Q.尻尾が二股のトカゲは珍しいの?
尻尾が二股のトカゲは珍しいの?
つまり
「この前、尾が二股に枝分かれしているトカゲを見つけました。これは新種ですか?」
とか
「何か、化学薬品とか環境汚染が原因なんでしょうか?」
という内容が多いようです。
下の写真のように尾が2本あるトカゲというのが、ときどき見つかります。こういうのは「二叉尾」と言われることもあります。
もちろん見慣れない方たちは仰天するわけです。
撮影:鎌倉 章 |
で...私の回答。
A.正常ではないが、とりたてて珍しがるほどのものではありません
まず原因から。日本で言うならニホントカゲのようなスキンクの仲間、ニホンカナヘビのようなカナヘビの仲間、ニホンヤモリのようなヤモリの仲間などは敵から襲われたときに身を守るために尾を「自切(自分で切ってしまう)」を行うことはよく知られています。「トカゲの尻尾切り」というやつです。
尻尾は、その切り口から新しく生えて「再生」することもよく知られています。
ところが完全に尻尾が切れずにくっついたままになっていたり、あるいは何かの拍子に尻尾が傷ついてしまったりすると、その傷口から新しい尻尾が再生してしまうことがあります。下の図はオガサワラヤモリの尻尾ですが、途中に小さな突起状のモノがくっついている(生えている?)のがわかると思います。
オガサワラヤモリ |
つまり、このように尻尾の傷口から新しい尻尾が再生してしまったのが「二叉尾」です。
ですから「先天的な異常」ではありませんし、「薬品等による体内の異常」や「病気」でもありません。極端な言い方をすると三叉尾でも四叉尾でも、人間の手で作ろうとすれば簡単に作れてしまいます。
したがって、とりたてて珍重したり、騒ぎ立てる現象ではないと思います。
もちろん価値観というのは個人によって異なるのですが。
こうして考えると二叉尾は、その個体が何らかの重大なトラブルに巻き込まれて命からがら逃げて生き延びている、あるいはそういう危機を乗り越えた証でもあるわけです。ですから野外で見つけても、彼らの幸運と勇気を讃えてそっとしておくべきであるのではないかと思います。
私もこれまでにフィールドで
- ニホントカゲ
- ニホンカナヘビ
- ニホンヤモリ
- アオカナヘビ
- オガサワラヤモリ
- ヤクヤモリ
の二叉尾を見たことがあります。ニホンカナヘビでは三叉尾も見たことがあります。
ヤモリの仲間、とりわけオガサワラヤモリは、尻尾が太く尾の縁に大型の鋸歯状鱗が並んでいて切れにくくになっているからでしょうか二叉尾の個体の発見率が高いように思えます。
これこそ文字通り二叉尾 |
私は、この二叉尾を見るたびに、彼らの生命力の強さというか生に対する執着心を感じます。素晴らしい自然の力の証拠とも言えるかもしれませんね。
でも、よく考えてみたら「四つ葉のクローバー」もでき方は、この二叉尾と同様に「外力」によって成長点が刺激されてできる、ということらしいのでちょっと似ていますね。
そうやって考えると四つ葉のクローバーみたいに「幸せのシンボル」として珍重されても良いかも...
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