今回は、久しぶりにニュースの解説記事です!って、本来はこういうのを紹介しなくちゃいけないんですけどね。
2008年4月10日にネットで紹介され、結構一般の方々にインパクトを与えたらしい記事
「肺のないカエルが発見された」
を、簡単にご紹介しましょう!
ニュースの概要
まずは記事のごく簡単な概要です。ボルネオ島の川で採集されたカエルが、解剖の結果、実は肺を持たない種類であることがわかった、とシンガポール国立大学のデビッド・ビックフォード氏の研究チームが、生物学情報誌「カレント・バイオロジー」で発表しました。
このカエルは、実は30年前の1978年に記載されているカエルで、学名がBarbourula kalimantanensis という種類で、スズガエル科の一種です。英名はKalimantan Jungle Toad 、あるいはBornean Flat-headed Frog で、日本風に言えば「ボルネオモリガエル」とか「ボルネオヒラアタマガエル」なんて感じでしょうか。
ただし、属名は「バーバーガエル属」ですので、系統的につければ「ボルネオバーバーガエル」とするのが、もっとも適しているでしょう。
このカエルは30年前の記載以来、ほとんど確認ができず、幻のような感じだったらしいのですが、昨年の8月に久しぶりに確認できたそうです。
採集された個体を飼育後、解剖して初めて肺を持っていないことがわかったそうです。
肺を持たないカエルは、これまで知られていなかったため、ニュースになったと言うことです。
ボルネオバーバーガエル
このカエルは、ボルネオの山奥の渓流に生息している4cmほどのカエルで、おそらくほぼ完全な水生であろうと予測されます。残念ながら、この記事に画像を掲載する許可も得ていませんし、リンクの許可も得ていませんので、わかりにくいと思いますが、色は褐色で体は平たく、皮膚はスズガエルの仲間と同様にイボ状突起が多く見られます。
それと、気のせいかもしれませんが、なんかこのカエル、前足に爪があるように見えるんですが...
なお、各種検索エンジンの画像検索で、学名の「Barbourula kalimantanensis」で検索をかけると、画像を見ることができます。
顔つきはかなり個性的で、一見すると角が発達していないコノハガエルの仲間や、あるいはウキガエルのような感じです。つまり非常に扁平な頭部に、大きな目がかなり吻端寄りについています。ちょっと興味深いのは、両目が前方を向いているところです。形態は、生活様式を表しますから、ここから推測するに、浅瀬で水面から目を出して落下してくる昆虫類などを食べているのではないかと、勝手に想像しています。私が。
生息地では、非常に素早く、人影や足音で、素早く水中を泳いで物陰や深いところに逃げていくそうです。
また、山地の渓流ですから水温も非常に低い場所だそうです。
肺のない両生類
さて、両爬ファンの皆様なら、このニュースはさして驚かなかった方も多いのではないでしょうか。つまり
「『肺のない両生類』って、珍しいか?」
ってことです。
実は、両生類には、すでに「肺のない」種類が多く知られているからです。
両生類の中には、カエル以外にもう一つの大きなグループ、サンショウウオやイモリ、あるいはウーパールーパーの仲間である「有尾類」というのがあります。
この有尾類の中に「プレソドン科」というグループがあるのですが、これの別名が「ムハイサラマンダー科」なのです。もうおわかりのように、「無肺サラマンダー」つまり肺がない両生類です。
「へえ、そいつは変わっているね」とお思いかもしれませんが、実はムハイサラマンダーの仲間は全世界の有尾類の2/3程度を占めています。つまり、有尾類の半数以上は「肺がない」種類と言うことになります。
また両生類には無足目(アシナシイモリの仲間)というグループがあるのですが、こちらにも「肺がない種類」が知られています。
さらに、我が日本にも「肺のない両生類」は生息しています。
何も特殊な種類ではありません。国内でもっとも広い分布域を誇る「ハコネサンショウウオ」が、「日本の肺のない両生類」です。
ハコネサンショウウオに関しての詳しい説明はリンク先をご覧いただければわかりますが、本州と四国の山地渓流に生息するサンショウウオです。かつては、山間部で貴重なタンパク源として食用になっていたこともあるようです。