爬虫類は痛風になる?尿酸からなる炎症反応は彼らを苦しめる
さて、みなさまの所の両生爬虫類たちはつつがなくこの冬を過ごしていますか?
特にこの時期は低温や乾燥による体調不良が不安ですよね。やっぱり、健康第一ですからね。動物達も飼育者の方々も。風邪などは爬虫類も人間もひいてしまう病気ですが、実は他にも「爬虫類」も「人間」も同じようになってしまう病気があります。その中でも有名なのが「痛風」です。今回は「爬虫類の痛風」についてClose Up!してみました。
<目次>
爬虫類にとって「痛風」ってどんな病気?
「痛風」は特に成人男性に見られますが、足の親指の付け根が突然耐えがたいほど痛み出して歩くこともままならなくなると言う病気です。これは簡単に言うと体内に存在する「尿酸」という物質が原因となって関節など炎症反応が起こり激しい痛みを生じさせてしまう、という病気です。痛風の原因は、尿酸の「過剰な産生」と「排泄の低下」であると言われています。
痛風の原因となる「尿酸」って何?
そもそも「尿酸」とは何でしょう?その前に簡単に生化学のお勉強を。
生物の体を作っている主成分は「タンパク質」です。タンパク質には多くの種類がありますが、必ず成分元素として「窒素N」が含まれています。生物の体の中では常に「古いものは捨てて、新しいものと換える(新陳代謝)」が行われています。体の中のタンパク質も新陳代謝によって古いものは捨てています。このとき窒素はアンモニアの形に変化してしまいます。ところが動物の種類によってこの窒素の排泄の仕方が異なります。魚類や両生類は「アンモニア」のまま。哺乳類はさらに「尿素」の形に換えて。そして鳥と爬虫類が「尿酸」の形で排泄するのです。
爬虫類や鳥を飼育されている方は見たことがあると思いますが、彼らの糞の中の「白い」部分。あれが「尿酸」なのです。
ところでアンモニアや尿素は水に非常に良く溶けます。ですから魚や哺乳類は「尿」の中にアンモニアや尿素を溶かして排泄できるのですが、尿酸は水にあまり溶けません。実は哺乳類も「尿酸」を少しだけ体の中で作っています。いつもは水に溶かすことができるほどの微量なので正常に排出されるのですが、あまりに多くの尿酸が作られたり、排出機能に異常があったりすると溶けきれなくなる尿酸が析出して「痛風」になったり、あるいはカルシウムと結合して「結石」を作ったりするわけです。
「痛風」は「ぜいたく病」?
人間の「痛風」の場合は「ぜいたく病」などと揶揄されたりすることがあります。これは尿酸のもとになる物質がタンパク質であることから「高タンパク」の食品を摂り続けると尿酸が多くできてしまう、ということを極端に表現したものです。実際にエビやウニ、白子などは尿酸の直接の原料となる「プリン体」という物質が多いので、あながち無視できない話ではありますが。
爬虫類の「痛風」
で、爬虫類ですが、彼らは窒素の排出を尿酸の形で行うわけですから「痛風」になる可能性を持っているわけです。また「痛風」は「腎機能障害」を併発している場合も多いため死に至ることもあるので注意が必要です。現実に私が獣医師や友人らから聞いた話、およびネット上の報告でも「痛風」少なくとも「高尿酸血症」と思われる例がありました。痛風(?)のヤマカガシ
爬虫類の場合も考えられる原因は「高タンパクの餌の摂り過ぎ」が考えられるようです。ヤマカガシと言うヘビが日本にいます。このヘビは自然ではカエルや魚などを餌としているのですが、結構悪食なので飼育下ではヘビの餌として一般的なピンクマウス(ネズミの仔)も食べてしまいます。以前聞いた話なのですが、このヤマカガシをピンクマウスだけで数年間飼育している方がいて、ある日突然そのヤマカガシが死んでしまったそうです。死因を調べようと解剖してみると、いたるところに痛風の特徴である「結節」が見つかったそうです。つまり、このヤマカガシは「痛風」が原因で死に至ったのでは?と推測されるわけです。あくまでも推測でありピンクマウスの給餌が原因であると決められるわけではありませんが、人間と同じで「腹八分目」くらいがいいのでしょう。
当たり前ですが「水切れ」注意!!
また「尿酸」は水に微量にしか溶けないため、体内の水分が減ってしまえば当然溶けることができる量も減ってしまうため、尿酸も析出しやすくなります。そのため「水分不足」により「痛風」を起こす場合も多いようです。カメレオンの中にはなかなか給水装置に気づかず、実はほとんど水を飲んでいなかった、という失敗があるそうです。そんなときには「痛風」になりやすかったりするから注意が必要ですね。と言うわけで、どうやら爬虫類の「痛風」を防ぐためには
・高タンパクの餌の与えすぎに注意する
・飲み水を切らさない
ことがとりあえずできることのようですね。
ちなみに同じ尿酸排泄動物の鳥でもセキセイインコやニワトリで「痛風」が認められているそうです。
爬虫類は人間と違って体調が悪い、ことを訴えることができません。また、まだまだ爬虫類を診てくれる動物病院も少なく、病気や治療法はわからないことだらけです。ですから、病気などになってしまったら手遅れになってしまうことも多いようです。普段から十分な観察をして健康に留意してあげましょう。
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