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緑色の大玉すもも 幻の美果 ケルシー

大きなものは200g以上にもなる、超特大の緑のすもも。栽培が難しい為、その生産量は極めて少なく、まさに幻です。「甲州大巴旦杏(こうしゅうだいはたんきょう)」とも呼ばれていました。

執筆者:萩原 章史

 
ケルシーすもも
見た目が悪いせいか、価格はリーズナブル 6玉から8玉で1500円くらい
 

山梨生まれでカリフォルニア育ちの帰国子女「ケルシー」

原産は山梨の甲西町と言われていますが、正確にはずっと昔に、中国から「すもも」が伝わり、栽培適地が山梨だったのだと思います。
つまり、太古のすもものDNAを引いているのが「ケルシー」とも言えます。

明治三年 アメリカ人のHough氏がケルシーを食べて驚き、カリフォルニアに持ち帰り、バークレーのケルシー農場で栽培したので、ケルシーの名がつきました。
元々、甲州大巴旦杏、兜李と呼ばれていた古来の品種ですが、日本に「ケルシージャパン」として逆輸入されました。
日本原産の果実は、実は非常に少ないですから、それが帰国子女的なデビューとなると、まさに稀も稀です。
 

味も大きさも優れていながら、見た目が緑の為、ブレークしないケルシー

ケルシーすもも
白い粉はブルームと呼ばれ新鮮な証
日本人の悪いところです。何でもそうですが、先ずは見た目にこだわります。
その為、緑の巨大すもものケルシーは一般には人気がなく、いわゆる、「マニア垂涎」的な幻のすももです。その大きさは150g~200g。大きなものは250gもあります。
スーパーの店頭に並ぶ、普通のすももは50g~120gくらいが多いですから、本当に大玉です。たぶん、一番大きなすももの一種であることは間違いないです。
 

真っ白なブルームの下は透き通る緑

ケルシーすもも
磨けば美しい緑色の姿になります
ケルシーの表面には白い粉(ブルーム)がついています。水に濡れたままだと病気になりやすいため、この粉は植物が実を雨などの水分から守る為に、自然につくものです。

このブルームが緑のケルシーの見た目をさらに悪くしています。特に収穫したては前面に粉が吹いた状態です。ところが、室温で保存していると、数日で緑が黄がかってきます。すると、この粉が取れてきて、艶が出てきます。その状態が熟した証です。
つまり、柔らかで痛みやすい「すもも」は完熟手前で収穫し、常温で追熟させます。
 

真ん中に空洞があるケルシー 先端部から 「がぶり」 がおすすめ!

ケルシーすもも
真ん中に空洞があり、色が褐色なのがケルシーの特徴 痛んでいるのではないです
ひよこのような形をしたケルシーですが、もうひとつの特徴は真ん中の空洞です。
皮も食べられます。さっと洗ってから、とがった部分にかぶりつくと、空洞が見えます。

空洞の下に小さな種がついています。また、空洞の周りは褐色に変色しています。
この空洞褐色が一般消費者のクレームになり易く、ケルシーは美味なのに、一般うけしない為、必然的に売り難いので、栽培者も少なくなり、幻になりました。

腐る寸前まで追熟させると、酸味が少なく甘いケルシーはとても美味です。すもも好きには2グループがあります。酸味が好きなグループと、腐る寸前の妖しい味が好きなグループです。ケルシーの場合、食べる時の熟し具合で両方が楽しめます。
 

日本での栽培はとても難しいケルシー

ケルシーすもも
ケルシー栽培はとても難しいです
雨の少ないカリフォルニアでは簡単だったケルシー栽培ですが、日本の場合は多雨なので、とても作るのが難しいようです。一個一個に雨よけ、日よけの紙の傘を掛け、大切に育てます。
山梨の笛吹市御坂町のケルシー畑を訪ね、お話を聞いたことがありますが、ケルシーは収穫期間が10日から長くて2週間 それもある日に一気に収穫の山がくる為、収穫の為の人力を集めるのも大変だそうです。

色々な理由で幻の美味なすももに甘んじる ケルシー 知る人ぞ知る 美味です。


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