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秋田犬の特徴とは?性格や大きさ、飼育法や歴史をわかりやすく解説

日本の風土が生んだ独特の魅力をもつ日本犬。中でも秋田犬は唯一の大型で、凛とした風貌は海外の人も虜にします。そんな秋田犬の歴史や性格、寿命、大きさや毛色、子犬を選ぶポイントや飼育する際の注意点など、基本情報を解説。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

秋田犬の特徴とは

秋田犬の特徴を解説

秋田犬の特徴を解説


どことなく可愛らしい顔つきながら、凛々しくもあり、独特の魅力をもつ秋田犬。ガイドにとっても好きな犬種のひとつです。歴史を見ると、他の日本犬とは異にする部分も。そんな秋田犬とは、どんな犬なのでしょうか。
 
<秋田犬に関する目次>
 

秋田犬の歴史

秋田犬(赤毛)

往時は「大館犬」とも呼ばれていた秋田犬。

秋田犬のルーツは、秋田の山間部で熊猟に使われていた秋田マタギ1犬にあると言われていますが、そもそもこのマタギ犬は大型ではないものの、他の中型日本犬に比べて大柄で、力強い印象のある犬だったようです。

徳川時代のこと、秋田の佐竹藩では藩主の嗜好と、藩士たちの士気を高めるためもあったのか、闘犬が盛んに行われていたといいます。それに使われていたのがこのマタギ犬たちでした。しかし、闘犬に興じ過ぎ、藩主が闘犬を禁止してもなおその熱は治まらず、明治・大正時代になってからも闘犬が続けられたようです。その間にも度々闘犬禁止令が出されたにもかかわらず、豪農や富豪も犬同士の闘いに一喜一憂したとか。

そうなると、より大きく強い犬を求めたくなります。そのために樺太犬と交雑させたという話もありますし、こと大正時代には土佐闘犬と闘わせたところ、不利なルールだったこともあり、秋田マタギ犬は勝てず、その後は強さを求めて土佐闘犬の血も導入されたと伝えられています。

明治・大正時代、「大館犬」とも呼ばれていたこの犬たちには、体高60cmくらいで巻き尾の日本犬タイプや、体高が67cm~91cmほどあり、耳が折れ、顔に皺があるタイプなど、そして毛色もいろいろあったようです。秋田犬が日本犬の中で唯一大型なのは、ひとつにはこうしてより大きな犬が求められ、他犬種との交雑が図られたことによるのでしょう。

残念なことに日本犬としての姿が変貌していった時代にあり、土佐闘犬化した犬は「新秋田」と呼ばれるようになりました。しかし、同時に大正末期ともなると、洋犬に押され、秋田犬のみならず他の日本犬も雑化が進み、衰退の一路を歩んでいた時代でもあります。

それを憂え、本来の日本犬の素晴らしさを保護し、守りたいという人たちが現れ、保護運動が起こり、昭和初期には日本犬に対する天然記念物指定に結び付きます。当時の日本犬7犬種2のうち、秋田犬は昭和6年(1931年)7月31日をもって、最初にその指定を受けました。

秋田犬群像

秋田県大館駅前にある「秋田犬群像」。この手前には「ハチ公」の銅像も。

秋田犬再興の道は明るいと思われたものの、やがては第二次世界大戦が勃発。戦局が悪化してくると、兵士の防寒衣料に使用する毛皮が不足したため、そして食糧難対策としても犬や猫を供出献納するようにという通達が出されるようになります。

犬猫供出に関するある資料(#1)によると、「この犬をとられたら、生きている気がしない」「見逃して欲しい」と哀願する人たちもいたということですが、飼い主の目の前で犬猫を殺したという当時の証言を目にすると、身の毛が総毛立ってきます。人にとっても動物にとっても、もっとも辛い時代だったことでしょう……。

秋田犬の歴史について、軍用犬のジャーマン・シェパードは供出を免除されたため、それを免れる目的で秋田犬とG・シェパードを交配し、より雑化が進んだというようなことが書かれてあるものが散見されるのですが、ガイドとしては疑問がわくのです。

と言うのは、前出の資料によると、「全国的に供出が免除されたのは軍用犬、警察犬、登録した猟犬、天然記念物指定を受けた犬」とあり、輓曵犬(北海道)も含まれていた自治体もあったといいます(#1)。この時点で秋田犬はとうに天然記念物指定を受けていたので、わざわざG・シェパードと交配する必要があったのか? それとも指定を個別に受けた犬がいて、その犬たちだけは免除されたのか? そもそも認定されなければ軍用犬にもなれないでしょうし。

それはともかく、戦後には数も激減した秋田犬は、先人たちの想いと努力で再度の最高が図られ、現在の日本が誇る犬としての地位を守り続けるに至っています。
 

もうひとつのアキタ犬

実は秋田犬には、現在では別犬種扱いの「アメリカン・アキタ」という種類もあります。終戦後、日本にやって来た進駐軍の兵士たちの間で秋田犬が注目されるようになり、その兵士たちが本国に引き上げる際、一緒に海を渡った犬たちがいました。

その後、日本の秋田犬の情報がうまく伝わらぬままに繁殖が続けられていく中で、結果的に当時の姿を色濃く残すアメリカン・アキタという新犬種が登場することになったのです。当時の秋田犬はブラックマスクや斑模様をもつ犬が多くいましたが、アメリカン・アキタにはその面影を強く感じることができます。1972年からはアメリカン・ケネル・クラブにおいて登録ができるようになりました。

私たち日本人からすると別犬種という感じですが、海外では「秋田/Akita」というと両者を意味したり、逆にアメリカン・アキタを指す場合もあったり、少々混乱するところです。
 

秋田犬のサイズ(体高・体重)と寿命

体高:オス64cm~70cm メス58cm~64cm
体重:オス38kg~45kg程度 メス32kg~38kg程度
平均寿命:10~13歳程度

実際には体重が50kg近くになる犬まで幅があるようです。秋田犬から派生したアメリカン・アキタは、オスで体高が66cm~71cm、メスは60cm~66cmとなっており、日本の秋田犬に比べると一回り大柄になっています。
 

秋田犬の毛色

赤毛と虎毛の秋田犬

どの毛色であっても日本犬らしい渋みを感じる。

以前は黒毛、胡麻毛、斑毛など毛色もバラエティーがありましたが、現在では赤毛や虎毛、白毛が主流になっています。

虎毛は地色に虎のような縞模様が出るもので、色の出具合によって赤虎、黒虎といった呼び方があります。胡麻毛は地色に黒い差毛があるものをいいますが、往時の秋田犬では銀胡麻という毛色が注目された時代もあったようです。白毛以外では顎や首の下側、胸、腹部、尾の裏側などが裏白と言われる淡い毛色になります。
 

秋田犬の体の特徴

耳は顔に対してやや小さめな三角形の立ち耳であり、被毛は表毛が粗く真っ直ぐで、柔らかい下毛が密生しています。

他の日本犬では巻かない尾も見られますが、秋田犬の場合は巻尾が求められます。犬の後ろから見て左側に巻いているものは「左巻」、右側に巻いているものは「右巻」と呼ぶ他、渦巻き状に固く巻くものを「二重巻」、背骨に沿って真上に固く巻くものは「太鼓巻」などという呼び方があります。
 

秋田犬の性格・気質

秋田犬 性格 気質

普段は落ち着いている秋田犬

日本犬の“美”を語る時、ビジュアル的なものより、むしろ内面から湧き出るものを美と捉えるところがあります。それがあるからこそ姿形、振る舞いの美にも繋がるということでしょう。その内面とは、気迫があり、何か事が起これば一歩も引かないくらいの気概を見せながら、普段は落ち着いており、まさに武士を連想させます。

日本犬は「一犬一主」と言われます。一度心を許した相手とは深い絆で結ばれるものの、他人に対しては適度な距離を置く、それが愛好家にとってはたまらない魅力のようです。
 

秋田犬の飼い主に向く人

雪の中の秋田犬

ガイドがずっと以前に飼っていた犬は秋田犬のハーフだったが、ある時、特製の犬舎に繋いでおいたところ、生後半年の子犬ながら、平気な顔をしてそれをゴロゴロ引きずりながら庭を歩き回っていた姿を思い出す。そのくらいのパワーはある。

大型であり、本気になれば相当パワーもありますので、自分の体力や年齢を考える必要はあるでしょう。飼育スペースも十分確保できるか。大型である分、食費や獣医療費も高めになるので、自分の経済事情も考慮することをお忘れなく。
 

誰にでも愛想のいい犬を望む人には向かないかもしれません。何かにつけて「一筋」になれる人にはぴったりかもしれませんが。ただ子犬の可愛さに惹かれて飼ってしまうことはお勧めしません。
 

秋田犬の子犬を選ぶ時には

秋田犬の子犬

秋田犬の子犬

可能であれば両親犬、もしくは母犬を見せてもらえると理想的です。子育て中、母犬が落ち着きないようであると、子犬にもそれが影響している可能性があります。また、性格は遺伝しますので、親犬の性格がよさそうであれば、子犬にもそれを期待できるでしょう。

手をたたいたり、オモチャを見せたりした時、隅っこに隠れて寄って来ない子犬はシャイ気味で、扱うには多少気配りが必要になるかもしれません。一般的には、すぐに寄って来る子犬は明るく積極的な性格で扱いやすい傾向にあると言われる一方、我先にと他の子犬を押しのけても寄って来る子犬は我が強い面をもちあわせている場合も。また、抱っこした時に強く嫌がる、手を噛んでくる子犬はしつけに苦労する可能性もあります。

もちろん好みやピンとくる子犬というのはいますが、もしガイドが子犬を選ぶとしたら、2番手くらいといったところでしょうか。

何より、性格の安定や問題行動の予防にもつながる社会化に十分配慮されて育った子犬を選ぶのが一番でしょう。

その他、目ヤニが付いていないか、お尻が汚れていないか、歯茎はピンクか、皮膚に異常はないか、痩せ過ぎていないか、背中は真っ直ぐで立ち方や歩き方に異常はないかなど、健康度もチェックを。抱っこした時に子犬にしては重みを感じるくらいのほうがよいと言われています。

さらに、より秋田犬らしい犬、展覧会への出陳も望むのであれば、巻尾であるか、秋田犬らしい毛色か、被毛の状態(著しい短毛や長毛は失格)、鼻鏡は黒か(白毛は赤鼻でも許容)、歯並びはどうかなどもチェックするといいでしょう。
 

秋田犬の飼育ポイント

秋田犬の飼育のポイント

秋田犬の飼育のポイント

かつては闘犬として使われていた時代があったということは頭の片隅に置いておくべきでしょう。ガイドの知人の秋田犬もたいへん柔和ではありますが、気迫とケンカの強さとを勘違いして繁殖された時代があったことは事実で、何かのきっかけでそうした資質が表に出ないとも限ませんので。

そうした背景や、大型である点からも、基本的なしつけは身につけさせたいものです。時に頑固な面を見せることもあり、しつけには根気がいるかもしれませんが、人間側の都合をただ押し付けるのではなく、彼らを尊重し、時にはできるまで待ってあげることも必要です。

お手入れとしては、秋田犬は下毛(綿毛)が豊富なので抜け毛の量も多めです。特に換毛期にはこまめにブラッシングを。昨今では日本犬でもアレルギーが目立つようになっているので、皮膚のチェックもお忘れなく。

また、運動不足が続くとストレスがたまり、破壊行動や無駄吠えなど問題へと発展することがあります。大型犬だけに十分な運動はやはり必要です。
 

秋田犬で気をつけたい病気

アレルギー性皮膚炎
食事や薬品、化学物質、植物、ノミなどの寄生虫、細菌などが要因となって痒みが生じる。アレルゲンを遠ざける、皮膚のケア、薬剤の投与などの対処法があるが、難治性とされる。

甲状腺機能低下症
甲状腺機能の異常により、甲状腺ホルモンが不足することから、元気がない、痒みのない脱毛(特に尻尾)、体重増加などの症状が見られる。
 

ホヒト-小柳-原田病様疾患(ブドウ膜皮膚症候群)
自己免疫疾患と考えられており、ブドウ膜炎や緑内障、白内障といった眼疾患と合わせて、目の周りや鼻、唇、外陰部、パッドなどの色素が薄くなる皮膚症状も見られる。
 

若年性多発性関節炎
複数の関節に関節炎が起こり、痛み、食欲低下、元気がない、発熱などの症状が出る。免疫異常によるものと考えられているが、はっきりした原因はわかっていない。

など
 

ハチ公やマサル……秋田犬にまつわる話

渋谷駅前のハチ公の像

東京の渋谷駅前にあるハチ公の像。ガイドがやっているあるSNSのフォロワーさんの約3分の1は海外の秋田犬ファン。国内より海外のほうが人気が高いのかもしれない。:(c)dkey/a.collectionRF/amanaimages

「ハチ公」が広く世に知られるようになったのは、昭和7年(1932年)9月に斉藤弘氏による朝日新聞への投稿が発端となりましたが、その話は海外でも知られるようになりました。1937年、ヘレン・ケラー女史が来日した折には、「ハチ公」を知っていたことから秋田犬にたいへん興味をもたれ、後に2頭の犬(神風号・剣山号)が日本から贈られたそうです。

近年では2012年に東日本大震災の支援に対する感謝を込めて、秋田県からロシアのプーチン大統領にメスの子犬(大統領自身が“ゆめ”と命名)が贈られていますし、平昌冬季五輪のフィギュアスケート金メダリストであるロシアのアリーナ・ザギトワ選手にも(公社)秋田犬保存会よりメスの子犬(マサル)が贈られています。

海外の人も魅了する秋田犬ですが、国内では茨城県において、県の条例として「特定犬」が指定されており、檻の中で飼育することが義務付けられています。この特定犬とは、土佐犬、ジャーマン・シェパード、紀州犬、ドーベルマン、グレート・デーン、セント・バーナード、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、そして秋田犬。および、体高60cm体長70cm以上の犬、人を2回以上咬んだなど県知事が指定した犬となっています。
 

これについて担当部署に問い合わせたところ、部屋の中で飼育するというような逃走対策ができている“囲われた中”で飼育するなら大丈夫という回答でした。
 

最後にもうひとつ。秋田犬大館市には、一犬種としては珍しい、秋田犬の博物館があります。

秋田犬会館:https://visitakita.com/sightseeing/history-culture/201/

いずれにしても、たいへん魅力的な日本犬ですが、初心者が安易に飼うことはできない犬種ということですね。


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注:犬は生き物です。性格、気質、体高、体重など、人同様に個体差があることをご承知おきください。
 

*1マタギ=狩猟を生業とする人

*2=秋田犬、甲斐犬、紀州犬、越の犬、土佐犬(現在の四国犬)、柴犬、北海道犬

 

参考資料:

(#1)アジア太平洋戦争下 犬、猫の毛皮供出献納運動の経緯と実態 - 史実と科学鑑定、論考3/西田秀子/札幌市公文書館年報(事業年報3号別冊)/札幌市

(#2)愛犬の友<犬種別>シリーズ 秋田犬/愛犬の友編/誠文堂新光社

(#3)日本犬大観A Manual of The Japanese Dog復刻版/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社

(#4)日本犬百科/渡辺肇/誠文堂新光社

(#5)日本犬名犬写真集/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社

(#6)茨城県動物の愛護及び管理に関する条例施行規則、特定犬について(茨城県ホームページ)                               など


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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