Q.マムシが口から子ヘビを出産するって聞いたんですが本当ですか?
マムシの出産は口から?
某図鑑に結構詳しく書いてあるので、ご存じの方も多いと思うんですが、この手の話はもっと詳しくて、ある意味「なるほどねー」と思わせるんです。つまり一笑に付せない、と。
俗説に曰く
「マムシは口から子どもを産む。だから出産間際の晩夏になると妊娠しているメスは、出産時に生まれてくる子を牙で傷つけないようにするために、牙を落とさなければならない。したがって晩夏のマムシはよく咬むのである」と。
どうです?おもしろいでしょう。
こういう話を信じる方から質問が来るわけです。
で、私の回答。
A.迷信です。しかし盛夏から晩夏にかけて咬まれる事故が多い
もちろんマムシは、他のヘビや爬虫類と同様に「総排泄孔」から出産します。爬虫類は、トカゲやカメだとわかりやすいのですが尻尾の付け根の部分に「総排泄孔」と呼ばれる器官があり、そこから排泄物の排出と卵を産みます。ま、要するにお尻の穴です。
で、マムシももちろん出産時にはそれを利用するのですが、他の日本のヘビと異なるのは、マムシが「胎生」であることです。つまりマムシは卵を産むのではなく、小さな子マムシを産むわけです。
生まれたばかりのマムシの幼蛇 |
で、いろいろな方に伺ったら、私はもっていないんですが「小学館『自然観察シリーズ22 日本の両生類・爬虫類』の123ページ」に出ているという情報をいただきました。たぶん、私の見た写真と同じ写真でしょう。
情報をいただきまして、ありがとうございました。この場をお借りして感謝申し上げます。
閑話休題。
他にもマムシは他のヘビと異なる面をたくさん持っています。例えば交尾をするのが、普通のヘビは春なんですが、マムシは夏の終わりに交尾をします。しかし、出産は1年後の翌年の晩夏から秋にかけて行われます。
マムシは、春から夏にかけてはほぼ夜行性で、昼間には日光浴に出てくるくらいで索餌などは夜に行われます。しかし夏になると、妊娠中のメスが胎児の成長のために、盛んに日光浴を行ってカルシウムの合成を行ったり、昼夜の区別なく餌を探して栄養を蓄えて出産に備えます。そのために日中でも人間がマムシと出会う回数が多くなり、自然と咬傷被害の事例が増えてしまうのです。
ですから、先の「晩夏のマムシはよく咬む」というのは、理由も違いますし、積極的に咬むわけでもないのですが、マムシの生態を反映していると言えるでしょう。
ま、でも私みたいな国産種好きから見れば、マムシも愛すべき対象ですので、こんな俗説もまかり通って畏れられた方が彼らのためにもなるんでしょうね。
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