Q.13 毒ヘビを売って1億円も儲かるのか
これは、おそらく報道の仕方に誤解があるでしょう。報道では、逮捕された経営者は「毒ヘビを売って、4年間で1億円の売り上げ」とされています。
この「売り上げ」が「売り上げ総利益」なのか「売上高」なのかはわかりませんが、ちょっと多すぎるような気がします。
おそらく、毒ヘビ1匹の単価は、種類によっても異なりますが、どれほど高価であっても10万円以内と思われます。とにかく需要が少ないからです。ちなみに、一般的に私たちが購入する無毒の安全なヘビは高価でも5万円程度です。もちろん希少価値があるものなどは100万を超えるようなこともありますが。
愛好家の心理として、リスクの高い毒ヘビにそれほど高い金額を出すとは考えにくいですし。
10万としても4年間で1000匹を売らなくては1億にはなりません。ということは1年間で250匹です。土日を除いて、毎日1匹の10万円を超える毒ヘビが売れなくてはいけません。逮捕された男性でさえ51匹です。
やはり「毒ヘビだけで4年間に1億円」は無理があるでしょう。そのペットショップは毒ヘビ以外にもたくさんの安全で無害な生き物を販売していましたので、それらすべての売り上げと思われます。
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ただし、このショップは現実に毒ヘビを販売していたわけですから、売り上げの中に毒ヘビが占める割合というのは多いというのは間違いのないことでしょうが。
Q.14 毒ヘビたちはどうなったのか
これもニュースで報道されていたので、ご存じでしょうけど、現在は群馬県にある日本蛇族研究所(ジャパンスネークセンター)で飼育されているようです。最後に、逮捕された男性が飼育していた51匹の毒ヘビの内訳をリストにしますが、正直、日本中のどの動物園に行っても見ることができないような種類も多く、学術的には大変興味があるものなのです。
実は私が、この事件があっても、まだ報道されていなかった8月のはじめに、偶然にスネークセンターを訪れたときにも、すべての発端になった咬みついた「張本人」であるトウブグリーンマンバが展示されていたようなのです。
この事件ののち、不本意ではあるのですが、思いがけず、スネークセンターの来場者数も急増したようです。
今後の動き
さて、最後も近づいてきましたので、ここで私たち両爬飼育愛好家にもっとも関心がある、今後の影響です。やはり、これだけ世間を騒がしてしまった大事件ですし、続報がないのでなんとも言えませんが、飼育者だけでなくどうやら近所の方にもケガをさせてしまったらしいのですから、毒ヘビの飼育により具体的で効果的な法規制が検討される、しかも速やかに、というのは間違いのない動きでしょう。そして、それは当然の流れです。
そして、これまでの動きから、これまで規制がなかったナミヘビ科の「弱毒性」の安全な種類も検討されることでしょう。
爬虫類の輸入や流通にも、これだけ関心を持たれてしまったのですから、こちらも何らかの検討があるはずです。私たちのようなマイノリティが権利を主張しても、世間一般ではヘビを飼うこと自体が非常識なことなのですから。
とにかく、私たちができることはただ一つ。
絶対に飼育中の個体を脱走させないことです。それが安全な種類だろうがなんだろうが、です。
とにかく、今回のことはこれまでのさまざまな両爬飼育に吹いた逆風の中でも、もっとも強烈なものであったことは間違いありません。