先日、「愛犬のウンチの中に白い虫みたいのがごにょごにょいるんですが、あれは何ですか?」という質問を受けました。一昔前に比べると犬の生活も随分と清潔になったものだという印象を受けますが、それゆえに忘れがちなのが寄生虫。寄生虫は今もあなたの愛犬にとりつくチャンスを狙っています。


体の外部に寄生するもの、体の内部に寄生するもの

子犬

子犬の頃の駆虫はしっかりと

一口に寄生虫と言っても、犬の体の外部に寄生するタイプ、犬の体の内部に寄生するタイプとがあります。前者を外部寄生虫と言い、後者を内部寄生虫と言います。

外部寄生虫は被毛や皮膚にすみつき、血液を吸ったりして生きていますが、内部寄生虫は消化管や心臓など体の内部にすみつきます。

外部寄生虫は、いわゆるノミやダニの類い。内部寄生虫は虫やその痕跡がウンチに出てきたり、肛門周りに見られたりしてぎょっとすることもありますが、見た目にはよくわからないこともあります。

ここでは、内部寄生虫について取り上げることにします。


内部寄生虫の種類と原因および症状

犬のお尻

寄生虫に感染していても、見た目にはよくわからないこともある

代表的な内部寄生虫は以下のとおりです。中には人にうつるものもありますので気をつけましょう。

回虫症
【原因】
虫卵が腸内で子虫になった後に体内移行しながらさらに成長し、最終的に腸内に寄生するものと(犬回虫)と、体内移行はせずに腸内で成長し、そのまま寄生するものとがある(犬小回虫)。経口感染の他、犬回虫では母犬から子犬へ胎盤感染をし、乳汁を通して感染することもある。体内移行をするため、肝臓や肺などの臓器の働きに影響を及ぼす。子犬での感染が多く、生後半年齢以降の犬ではあまり見られない。犬回虫の成虫の大きさはオスで4cm~10cm、メスで5cm~18cm程度。いっぽう、犬小回虫は胎盤感染を起こさないので幼犬での健康被害はあまりなく、若犬および成犬での感染が見られる。

【症状】
下痢、嘔吐、腹部膨満、腹痛、貧血などの他、虫が多数寄生していると腸閉塞や痙攣、麻痺などの神経症状が出ることもある。

【治療と予防】
動物病院での検便で虫卵を確認の後、体重に合った駆虫薬を与える。回虫卵に汚染された便や土壌を口にしないように。犬は匂いを嗅いでいて鼻の頭についたものを舌でペロリと舐めることもあるので気をつけたい。ちなみに、犬回虫・犬小回虫ともに排便直後には感染力はなく、5日~20日ほどで感染力が出てくるので、放置されたウンチには注意を。

また、回虫症は人にもうつることがあり、人体に入ると幼虫のまま体内をあちこち移動してあるく(幼虫移行症)。その結果、発熱、喘息のような発作、肝臓肥大などの症状が見られるようになる。眼球に入ってしまうと場合によっては失明の危険性も。特に3歳~5歳程度の子供が感染しやすいとされるので、犬と触れ合った後には手を洗うなど子供への衛生指導にも心がけたい。

鉤虫症(犬十二指腸虫症)
【原因】
感染経路としては皮膚から進入する経皮感染、経口感染、胎盤感染、乳汁からの感染がある。虫卵は便とともに排泄されて感染子虫へと成長。

【症状】
鉤(かぎ)のような小さな歯で腸内粘膜に食い込み、血液を吸うことから貧血の他(重症ではチアノーゼ)、下痢(血便、タール状の便)、食欲不振、元気消失、胃腸障害などの症状が見られ、重傷の場合は死に至ることもある。

【治療と予防】
検便により虫卵を確認の後、駆虫薬を与える。貧血が重度の場合は輸血が必要なことも。症状が重くなる寄生虫症なだけに、生活環境を清潔に保つように気配りをしたい。

鞭虫症
【原因】
体の半分はやや太くなっており、残りの半分は細くなっていて、鞭のような形をした寄生虫。経口感染することにより、盲腸や結腸に寄生する。

【症状】
食欲不振、貧血、水様性の下痢、血便、脱水症状などが見られる。

【治療と予防】
検便によって虫卵を確認の後、駆虫薬を与える。鞭虫の卵は高温と乾燥に弱いものの、抵抗力が強く、土の中で5年以上生存することも可能なので、感染した場合、または感染が疑われる場合には汚染部分の土を高温で焼いて消毒したり、土そのものを入れ替えるなどの対処が必要となる。

条虫症(瓜実条虫症)
【原因】
瓜のような形をした体節が100個以上も連なり、体長が50cmを超える平たい紐状の寄生虫で、小腸に寄生する。虫卵が入った1cm程度の体節が感染動物の便とともに排泄され、それをイヌノミやネコノミ、ヒトノミ、イヌハジラミなどのノミ類の幼虫が食べると、条虫はノミの体内で感染力のある幼虫へと成長。こうしたノミにたかられ、犬が体を痒がっている時などに誤って噛みつぶしたりすることによって経口的に感染する。

【症状】
症状らしいものを示すことはあまりないが、多数寄生した場合には下痢や食欲不振、体重減少などの症状が見られることがある。虫卵を含んだ体節が排泄されるとしばらく活発に活動することから、犬はそれが気になってお尻を地面にこすりつけるような動作をすることもある他、乾燥した米粒のような体節が肛門周囲に付着していることもある。

【治療と予防】
動物病院で検便や肛門周囲に付着した体節によって条虫を確認の後、駆虫薬を与える。何より、ノミの予防が第一。ノミを発見した時には潰さないようにする。条虫の幼虫のみならず、ノミ自身の卵を放出させてしまうことにもなるので、ガムテープに貼りつけるなどの処置を。

コクシジウム症
【原因】
コクシジウムという原虫が腸内に寄生。オーシストと呼ばれるコクシジウムの卵のようなものを経口的に摂取することで感染する。

【症状】
特に子犬での発症が多く、下痢や血便、粘液便が見られ、重症になると脱水、貧血、衰弱などの症状も出て、場合によっては死に至ることもある。細菌やウィルスの二次感染を起こしやすい。治療の結果、便が正常になってもオーシストは数週間~数ヶ月単位にわたって排泄されるので、便の処理はもちろん衛生管理も大事となる。

【治療と予防】
動物病院で検便をし、オーシストを確認した後に駆虫薬を与える。症状が重い場合には、点滴や輸血が必要になることも。

ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)
【原因】
ジアルジアという原虫による腸内への寄生。ジアルジアには膜に包まれたシストと呼ばれる形態と、栄養体であるトロフォゾイトと呼ばれる形態とがあるが、このシストを便や水、食品などを通して経口的に感染する。犬のみならず、猫など多くの動物で発症し、「人と動物との共通感染症」の1つでもある。

【症状】
水様性および粘液性の下痢、脂肪便、食欲不振、体重減少などの症状が見られるが、無症状の場合もある。細菌などの二次感染や他の寄生虫との混合感染を起こすことも。発症するきっかけとしてストレスが関係しているという話もある。

【治療と予防】
動物病院で検便をして確認する必要があるが、なかなか見つけられないこともあり、複数回の検便検査が必要となることもある。確認ができた後には駆虫薬を処方。人でも発症することから、ウンチを処理をした後には手を洗うなど自身の病気予防も忘れずに。

トキソプラズマ症
【原因】
猫科動物が終宿主となる、トキソプラズマという原虫による寄生虫症。これに汚染された猫の便(オーシストを排出)、豚や鶏などの生肉を通して主に経口的に感染する。人にもうつることがあり、特に女性が妊娠初期に初めてこの病気に感染すると流産や胎児の成長に大きく影響するとされる。犬の場合は中間宿主なので、感染したとしてもオーシストは排出しない。

【症状】
成犬でははっきりと症状が出ることは少ないが、幼犬やシニア犬など免疫力が弱いケースでは水様性および出血性の下痢、嘔吐、発熱、食欲不振、元気消失、鼻汁、咳、呼吸困難、眼の異常および失明、痙攣、麻痺などの症状が見られることがある。

【治療と予防】
動物病院での検便や血液検査などによって確定をし、駆虫とともに各症状に対する治療をする。感染動物が排泄した便中のオーシストはすぐには感染力をもたないこと、また、消毒薬などにも抵抗力があり、土の中でも1年以上生存できることからも(しかし、66℃以上の高熱や乾燥には弱い)、便は放置せずにすぐに片づけることが大切。その他、肉類は生で与えず、加熱してから与えるのも予防策となる。

犬糸状虫症(フィラリア症)
【原因】
フィラリアは体長がオスで12cm~18cm、メスで25cm~30cmになる素麺のような形をした虫。中間宿主となるのは蚊で、すでにフィラリアに感染した犬を蚊が吸血した時に血液中のミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)を血液と一緒に吸い込むことにより、ミクロフィラリアは蚊の体内で成長をしながら感染の機会を待つ。次にその蚊が別の犬を吸血した時、傷口からミクロフィラリアが進入。数回の脱皮を繰り返しながら、感染から3ヶ月~4ヶ月後には最終的に心臓の右心系に寄生する。成虫となるにはさらに3ヶ月~4ヶ月が必要で、血液中にミクロフィラリアが現れるようになるまでには感染から5ヶ月~7ヶ月の時間がかかることになる。フィラリアの成虫の寿命は5年~6年、ミクロフィラリアの寿命は2年~2年半とされる。

【症状】
初期には軽い咳が見られ、重症になるにしたがって食欲不振、貧血、痒みや脱毛などの皮膚症状、呼吸困難、腹水および胸水、血色素尿、黄疸、虚脱、失神などの症状が見られるようになる。

【治療と予防】
フィラリアの成虫が寄生している場合には駆虫剤の投与や、手術による摘出などの方法もあるが、寄生している数や犬の年齢、症状などによって難しいことも多い。もっとも一般的な予防策は、蚊が出るシーズン(蚊が出なくなった1ヶ月後まで)に月1回予防薬を投与する方法。これは体内に入ったミクロフィラリアを心臓に達する前に駆除するというもの。すでにフィラリアにかかっている犬に予防薬は投与できないため、投薬を始める前には血液検査を受けてミクロフィラリアがいないことを確認するのが原則となる。予防薬には錠剤やチュアブル、滴下剤などのタイプの他、1年間有効な注射タイプのものもある。また、投薬とは別に蚊取り線香を使用するなどして蚊を近寄らせないようにすることも必要。

バベシア症
【原因】
フタトゲチマダニのようなマダニが中間宿主となり、犬に吸血した時にバベシア原虫(バベシア・ギブソニ)が体内に入り込むことによって赤血球に寄生する。

【症状】
バベシア原虫が赤血球を破壊し続けることから貧血が進行するともに、発熱、黄褐色~暗褐色の尿、軟便または便秘、食欲不振、元気消失、チアノーゼ、黄疸などの症状が見られるようになる。

【治療と予防】
血液検査などで診断をした後、抗原虫剤を投与し、貧血や黄疸などに対してはその対処療法を行う。重度の貧血がある場合には輸血が必要になることもある。再発することもあるので、体力維持や食事療法を続けることも大事となる。以前は関西より南の地域での発生が主だったが、近年では関東や他の地域での発生も見られるようになっている。特に山間部などに出かけた後には、ダニがついていないか被毛や皮膚のチェックをすることも忘れずに。普段からダニ避け効果のある薬剤を使って予防対策もしておきたい。


定期的な検便と衛生管理で予防を

動物病院での診察

定期健診の際には検便も

人は昔に比べて弱くなったとよく言われます。清潔により気を配るようになったのはいいのですが、逆に抵抗力が落ちたというわけです。それは犬でも同じ。あまり清潔にし過ぎるのも問題ありというところでしょう。そうは言っても、こと命にも関わる病気や「人と動物との共通感染症」など防げる病気は防ぎたいものです。

寄生虫の中にはすぐには感染力をもたないものがあります。後で片づけるからいいやで済まさず、愛犬のウンチはなるべくさっさと始末しましょう。ウンチと言えば、散歩風景を見ていると時々シャベルを使って土に埋めている人もいますが、犬が上記の寄生虫に感染していた場合、感染源となる卵やオーシストが長期にわたって土中で生存可能なものもありますから、逆に感染のチャンスを広げているということにもなってしまうということも頭の片隅に入れておいたほうがいいのではないでしょうか。

予防のためには定期的な検便もお勧めします。放置されているウンチの匂いをやたらに嗅がせないというしつけも大事かもしれません。ともかく、予防と衛生管理で寄生虫感染を防ぎたいものですね。


参考資料:
主要症状を基礎にした 犬の臨床/デーリィマン社
一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム「犬の病気」
NIID国立感染症研究所「人畜共通感染症」


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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。