Q. 日本にもガラガラヘビがいるんですか?
ニシダイヤガラガラヘビ 撮影:ベルリン水族館
つまり、たとえばこんなの
「先日、山に行ったら、大きなヘビを見つけました。気づかずに近寄ってしまったら、鎌首をもたげて、尾でものすごく大きな音を立てられました。驚いてすぐに逃げたのですが、あれはガラガラヘビだったと思います。日本にもガラガラヘビがいるのでしょうか?いるとしたらペットが逃げたりしたものなのでしょうか?」
で、私の回答。
A. たぶん、ガラガラヘビではありません。日本のヘビが尾で地面を叩いた音だと思います
まず、この手の「ヘビが尻尾を鳴らす」と言う話の正体は、ヘビが威嚇のために尻尾を地面に叩きつけて音を出している、ということでほぼ間違いないでしょう。特に、このような行動を行うのはシマヘビとアオダイショウが多いのですが、飼育下での行動や、私が野生で観察した経験ではヤマカガシ、ジムグリやヒバカリなども行なっていました。
これが結構、大きな音ですし、咬蛇姿勢などをとるものですから、初めて見る方やヘビが嫌いな方は驚かれるのも無理はありません。
もちろん、尾を叩きつける速さはかなりのもので、それを確認する余裕などがあるわけもありませんから、頭の中では「音を出すヘビ」=「ガラガラヘビ」という式ができあがるのも無理はありません。
しかし、もちろんガラガラヘビは北アメリカや南アメリカに生息するヘビで、日本には生息しませんし、そもそも音の出し方が異なります。
ヒガシダイヤガラガラの発音器官 |
画像提供:ジャパンスネークセンター |
ガラガラヘビの音を出す器官は、尾の先端部にあります。これは脱皮殻が重なっていくつもの空間ができている構造をしています。それを激しく振ることで脱皮殻どうしがこすれて、空隙で反響して大きな音が出るのです。
少なくとも、日本国内のヘビで、そのような発音器官を持つ種類はいません。
だから、こういう質問が来ると「日本にガラガラヘビなんているわけねーじゃんかよー。ったく、これだから素人は困るんだよなー。」なんて思ったこともしばしば。
でも、よく考えてみると「日本にガラガラヘビはいない」って決めつけた、私の言い方ってどうなんでしょう?
科学って再現性がなければいけない。
たとえば私に対して、その質問者が「そんなことはない、自分が見たのは絶対にガラガラヘビだ。日本にだってガラガラヘビがいるかもしれないじゃないか?」って反論しても、再現性、つまり「ガラガラヘビを日本で捕まえ」て、本当にいたことを証明してもらわなくてはいけません。
だから、逆に言うと、私が「いや日本にはガラガラヘビはいない」って主張するためには、日本中をくまなく探して、「一匹もガラガラヘビはいませんでした」と「いない」ことを証明しなくてはいけないのではないかと。
したがって、上の見出しにあるような「たぶん」という言葉をつける必要があるんだろうな、って気がしています。
で、こう書いていると、さらに想像力が広がって、たとえばツチノコ。いや、まあツチノコに関しては、いつか記事にしようとは思っているんですけど。
ツチノコを見た、っていうのも、このガラガラヘビを見た、というのに似ているような気がします。
それから「足のあるヘビを見た」とか「大蛇を見た」とか「ものすごい速さで泳ぐヘビに襲われた」とか、似たような話というのは枚挙にいとまがないわけです。
で、もちろん、内心は一笑に付すわけですが、これらも全部、頭っから否定したり、「んなこたぁない」と決めつけちゃいけないんだろうなと思うんですよね。否定できるだけの材料がこちらにはないわけで。私だって、小学校の時の帰り道で近くの川で「カバHippopotamus amphibius 」を見た、って経験を未だ信じてますし。
ただ、こういう話って不思議なことにヘビばかりですよね?
だって「足が6本あるトカゲを見た」とか「公園の池で3mのカメを見た」とかみたいに、他の爬虫類をネタにしたトンデモ話って聞かないですから。
やっぱり、ヘビって私たち人間にとって特別な存在であり、私たちの興味を惹いてやまない生き物なんですね。
【関連記事】