愛犬のワクチンを選ぶ際に考えたいこと

愛犬のワクチン接種について、適切な回数や必要性について悩む飼い主さんも多いですよね。今回は、「犬のワクチンに関するガイドライン」や動物病院の対応などから、オーナーが考えるべきワクチンの選び方について解説します。

<目次>

ワクチンにおけるオーナーさんの選択肢

ワクチン

現状を把握した上で、愛犬にとってもっともよいと思える選択をしたい

愛犬のワクチン、何をどう接種したらいいか迷ってしまうことがありませんか? 実際にどんなワクチンの種類を、どんなタイミングで接種しているのか、数人のオーナーさんにお話を伺ってみました。

Aさん:
狂犬病予防ワクチンと9種の混合ワクチンを年に1回接種しています。アレルギー反応が出るなら話は別ですが、やはり予防できるものはしたいです。都会暮らしのコと違い、田舎暮らしの犬には感染症を媒介しうるネズミなどが身近ですし、ドッグスポーツをやっているわが家としては遠征先が河川敷ということが多いので、それなりに気を使います。それに、ワクチンを接種していたのに感染症に罹ってしまったというケースを実際に見ていますから、1年以内に追加接種というのはきっちり守っています。もう一つには、万が一感染症に罹ってしまって他のコたちへの感染源にならないようにと考えることも大切だと思っています。

Bさん:
うちも9種混合ワクチンにしていますが、正直なところ9種では多いのではないかと思っています。でも、県外に一緒に出かけることが多いので、どこでどの感染症が流行するかわからないからと獣医さんの勧めで9種を接種している状況です。ほんとうはもっといろいろ詳しく教えて欲しいと思っているんですが、なんて言いますか、ワクチンに関してはどうも質問しづらい雰囲気もありまして……。ですが、近いうちにお聞きしてみようと思っています。と言いますのは、2頭はシニア犬ですし、もう1頭もそろそろシニアの域に入ります。それに、一番若いコはワクチンでアレルギー反応が出てしまいましたので、今後は抗体価を調べてもらって、必要なコに必要なものだけ接種できるようにしたいと考えています。

Cさん:
私のところは狂犬病予防ワクチンと6種混合ワクチンを1年数ヶ月ごとに1回接種しています。以前、ワクチンを7種に増やしたところアレルギー反応が出てしまい、鼻が腫れてたいへんでした。ですので、それに該当するものは抜いた6種にしています。うちもドッグスポーツを楽しんでいるんですが、大会のために日本中と言っていいくらい遠征に行きますから、可能な限り感染に対するリスク回避はしたいと考えています。それに、アジリティーフィールドやドッグランなどでは使用時にワクチン接種証明書が必要なこともありますしね。

Dさん:
うちのコの場合、狂犬病予防ワクチンは年に1回で、ジステンパー・パルボウィルス・犬伝染性肝炎(アデノウィルス1型)・犬伝染性気管気管支炎(アデノウィルス2型)のコアワクチンを2~3年に1回、毎年抗体価検査をしながら接種しています。ワクチンの内容については製造時に牛や羊を使って培養したのではないものを。その他の伝染性の病気が発生した時には、すぐに連絡をもらってワクチン接種するシステムを動物病院とつくり上げています。

Fさん(カナダ在住):
カナダでは州によって法律が違うようです。私の愛犬はにSPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals/動物虐待防止協会)から来たコなんですが、うちに引き取る前にSPCAでジステンパー・パルボウィルス・犬伝染性肝炎(アデノウィルス1型)・犬伝染性気管気管支炎(アデノウィルス2型)・パラインフルエンザの5種混合ワクチンを接種してあり、狂犬病予防ワクチンとケンネルコフについては任意でということでした。いろいろ考えましたが、その2つについては接種するのをやめようと思っています。なぜなら、うちに来た当初、下痢が2週間くらい続き、それがワクチンの副作用ではないかと思えるふしがあるからです。加えて、私は人間の医療に従事していたこともあって一般の方よりワクチンに関しては敏感な面があります。ワクチンにも効果の高いものから低いものまであり、なおかつ、ウィルスや菌類は変化していくものなので、それに合わせてワクチンを開発してもウィルスたちはさらにその上をいくように変化していく。言ってみればいたちごっこな部分があります。ウィルスや菌に対してより強い効果を求めるのであれば、当然ワクチン自体の毒性も強くなっていくというわけです。それが犬のワクチンの場合もあてはまるかというと私にはちょっとわからないところなのですが、可能性としては充分にあると思います。ですから、私はワクチンに関しては慎重派なんです。その分、免疫を高めることができるように食事や環境など内面からの健康に気を配りたいと考えています。他の感染症のワクチンに関しては、将来的に必要だという状況になった場合にはその時に考えようと思っています。

同じワクチン一つをとってもみなさん考え方がいろいろですね。特に、今の日本のワクチン事情は少々難しい感がありますので、いくつかの考え方が出てきても当然だと思います。


ワクチンは何年に1回接種すればいいの?

これまで基本的にワクチンは1年に1回接種するのが望ましいとされてきました。しかし、近年になってそれが変化してきています。2003年には「アメリカ動物病院協会(American Animal Hospital Association, AAHA)」より、犬のワクチンに関するガイドラインが発表されました。2006年に改訂版が出され、その後さらに2011年にも改訂版(*1)が出ていますが、主な要点には以下のようなものがあります。

  1. ジステンパーやパルボウィルスのようなコアワクチン(重要度の高いワクチン)では、生後6週~16週の間に3~4週間の間隔で接種をし、最後の接種は14週~16週の間に行うようにする。
  2.  そして、生後16週までにワクチンが完了した子犬は、ワクチンによる免疫をより高めるため(=ブースター効果:免疫が落ちかかってきた頃合いに再度ワクチンを接種することでより効果が高まる)、1年以内に1回追加接種をし、その後は3年もしくはそれ以上の間隔で接種する。
  3.  レプトスピラのようなノンコアワクチン(コアワクチン以外のもので状況によって接種するかどうか選択が可能)については、生後12週(または6週)までは接種しない、2回目の接種は2~4週の間隔をあけるなど、接種開始時期や間隔について感染症により多少違いがあるものの、基本的には、1年ごとの追加接種を行う(感染症の種類と状況によってはそれより少し早め)。
  4. 狂犬病予防ワクチンに関しては生後12週以降で1回接種をし、その後は1年ごと、または3年ごとに追加接種をするタイプがある(州や各自治体の必要条件による場合もある)。  

もう1つ、その後に発表された「世界小動物獣医師会(World Small Animal Veterinary Association, WSAVA)」の犬と猫のワクチネーションガイドライン(2015年改訂版)(*2)も見てみましょう。

  1. コアワクチンは、生後6週~8週で初回の接種をし、生後16週もしくはそれ以降まで、2~4週の間隔で接種をする。
  2. 最後の回を接種した後、ブースター効果を目的とする追加接種は、生後26週(6ヶ月)~52週(1歳)の間で行うことを推奨。
  3. その後は、3年もしくはそれ以上の間隔をあけて追加接種をする(3年より短い間隔で接種するべきではない)。免疫の持続期間は何年にもわたり、最長では終生持続することもあるため。
  4. ノンコアワクチンでは(犬コロナウィルスは非推奨)、初回接種時期に関して多少ずれがあるものの、概ね2回の接種をし(パラインフルエンザは生後16週以降まで2~4週の間隔で)、その後は免疫持続期間が一般的に1年であるため、1年ごとの追加接種を行う。
  5.  狂犬病予防ワクチンに関しては、生後12週で1回接種をし、生後1年で再接種。その後は、1年ごと、または3年ごとの接種を行う。再接種の時期が法令で定められている地域もある。   

このような流れによって、「(コア)ワクチンは3年に1回でいいのではないか?」という話が出てくるわけです。


動物病院の対応

飼い主を見上げる犬

「ボクのこと考えてワクチン選んでくれてる?」

日本では前出のガイドラインを取り入れているのか?と言うと、取り入れている動物病院もあれば、そうでない病院もあるというのが現状です。これまでどおり年に1回のワクチン接種を推奨する獣医師もいれば、抗体価検査をしながら3年に1回、もしくは2~3年に1回でいいと考える獣医師もいます。現時点では前者のほうが圧倒的に多いでしょう。

ここで「一般社団法人日本臨床獣医学フォーラム」における犬用ワクチネーションプロトコール(*3. 2012年5月閲覧)を見てみると、 
  • すべての犬に生ウイルス混合ワクチンおよび狂犬病不活化ワクチンを接種する。
  • 生ウイルス混合ワクチン初年度接種は、8週、11週、14週齢の3回接種を原則とする。
  • レプトスピラに対する防御が必要なものでは、8週と11週齡は生ウイルス混合ワクチン、14週齡はレプトスピラ入り混合ワクチン、17 週齡にレプトスピラのみの死菌ワクチンを接種する.または、8週齡を生ウイルス混合ワクチン、12週と15週齡をレプトスピラ入り混合ワクチン接種とする。
  • 1歳齢での再接種は、レプトスピラに対する防御が不要なものでは生ウィルス混合ワクチン、必要なものではレプトスピラ入り混合ワクチン接種とする。
  • その後の追加は、原則として3年に1回、生ウィルスワクチン接種とする。   
  • レプトスピラに対する防御が必要なものでは、レプトスピラのみの死菌ワクチンを1年ごと、あるいは山に行く前など、必要に応じて接種する。
となっていました。

これまでどおり1年に1回を推奨する獣医師に、それはなぜなのか尋ねてみたところ、「ワクチンの接種率(日本は低いと言われる)や病気の発生状況、飼育されている犬種の傾向なども違うので、海外の事情をそっくりそのまま日本に適用するのは難しい」という答えが返ってきました。

確かにそういう面もあるでしょう。ワクチンには海外からの輸入品も多くありますが、国産品もあり、メーカーや薬剤によって効力・免疫持続期間にも差がある場合があるようですから、日本の事情には適合しない部分もあるのかもしれません。また、仮に3年は有効とされる薬剤があったとしても、法律や条令、認可の問題など、何らかの行政側の環境がそれに追いついていないという部分もあり得るのかもしれません(*2)。

しかし、いっぽうで2~3年に1回のワクチン接種を実際に行っている動物病院もあるという事実があります。A動物病院に行けば1年に1回を勧められ、B動物病院では3年に1回でいいと言われたら、私たちオーナーとしてはただ迷ってしまうばかりですよね。ワクチンの内容そのものの問題、ワクチンの組み合わせの問題、動物病院の事情、メーカーの事情、国・法律の事情、いろいろあるのかもしれませんが、何より考慮されるべきは犬たち自身の健康、そしてワクチンを選択するオーナーたちに対してであると思います。そのために、近い将来に一日でも早くワクチン環境がすっきりと整理されることを願うばかりです。


ワクチンは私たちオーナー自身が選択する

ということは、現時点においては愛犬にどんな種類のワクチンを接種するか、そのワクチネーションプログラムについて、私たちオーナー自身が選択をしなければいけない現状だということです。
ワクチンで予防できる感染症

ワクチンで予防できる感染症


  1. 愛犬にとって何が必要なワクチンなのかを考える。
  2. 愛犬の健康状態を考慮する。
  3. 愛犬の年齢を考慮する。
  4. 住んでいる地域環境や、愛犬との行動範囲を考慮する。
  5. わからないことは動物病院で納得のいくまで説明を受ける。

少なくとも、動物病院で言われるままにワクチンを接種するというのはあまりお勧めしません。過剰摂取は避けたいですし、かと言って足らないのも困ります。たった1本ワクチンを接種しておけば感染症で命を落とすことはなかった…というケースもありますので、愛犬にとって最適と思える方法をお選びください。

ワクチンは接種したからといって100%感染症を防げるというものでもありません。中にはワクチンを接種しても抗体ができにくい(ノンレスポンダー)、または抗体が少ししかつくれない(ロウレスポンダー)という体質の犬もいますし、効果を過信することはできません。ですから、接種をした後も病気感染には注意をはらいましょう。

愛犬連れでの旅

愛犬との行動範囲や地域性なども考えてワクチン選びを:(c)clover/a.collectionRF/amanaimages


さらには、こうした感染症の他にもエキノコックス(主に北海道)やバベシア症(以前は西日本で発生することが多かったが、現在では他地域での発生もある)など地域性のある病気も存在しますので、旅行やドライブに出かける際などはご注意くださいませ。


出典及び引用文献、参考資料:
(*1)VETERINARY PRACTICE GUIDELINES, 2011 AAHA Canine Vaccination Guidelines / Members of the American Animal Hospital Association (AAHA) Canine Vaccination Task Force:Link V. Welborn, DVM, DABVP (Chairperson) et al. / American Animal Hospital Association, JAAHA | 47:5 Sep/Oct 2011
(*2)犬と猫のワクチネーションガイドライン(2015年改訂版)/世界小動物獣医師会(World Small Animal Veterinary Association, WSAVA)、ワクチネーションガイドライングループ(Vaccination Guidelines Group, VGG)
(*3)「一般社団法人日本臨床獣医学フォーラム」公式サイト/犬用ワクチネーションプロトコール


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