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犬種による特性を知ろう……犬と暮らす前に!

実は、自分が一緒に暮らしている犬種の特性や気質というものをよく知らずに飼っている人が意外と多いのです。それゆえに、しつけにてこずったり、犬との生活がうまくかみ合わなかったり。犬を飼いたいと思ったら、まずは考えてみるところから始めましょう。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

犬種によって違う性格や特性

犬種による特性とは

日本犬は元来、飼い主及びその家族には心を許すが、他人にはそっけないところがある

これから犬を迎えてみたいと思っているあなたにお尋ねします。あなたが欲しいと思っている犬種の気質や特性というものを考えてみたことがありますか?

トレーナーさんや訓練士さん方にお話をお聞きしていると、同じような言葉を耳にすることがあります。それは、「自分が一緒に暮らしている犬種の特性や気質というものをよく知らずに飼っている人が意外と多い」ということ。それゆえに、しつけにてこずったり、犬との生活がうまくかみ合わなかったり。一見、同じように感じてしまう犬ですが、実は犬種や同系列のグループによって、結構気質や特性が違うものなのです。
 
<目次>
 

犬種の歴史にヒントがあり

一口に「犬種」と言っても、その数は公認・未公認犬種を合わせて数百に上り、長い歴史の中で、すでにその姿を消してしまった犬種もいれば、近年新しく登場した犬種もいます。種類の多さだけをとっても、犬が動物の中で特殊なスタンスに位置していることがわかるというものです。多くの犬種が、人間の手によって作り上げられたと言っていいのですから。

ということは、人間にとって有用、かつ都合のいい部分が強調されて繁殖がなされたということ。愛玩目的であれば、小型で扱いやすく、性格も穏やかであるように。また、猟師が打ち落とした鳥を回収させたいのであれば、スタミナもありながら、鳥を襲うことなく傷つけずに持ち帰れるだけのソフトマウスの犬を望んだように。獲物を仕留めることに重点を置くなら、相手と果敢に戦うだけの気概と積極性を望んだことでしょう。

どんな犬種にも、はっきりとした記録が残っていないとしても、それぞれの歴史があります。その犬種が、何の目的で作り出されたのか、どんな仕事をしていたのかを知ることで、ある程度の基本的な気質や特性を知ることができます。
 

犬の遺伝子に組み込まれた行動

牧羊犬の代表格の一つ、シェットランド・シープドッグ
シェルティー(通称)は知性が高く、大変繊細な神経の持ち主。
ここで、想像してみて下さい。犬が自由に行動していた昔々のことを。空腹を満たすには、自分で獲物を捕っていたはずです。お腹がすいた犬は、まず獲物を“探す”でしょう。懸命に辺りの匂いを嗅いだりして獲物らしきものを見つけました。相手をじっと“見ます”。そして、気づかれないよう、獲物に“忍び寄り”ます。気づかれてしまいました。犬は獲物を“追い駆け”ます。やがて追いついて、“咬みつき”、時に振り回したりなどしながら、最終的に相手を“仕留め(殺す)”ます。やっと、その犬の空腹は満たされました。

こうした犬の遺伝子に組み込まれた一連の捕食に至る行動は、専門的には「モーターパターン」と呼ばれていますが、ある犬種が作り出される段階において、人間が困ると思う部分はなるべく押さえ込まれ、欲しいと思う部分は強調されて繁殖されてきたという側面をモーターパターンからもうかがい知ることができます。
 

その犬種の“得意技”が、即ち特性を指し示す

では、気質及びその仕事という点で、犬を「獣猟犬」「鳥猟犬」「牧羊(畜)犬」「愛玩犬」というグループに分けてみます。

このうち、例えば、獣猟犬のグループに属し、かつ獲物の息の根を止めることをよしとされてきた犬種は、根源的にはモーターパターンの全てに渡る要素を平均的に持っていると考えることができます。ここで、誤解のないように一言。それが即ち、気質が荒いなどというようなことを意味しているのでは決してありません。むしろ、獣猟犬として活躍するには、人間とそれなりのコンタクトも取れなければならず、飼い主との間に深い絆が築けるだけの安定した気質が必要とされたはずです。ただ、このようなタイプの犬種と暮らす際には、歴史的にそういったバックグランドがあるということだけは、頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。

牧羊犬の代表格とされるボーダー・コリーやシェットランド・シープドッグなどは、羊を襲うことなく、駆り集め、誘導する能力はピカ一です。羊飼いとしては羊を傷つけられるのは困りものですから、このような牧羊犬の場合は、モーターパターンで言うところの最後の部分が薄れていると解釈することができます。
 

イメージどおり? それともイメージとは裏腹?

ミニチュア・シュナウザーはちょっと頑固なところがあり
それぞれに違う気質や特性を持つからこそ、犬という動物は楽しい。
しかし、前記のようなグループに分けてみても、それは大雑把なもの。個々の犬種には、またそれぞれに違った味わいがあるものです。

例えば、小型愛玩犬としてくくられているパピヨン。この犬種と暮らす人達からよく聞かれるのが、「こんなに活発な犬種だとは思ってもみなかった」と、その運動性能のよさを表すような言葉。実際、アジリティーなどスポーツドッグとして活躍する子達もいます。祖先はスペインのスパニエルの一種と伝えられていますが、スパニエルと言えば鳥を対象とした猟犬達。その血を引いているとすれば、活発であるのも頷けます。

また、ミニチュア・シュナウザーの祖先を探っていくと、スタンダード・シュナウザーやミニチュア・ピンシャーの名が出てきます。ピンシャーとはドイツ語で「テリア」を意味するということは、ミニシュナの犬種名自体には“テリア”という言葉が入っていなくとも、テリア気質を持つ犬種であることが見えてきます。

俗に「テリア気質」という言葉がありますが、これはテリア種全般に共通する、勇敢で活発、やや闘争的で頑固な気質を表したものです。ですから、テリアの中で最も小さいヨークシャー・テリアも、その可愛らしい見かけとは裏腹に、立派にその気質を持っているということになります。

大型犬ではアフガンやボルゾイなど、さぞ運動が大変かと思いきや、意外と家の中では大人しく、ゆったりと過ごすことができたりと、一般のイメージとは違う気質・特性を持った犬達が多々います。だからこそ、犬は楽しいと思いませんか?
 

犬種の特性を知ることが始めの一歩

犬は生きているものです。犬種としての特性の他に、それぞれの子にその子なりの性格というものがあります。私達一人一人が、同じ人種であっても性格が違うように。しかし、犬種ごとの特性や気質を知るということは、犬選びの重要なポイントになります。

隣りの家で飼われている犬種が自分の家にも合うとは限りません。これから犬を飼いたいと思っているのであれば、ビジュアル的な可愛さや美しさの好みのみでなく、是非、自分が一緒に暮らしてみたいと思う犬種の気質や特性というものを考慮に入れてみて下さい。

体力がない人が活発過ぎる犬種を飼うのは少々辛いでしょう。集合住宅にお住まいなら、吠えやすい犬種はより気を使うというものです。自分の性格や体力、生活環境など諸々の要素を考えた上で、自分に合う犬種を選ぶということが、しいては犬と飼い主互いの幸せにも繋がるのではないでしょうか。

現在では犬に関する情報もたくさんあります。また、先輩飼い主さん達もたくさんいますので、経験談などを聞いてみるのもいいですね。犬が欲しいと思ったら、その気持ちをちょっとだけ押さえて、自分に合う犬かどうかを調べ、まずは考えてみるところから始めましょう。


*ここで言う犬種ごとの気質や性格といったものは、ごく平均的なものです。同じ日本人であってもラテン系っぽい性格の人がいるように、同じ犬種にあっても個々の性格はそれぞれです。

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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