが?<前編>」に続き、解説します。

労務に関する所得と資産運用に関する所得

給与所得とは、原則、会社で働いている労務の対価として受け取るものです。同じく勤務先から受け取るものでも退職時に一時金として受け取るものとして退職所得があり、会社勤務ではなく、一外注先、あるいは一業務の請負先として、独立しているのであれば事業所得となります(規模が小さければ雑所得となります)。総じて、労務、つまり、働いていることに対して耐価を得る所得ということになります。

一方、自分以外の何かに「働いてもらって」得る所得もあります。この自分が働く以外に所得を得る何かとは突き詰めていうと、資産運用に関する所得ということになります。

資産ってなに?

では、資産とは何でしょうか? 一般的には「お金を稼ぎ得る道具」と考えるといいでしょう。例えばある工場では機械装置が「お金を稼ぎ得る道具」でしょうし、IT関連の会社ではパソコンが「お金を稼ぎ得る道具」となるしょう。

したがって、サラリーマン等がスキルアップをしたい場合に「自己投資」という言葉を用いることがあります。この「自己投資」の「資」は「資産」の「資」と考えてみてください。たとえば、「語学の習得」「資格の取得」「人脈の形成」などが、本人のスキルアップを通じて、収入のアップに結び付くのであれば「自己投資」の「資」も、充分に「資産」といえるのではないでしょうか。

税務の視点から、「資産」つまり「お金を稼ぎ得る道具」として所有できるものは何か? 土地・建物といった不動産資産や株といった金融資産となります。

つまり、資産運用に関する所得とは不動産資産や金融資産に「働いてもらって」得る所得ということになります。

不動産資産運用に関する所得

リゾートマンションも賃貸に出せばお金をうむかも……

リゾートマンションも賃貸に出せばお金をうむかも……

不動産資産は通常、人に貸し付けることによって所得を得ることができます。

不動産資産を人に貸し付けることによって得た所得、これを不動産所得といいます。土地・建物といった不動産本体だけでなく、借地権といった不動産の上に存する権利、船舶は航空機の貸付といったことも不動産所得の区分に入ります。

また、不動産資産は値が上がることによって売却時にも儲け(所得)を得ることができます。このことを譲渡所得といいます。ただし、値が下がった場合には売却損が出る場合もあり、値上がりしていなくても、時の経過や使用によって建物本体や付属設備がいたむことになるので、その分の減価を考慮しなくてはいけません。
たとえば「10年前に5000万円で購入したマンションが、5000万円で売却できた」というような場合、
  • 5000万円ー5000万円=0円(儲け)
とはならず、購入したマンションの建物や付属設備分は使用によっていたんでいる(価値が減っている)ので、その分、「減価償却」という手順を踏むことで考慮しなくてはならないのです。

その後、売却したものがマイホームの場合には儲けた場合にも損が出た場合にもさまざまな特例が用意されていますが、まずは「購入価額をそのまま差し引けるわけではない」ということがおさえられれば、それを明確にするための作業に入ることができます。

このように、不動産所得や譲渡所得という所得の区分が判明したら、自分のわからない箇所は何かという原因を、よりピンポイントにしていく作業というのが必要になります。

金融資産運用に関する所得

金融資産というと「財テク」という言葉があるように、ちょっと身構えてしまうかもしれません。しかし、多くの方が持っている金融資産、それは預貯金ですね。預貯金には利息がついてきますが、この利息、所得の区分では利子所得となり、立派に税金の対象となっているのです。

103万円プラスアルファにならない理由

よく控除対象配偶者の範囲内でいるため、パートの年額を103万円以下に抑える人がいますが、上記のように利息も立派な税金の対象ならば、なんで103万円プラスアルファとはならないのでしょうか。

これは税金のかかり方に特徴があって、利子所得の場合には所得税15%・住民税5%の税金が通帳に入金されるときに既に差し引かれていて、それで課税が完結するというルールになっているのです。

例えばある日通帳記入に行ったら800円の利息がついていたとしましょう。その段階で所得税150円(注)・住民税50円税金が差し引かれていることで課税関係が完了し、確定申告等を行う必要はありません。このような税金のかかり方のことを源泉分離課税というのですが、パートの年額にプラスアルファをして税金の計算をやり直す必要はないのです。

金融資産に多い分離課税方式

分離課税という税金のかけ方はこのように支払う段階で課税を行い、課税関係が完了する源泉分離課税というものと金融資産運用に関して多く用いられている申告分離課税、つまり、とりあえず、税金を源泉徴収しておくけれど、その後、必要に応じて確定申告してもいいものに分類されています。

たとえば、上場株式等の配当や源泉徴収選択口座での上場株式等の売却益がでた(あるいは売却損がでた)、配当をもらったなどがその代表格です。

お任せで損をしている?金融資産に係る税金

ただし「銀行や証券会社側で税金の計算と徴収をしておくから心配無用」ということに頼りきっていると、税法上、支払わなくてもいい税金を差し引かれているケースもあります。

例えば70万円で購入した株を100万円で売り抜けたとします。この場合、源泉徴収選択口座であれば、所得税45000円(=15%)(注)住民税15000円(=5%)自動的に差し引かれて手取り24万円となるのですが、この方が専業主婦などほかに収入がない場合、30万円という所得が所得控除のワク内であるため、確定申告さえ行なえば所得税45000円(=15%)(注)、住民税15000円(=5%)という税金も支払わずに済むのです。
 
所得より所得控除が大きければ税率のかかる所得は存在しません

所得より所得控除が大きければ税率のかかる所得は存在しません


金融資産運用に関する所得の区分プラスアルファ

金融資産運用に関する所得の区分でいえば、
  • 利子所得 : 預貯金や公社債の利子、公社債投資信託の分配金など
  • 配当所得 : 株の配当や株式投資信託の収益の分配など
  • 譲渡所得 : 上場株式等の売却で得た儲け など
  • 雑所得:仮想通貨で得た儲け 年金形式で受け取る保険料など
  • (先物取引等にかかる)雑所得 : FX取引など
となりますが、税金のかかり方として分離課税として放置しておいていいものと、あえて「確定申告をする」という選択をしたほうが有利になるものと金融資産運用に関する所得には混在しています。

このように、「金融資産を運用して儲けを得ている」という漠然とした括りではなく、上場株式であれば「特定口座の源泉徴収選択口座で運用している」「特定口座の簡易申告口座で運用を行っている」あるいは「NISA口座で運用を行っている」というようの個別具体的な事情がわかれば、次に「確定申告すべき?」「確定申告すれば税金が戻ってくる?」というような自身の有利・不利の判断につながるような情報を得ることができると考えます。

(注 この記事内では仕組みをわかりやすくするため、復興特別所得税は考慮していません)

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