介護サービス費用も医療費控除できる

介護保険制度が導入されて約17年が過ぎました。総務省統計局によると、2015年9月15日現在の高齢者人口は3384万人(2014年は3295万人)、総人口に占める割合は26.7%(同25.9%)。介護サービスを利用する人も急増しています。

しかし、介護サービスを利用しているのに医療費控除として還付申告している世帯はそれほど多くはありません。

医療費控除の対象となる介護関連費用には、次のようなものがあります。
介護保険制度の介護サービス利用料の自己負担分(※)
紙おむつ代
交通費
施設に入居している場合、居住費と食費

ただし、介護サービスの中でも医療費控除の対象にならないものもあります。また、仕送りしている親の介護費用を合算できるほか、家族の誰が医療費控除の申告をするかで還付される金額にも差が出ます。以下、詳しく見ていきましょう。

(※)介護保険サービスを利用した場合は、本人あるいは世帯の所得によって利用料の1割あるいは2割を負担します。これを自己負担割合と言います。自己負担割合が2割になるのは、次の2つの条件を満たす人(世帯)です。なお、65歳未満は今まで通り1割負担です。

  1. 第一号被保険者本人の合計所得が160万円以上
  2. 「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯は280万円以上、2人以上の世帯は346万円以上 

医療費控除の対象となる、居宅介護サービス費

居宅で受ける介護サービスは、医療系と福祉系に大きく区分されます。医療系は介護サービス利用料の1割あるいは2割の自己負担分と食費、滞在にかかる自己負担分が控除の対象です。さらに、介護保険の支給限度額を超えて利用した全額自己負担分(特別な食事や居室にかかる費用は除く)も控除の対象になります。

福祉系の居宅介護サービスは、介護サービス利用料の1割あるいは2割の自己負担分が控除の対象ですが、「あ~勘違い」では済まされないチェックポイントが3つあります。

  1.  医療系の居宅介護サービスとセットで利用する場合に、医療費控除の対象となるサービスがある
  2.  介護保険の支給限度額を超えて利用した場合の全額自己負担分は、医療費控除の対象外である
  3.  医療系の居宅サービスとセットしないで介護福祉士等の喀痰吸引等を利用した場合は、居宅サービス費として支払った金額の1/10が医療費控除の対象となる

医療費控除の対象となる金額は、都道府県知事が指定する居宅サービス事業者が発行する領収証に明記されています。領収書を受け取るときに必ず確認しましょう。

●医療費控除の対象となる居宅サービス一覧

(1)医療系居宅サービス(自己負担金額全額が対象となる)
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・(介護予防)居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
・通所リハビリテーション(医療機関でのディサービス)
・介護予防通所リハビリテーション
・(介護予防)短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
・複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分は除く)に限る)

(2)(1)の医療系居宅サービスと併せて利用した場合のみ医療費控除の対象となる居宅サービス
・訪問介護(ホームヘルプサービス)。ただし、生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事援助)中心型を除く
・夜間対応型訪問介護
・介護予防訪問介護
・(介護予防)訪問入浴介護
・通所介護(ディサービス)
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・介護予防通所介護
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・介護予防短期入所生活介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
・複合型サービス(上記(1)の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分は除く)に限る

医療費控除の対象となるおむつ代

医療費控除として申告できるおむつ代は、傷病等でおおよそ6カ月以上寝たきりで、医師からおむつの使用が必要と認められた人です。「寝たきり」の言葉のイメージから「うちは寝たきりではない」と考えるのはちょっと待って。障害高齢者の日常生活自立度の「寝たきり」は、次のような状態を言います。
医療費控除の対象となる、居宅介護サービス費

医療費控除の対象となる、居宅介護サービス費

医療費控除の際には、「おむつ代の領収書」と医師が発行する「おむつ使用証明書」を添付する必要がありますので、「寝たきり」に該当する障害高齢者で医師に相談しないでおむつを使用している人は、一度、医師に相談するといいでしょう。

2年目以降の医療費控除では、要介護認定者が下記の要件を満たしている場合は、市区町村が発行する「おむつ代の医療費控除に係わる確認書」を「おむつ使用証明書」の代用とすることができます。

●要件
・「主治医意見書」の作成日が、おむつを使用した当該年に作成されたものである
・「主治医意見書」の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)」が「B1・B2・C1・C2」のいずれかである
・「主治医意見書」の「尿失禁発生の可能性」欄が「あり」となっている

医療費控除の対象となる交通費

医療費控除の対象になる交通費は、通所リハビリテーションや短期入所療養介護等を受けるために、介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設に通うときに支払った交通費で、通常必要とされるものです。

電車やバスのような正確な料金がわかる交通機関を利用した場合には領収書は不要ですが、やむなくタクシーを利用した場合は領収書が必要です。下車するとき「領収書をください」との声掛けをお忘れなく。

なお、自家用車を使用した場合のガソリン代や駐車場の費用は対象外です。

医療費控除の対象となる施設関連費

介護施設は福祉系と医療系の2つに区分され、それぞれ次のような施設があります。 
・医療系の施設:介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設
・福祉系の施設:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、地域密着型介護老人福祉施設

医療費控除できるのは、施設サービスの対価(介護費・食費及び居住費)として支払った自己負担の金額の、
・医療系は全額
・福祉系は半額
で、日常生活費や理美容代等の特別なサービス費用は医療費控除の対象にはなりません。控除対象額は施設等が発行する領収書に明記されています。

注意が必要なのは「高額介護サービス費の払戻金」の扱いです。払い戻しを受けた場合は、その額を差し引かなければいけませんので、銀行の通帳等でチェックしましょう。
介護施設入居者の医療費控除の対象と割合

福祉系と医療系で医療費控除の割合が違う


医療費控除の対象にならない介護サービスもある

次の介護保険の居宅サービスは医療費控除の対象にはなりませんので、注意しましょう。

・訪問介護(生活援助中心型)
・認知症対応型共同生活介護【認知症高齢者グループホーム】
・介護予防認知症対応型共同生活介護
・特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】
・介護予防特定施設入居者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・介護予防特定施設入居者生活介護
・(介護予防)住宅改修費支給
・(介護予防)福祉用具購入費支給
・(介護予防)福祉用具貸与
・複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)

※介護福祉士等による喀痰吸引の対価(居宅サービスの対価として支払った額の1/10相当の金額)は医療費控除の対象となる。

特定施設とは、「(介護付き)有料老人ホーム」「養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(旧適合高齢者専用賃貸住宅)」のうち一定の条件を満たしている施設をいいます。

また、(介護予防)特定施設入居者生活介護とは、特定施設に入居している要支援・要介護者に対して、介護サービス計画に基づき「入浴・排泄・食事等の介護、日常生活上ならびに療養上の世話、機能訓練」を行うことをいいます。

仕送りしている親の介護費用も合算できる

医療費控除の対象は「生計を一にする親族(6親等内の親族と3親等内の姻族)」です。扶養しているかどうかは問いません。

同居している親族の場合、収入があっても明かに独立して生活していると判断できる場合を除いて「生計を一にする」との取り扱いになります。また、同居していない親族であっても、常に生活費を仕送りしている場合も「生計を一にする」となります。

親に生活費を送金している人は、状況によっては親の医療費と介護関連費用を合算することができる可能性があります。

家族のうち誰が医療費控除の申告をすると得?

世帯主以外に所得税を納めている人が複数いる家庭の場合、誰が医療費控除を申告すると得になるでしょうか。

考えるポイントは、「医療費控除額は200万円まで」、「自己負担分が10万円または合計所得金額の5%(消費税も含む)を超える金額が医療費控除の対象となる」の2点です。したがって、申告する人は、次の1~3の順で考えるといいでしょう。

1. 一般に所得税率の高い人が医療費控除申告をすると有利
2. 医療費控除額が少ない場合は、所得金額の5%ルールを利用するほうが有利な場合もある
3. 年間の医療費自己負担額が210万円を超える場合は、210万円を超える医療費額を他の所得税納税者が確定申告する

ここでは、上記「2」のケースで試算してみましょう。

●条件

夫の課税所得500万円、妻の課税所得150万円、1年間に支払った医療費総額11万円

●医療費控除対象額
・夫が申告する場合:11万円-10万円=1万円
・妻が申告する場合:150万円×5%=7万5000円(5%ルール)、11万円-7万5000円=3万5000円

●還付される所得税と来年度減額される住民税の合計額(概算)
 
・夫が申告する場合:1万円×30.42%(所得税20%、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)、住民税10%)=3042円
・妻が申告する場合:3万5000円×15.105%(所得税5%、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)、住民税10%)=5286円

この場合、妻が医療費控除の申告を行うと、2244円多く還付されます。計算するって本当に重要です。

医療費控除を申告すれば住民税も安くなる可能性

医療費控除は所得控除なので、ダイレクトに税額から差し引かれるわけではありません(かかった医療費がそのまま戻ってくるわけではない)。労力の割に所得税の還付額が少ないという理由から確定申告をしない人も多くいます。

とはいえ、所得税の還付申告をすれば、来年度の住民税が減額されるというメリットもあります。還付金額がわずかであっても確定申告することをおすすめします。

2015年8月から、合計所得金額160万円以上の所得(目安額は年間の年金収入が単身で280万円以上、夫婦で359万円以上)がある人は介護サービス利用自己負担割合が1割から2割に引き上げられました。介護サービス費の医療費控除を活用する人が今後増えることは間違いないでしょう。

▼いざ確定申告! 医療費控除の段取りはこちら

書類の入手方法>>医療費控除の申請書はどこで入手できる?
手書きで作成するなら>>医療費控除の申告方法と明細書の書き方
PCで作成するなら>>国税庁「確定申告書等作成コーナー」
提出期限など>>還付金をもらうにはいつまでにどこに行けばいい?