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シェルティーの特徴や性格、寿命や飼育法など基本情報を解説!

優雅さと運動性能をあわせもつシェットランド・シープドッグ、通称「シェルティー」。繊細ゆえに知能も高く、家庭犬としても申し分ありません。そんなシェルティーのルーツはどこにあるのか、気質や飼育のポイント、気をつけたい病気などの基本情報をお伝えします。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

シェットランド・シープドッグ、通称「シェルティー」ってどんな犬?

シェットランド・シープドッグ 、通称シェルティーの特徴

ラフ・コリーとたいへん似ているが、単純に小型化した犬ではない



シェットランド・シープドッグ(Shetland Sheepdog)の通称は「シェルティー(Sheltie)」。フランス語では意味は同じとなる「ベルジェ・デ・シェットランド(Berger des Shetland)」と呼ばれます。かつては「シェットランド・コリー(Shetland Collie)」「ミニチュア・コリー(Miniature Collie)」「リリプシャン・コリー(Lilliputian Collie)」「フェアリー・ドッグ(Fairy Dog)」などという呼び名も。しかし、シェルティーはラフ・コリーを単に小型化した犬ではありません。
 
<シェルティーについての目次>
 

シェルティーの歴史

シェルティー(セーブル)と桜

「シェルティー」という犬種になる以前の起源自体は、たいへん古いとされる


人々の生活を助ける良き働き手として活躍していた犬種には、古き時代の記録があまり残されていないことが多々ありますが、シェルティーもそのひとつです。よって、シェルティーの歴史には憶測も入り交じることは仕方ないところで、一般的には以下のようなことが伝えられています。

犬種名を見て容易に想像できるように、シェルティーの故郷はイギリス北端のさらに先、北海に浮かぶシェットランド諸島です。夏でも最高気温は14℃~15℃程度、北海から吹きつける風は強く、荒涼とした風景が続く土地で、植物や作物を育てるには厳しい条件が揃っているといいます。そうした環境が影響し、また人々がそう望んだのか、シェットランド諸島ではシェットランド・ポニーに代表されるように、馬や羊も小型のものが存在することが知られています(羊はスコットランドの羊の半分ほどの大きさ)。

当然の如く、その昔には馬や羊と同様に小型の犬がいたそうで、それは「トゥーニー・ドッグ(Toonie Dog)」、または「ピーリー・ドッグ(Peerie Dog)」と呼ばれていました。

島国という環境上、その犬の存在は外部に知られることはあまりなかったようですが、スカンジナビア半島、オランダ、スコットランドなど周囲の国々の漁船団がシェットランド諸島を訪れるようになると徐々に知られるようになったといいます。

そして、ある時スコットランドからやって来た船(ヨットとの記述がある)にブラック&タンのキング・チャールズ・スパニエルが乗っており、その犬(たち?)がトゥーニーと交雑したのでしょう。後のトゥーニーにブラック&タンの毛色が生じたことからも、大きな影響を与えたと言われています。

シェットランド諸島の人々を描いた古い絵に描かれているトゥーニーと思われる犬の姿は、現在のシェルティーとは遠く、K・C・スパニエルと言われれば似ているようにも思える、どちらかというと愛玩犬タイプの印象を受けます。
 

嬉々として走るシェルティー

写真はガイドの愛犬。北海からの風が強く吹くシェットランド諸島にルーツがあるせいか、愛犬は風の強い日が一番元気だった


その後、グリーンランドの捕鯨船に乗ってやって来た猟師がある犬を連れていました。それはグリーンランドの地犬で「ヤッキ・ドッグ(Yakki Dog)」、または「アイスランド・ドッグ(Iceland Dog)」と呼ばれる犬でした。古い写真で見るその姿は、どこなくシェルティーに似ており、被毛が豊かな北方スピッツタイプの犬で、ヤクを追うのが仕事だったとか。

そのヤッキ・ドッグがトゥーニーと交雑したのではないかというのが有力な説になっています。島の生活では羊のみでなく、馬や牛を守ったり、逆に家畜が荒らさないように作物を守ったり、時には子どものお守りなど、犬に多才な能力が求められたため、島の人にとってはヤッキ・ドッグの血が必要で、積極的に繁殖がなされたのかもしれません。

やがて、現在でも高級品として知られるシェットランドの羊毛をイギリス本土に売るようになった島の人たちは、スコットランド・コリー(ラフ・コリーの祖と考えられ、当時はボーダー・コリーに近い姿だったらしい)の存在を知ることになります。このコリーは素晴らしい能力をもっていたものの、シェットランド諸島で使うには大きすぎたため、トゥーニー・ドッグと交配して独自の犬をつくろうとしたことがシェルティーの原型になっていると考えられています。

はっきりした資料がないに等しいのでなんとも言えませんが、これらは18世紀~19世紀にかけてのことではないかと思われます。
 
シェットランド諸島産の羊毛で作られているシェルティーの刺繍をあしらったセーター

シェットランド諸島産の羊毛でつくられているセーター。前面にはセーブルのシェルティーの姿が刺繍されている。何年経っても型崩れせず、着るとほんとうに温かい。ガイドのお気に入りのセーターである(ガイド所有)


シェットランド諸島の犬がイギリス本土に渡ったのは、おそらく1800年代後半頃かと思われますが、漁師によって持ち込まれたのに始まり、旅行者やイギリス海軍の兵士たちもそれに続きました。子犬が売れることに気づいた島の人たちは、以後、ペット用として他犬種(ポメラニアンという説も)とも交配し始めたといいます。

しかし、1908年、地元のラーウィックに犬種クラブが創立され、翌年にはスコットランドにもクラブが創立された頃には、以前の姿とは変わっていたため、そしてドッグ・ショーへの意識もあってか、ラフ・コリーの血が入れられた時期があったそうです。1909年に公認犬種となりましたが、1919年くらいまではラフ・コリーとの交配があったようです。

なお、犬種名は当初「シェットランド・コリー」としていたものの、コリー・クラブからの反対があり、「シェットランド・シープドッグ」に改名したといういきさつがあります。日本に初めてシェルティーが入ったのは、昭和30年(1955年)のことでした。
 

シェルティーのサイズと寿命

体高:オス34.5cm~39.5cm メス33cn~38cm
体重:6.8kg~11.3kg程度
平均寿命:12~14歳程度

実際にはこの数値より大ぶりの犬もいます。かつてはサイズにもばらつきがあったため、ことドッグ・ショーにおけるサイズ規定には少々厳しい面も。近年では、以前に比べ、小型化の傾向にあります。
 

シェルティーの毛色

走ってこそなお美しいシェルティー

国内で一時シェルティーが人気になった頃はセーブルが目立ったが、初期の頃は黒い毛色が主流で、セーブルは逆に貴重であったという話もある


いわゆる茶色系のセーブルはゴールドに見える薄めのものから濃いめのマホガニーまで色調が豊かで幅がありまず。特に、ゴールデン・セーブルはラフ・コリーには見られない毛色だとされます。

次いで、黒・タン(茶系)・白の組み合わせになるトライカラー。銀青色と黒が入り交じった大理石模様を示すブルーマールは、当初なかった毛色で、ラフ・コリーとの交配によって生じた毛色だと考えられています。

そして、2色の組み合わせとなるブラック&ホワイト(=バイブラック)とブラック&タンもあります。ブラック&タン以外の毛色では、通常、ブレーズ(両目の間から鼻すじにかけて通る白い模様)があり、首周り、胸、足先、しっぽの先などは白い毛色となります。
 

シェルティーの体の特徴

なんと言っても特徴的なのは、毛量が豊かでエレガントな容姿でしょう。特に首周りから胸にかけの被毛は独特のシルエットを描き、脚の飾り毛もゴージャスです。下毛は密で、寒さや雨から体を保護するとともに、被毛の豊かさをより際立て、ふさふさのしっぽはその形状からフォックス・ブラッシュと呼ばれます。シェルティーらしい被毛になるまでには2~3年はかかることでしょう。

マズル(口部分)は長めで、先細り。耳は先端の4分の1程度が垂れるよう、子犬の頃の一定期間、テープ状の錘が付けられる場合もあります。牧羊犬として仕事をしてきただけに、美しさのみでなく運動性能もたいへん高く、俊敏で、アジリティーのようなドッグスポーツで活躍する犬も多くいます。
 

シェルティーの性格・気質

川のほとりで散歩を楽しむシェルティー

「そんなに気にしてくれなくてもいいよ」と言いたくなるくらい、シェルティーには飼い主の気持ちを先読みしてくれるような繊細さがある


家族に対しては深い愛情を示すものの、他人に対して少々素っ気ないところがあるのは日本犬にも似た感じがしますが、それは牧羊犬として飼い主家族と生活をともにしてきたからこそと思います。その分、飼い主とのつながりがより深くなるのではないでしょうか。

たいへん繊細で、人の気持ちや行動を先読みするようなところがあり、それゆえに高い知性を感じさせます。しつけやトレーニングに対する反応も速く、工夫や努力次第でいろいろなことを覚えてくれるでしょう。
 

シェルティーの飼い主に向く人

多くの人に向く犬種とは思いますが、運動性能も高く、牧羊犬として仕事をしてきた犬種でもありますから、十分な運動をさせることができ、犬と一緒に何かを楽しめる人、楽しみを与えてあげられるような人がより向くでしょう。

繊細である分、扱いが荒い、怒りっぽいという人には向かない、と言うより、折角の犬のよさをダメにしてしまう気がします。また、定期的なカットは必要ないものの、被毛が豊かなので、お手入れにはそれなりに手間もかかります。それを面倒くさがらずにできることは必須です。
 

シェルティーの子犬を選ぶ際には

シェルティーの子犬

子犬は成長段階の途中でキツネのように細く”化ける”時期がある。成長すると平均的にオス犬のほうが毛量豊か


可能であれば両親犬、もしくは母犬を見せてもらえると理想的です。子育て中、母犬が落ち着きないようであると、子犬にもそれが影響している可能性があります。また、性格は遺伝しますので、母犬の様子を見ることは子犬選びの大きな参考になります。

手をたたいたり、オモチャを見せたりした時に寄ってきて、しっぽを振ったり、手を舐めてくるくらいの子犬であれば性格的にも明るく、扱いやすい傾向にあると考えられます。怖がって寄ってこない子犬はシャイな傾向にあり、また抱っこした時に極端に嫌がる、噛んでくるような子犬は将来的に扱いに少々苦労するかもしれません。何より、性格の安定や問題行動の予防にもつながる社会化に十分配慮されて育った子犬を選ぶのが一番でしょう。

その他、目ヤニが付いていないか、お尻が汚れていないか、歯茎はピンクか、皮膚に異常はないか、痩せ過ぎていないか、背中は真っ直ぐで立ち方や歩き方に異常はないかなど、健康度もチェックを。抱っこした時に子犬にしては重みを感じるくらいのほうがよいと言われています。

なお、子犬を迎える時には、万一何かあった時に対処しやすくなりますし、なるべく午前中に連れて来るようにするといいでしょう。
 

シェルティーの飼育ポイント

トライのシェルティー

中には興奮しやすい、テンションが上がりやすい性格の犬もいる。その場合、しつけをする際には少し抑え気味に褒めるなどしたほうがいいだろう


長い被毛のお手入れを怠ると毛玉ができやすく、それを放置すると皮膚に炎症を起こしてしまうこともあります。こまめなブラッシングを心がけましょう。ただし、やり過ぎると逆に健康な毛も抜いてしまい、毛伸びが悪くなることもありますのでご注意を。

時々、暑い時期にライオン刈りをしているシェルティーを見かけますが、あまり頻繁に繰り返していると毛色が変化する、毛伸びが悪くなって冬に毛が伸びなくなることもあります。どうしても刈りたいのであれば、ガイドとしては、毛を梳いてあがるほうがいいのではないかと思っています。

運動に関しては、可能であれば羊を追うのに似たような運動をさせてあげることができれば理想的ですが、現実的には難しいでしょうし、代わりに全身を使って楽しめるような運動や遊びを。時には、宝物探しやマテをかけて鬼ごっこなんていうのも楽しいかもしれませんね。

しつけをする際は、繊細な分、強く叱り過ぎる、力で言うことをきかせるなどすると萎縮させ、折角の明るい性格を潰してしまうことになりかねません。興奮しやすい性格の犬では大袈裟に褒めると余計興奮することがありますので、抑えめに褒めるなど、犬の性格に合わせた対応も必要でしょう。

また、シェルティーは太りやすい犬種でもありますので、体重管理はしっかりと。なお、ハーダー系のシェットランド・シープドッグやボーダー・コリー、ラフ・コリー、スムース・コリー、オーストラリアン・シェパードなどの犬では、体内に入った薬物・異物が脳や脊髄などに侵入しないように働く作用のあるMDR1遺伝子の欠損によって、フィラリア予防や疥癬、毛包虫症などの治療に使用されるイベルメクチン製剤に対して感受性が高いことが以前から知られています。
 
フィラリア予防に使用されるイベルメクチンは量としては少ないという話ではありますが、飼い主としては気になるところ。予防や治療の際には動物病院で相談してみるといいでしょう。
 

シェルティーで気をつけたい病気

腫瘍
シェルティーは腫瘍ができやすい傾向にある犬種のひとつとされます。こと被毛が厚い分、健康チェックを心がけているつもりでも、しこりを見逃してしまうこともありますので、特にお尻周りや首周りなどは入念にチェックを。

甲状腺機能低下症
甲状腺機能の異常により、甲状腺ホルモンが不足することから、元気がない、痒みのない脱毛(特に尻尾)、体重増加などの症状が見られる。

コリー眼異常(コリーアイ)
主にコリー系の犬種に見られる眼疾患で、視力障害により、物にぶつかる、歩きたがらないなどの症状が見られる。重度になると失明する場合も。子犬の頃に発症することもある。

進行性網膜萎縮症
網膜の光を受容する部分の異常によって、夜盲症の症状からはじまり、進行すると失明することもある遺伝性の眼疾患。

など

かつては「フェアリー・ドッグ」とも呼ばれただけに、外面も内面も妖精のような犬。それがシェルティーです。

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注:犬は生き物です。性格、気質、体高、体重など、人同様に個体差があることをご承知おきください。

参考資料:

(#1)系統読本 シェットランド・シープドッグ/栗原進/誠文堂新光社
(#2)愛犬の友<犬種別>シリーズ シェットランド・シープドッグ/愛犬の友編/誠文堂新光社
(#3)コリーとシェルティーCollie & Sheltie 創立三十周年記念改訂版/社団法人日本コリークラブ
(#4)対談 シェットランド・シープドッグの飼い方/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社
(#5)DOG TALES Shetland Sheepdog in Scotland/Sachiko Yamakita/ミロプレス、星雲社
(#6)楽しいシェットランド・シープドッグ ライフ/愛犬の友編集部編/誠文堂新光社
(#7)The Shetland Sheepdog / Pat Ferrell, ASSA Historian / AMERICAN SHETLAND SHEEPDOG ASSOCIATION
(#8)Paws For Thought : what’s The History of The Sheltie Breed? / Becky Turner / SHELTIE PLANET

など

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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