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画質に、日立の新境地を見た!
今回の視聴は日立製作所のテクノパークヨコハマ内で行いました。目の前に置かれたUT47-XP770Bは、9月26日の発売まで一カ月を残したプリプロで、外装の一部は輸出仕様でしたが、映像は国内仕様そのものという個体でした。液晶テレビにはVA方式(シャープ、ソニー、東芝の一部)とIPS方式(パナソニック、日立、東芝の一部)があり、UT47-XP770はIPS方式の液晶テレビです。前者はコントラストがよく動画特性が改良しやすく、後者は視野角が広い特徴があります。
UTシリーズは当初、32V、37V、42Vの3サイズで完結でしたが、ここへ来て47Vが追加されたのは、販売の好調と超薄型が作れる47V型IPSパネルの目処が立ったからでしょう。現在IPS方式のパネルを量産するメーカーは、IPSアルファテクノロジー、、日立ディスプレイズ、LG電子など数社存在します。日立はUT47-XP770のパネルメーカーについては公表していません。
初の47V型の大画面液晶テレビを手掛けるに当たって、日立はプラズマ方式の技術陣が開発を担当し、長年手掛けたプラズマ方式とも42V型までの液晶方式とも違った取り組みを行ったと語ります。
42Vまでの液晶の場合、画面がさほど大きくなく、ややドンシャリ(黒を早目に潰し白は目一杯明るくした、コントラストの両端を強調した画作り)気味な映像がかえって効果的なのですが、47Vの大画面になるとニュートラルで階調重視の画質でないと、映像がバラバラになってしまいます。これまで日立が力を注いでいたプラズマ方式は自発光ですから黒輝度が一定です。それに対して、液晶方式はバックライトコントロールとコントラストの設定でそれが変わります。
UT47-XP770の場合、特にシネマティックモードにおいて、単純に黒を早目に引き込む(潰す)のでなく、黒側の階調、例えば、半分蔭になった人物の表情などをいかにニュアンス豊かに表現するかをテーマに置いたのだそうです。
私は仕事用に日立のプラズマテレビP50-XR02を使っていますが、映像設定の中にあるコントラストの切り替え機構(リニア/ダイナミック)はほとんど使いません。ダイナミックはそれこそドンシャリな画になって、およそ映画に相応しくないからです。
「切り替えてみましょうか?」と技術の青木氏の勧めでUT47-XP770のコントラスト切り替えをダイナミックにしてみると、これがドンシャリどころかその逆で、暗部が潰れずに微妙な調子が鮮明に浮かび上がるのです。つまり、従来のコントラスト強調から逆の、階調の表出を目的とした機能になったわけです。
これはガンマカーブ(注)の特性を映像に合わせて作り直しているのですが、青木氏は「既定の設定を選んで当てはめるのでなく、映像の特徴を都度分析して最適の補正を無数に作り出すやり方です。プラズマテレビでずっとやってきたことの完成形がこれなんです」と胸を張ります。そう言われれば、このUT47-XP770の映像は、液晶方式に見られる明るく精細感がある反面、ギラギラした人工的な映像でなく、落ち着いていて滑らかなのです。
液晶方式が不得手とするタイプの映像、例えば明るい窓を背負った逆光や半逆光撮影で捕らえた人物などの場合、従来の液晶ではコントラストが適切にコントロールできず、カメラの露出が取れていないように人物が不明瞭になる場合が多いのですが、UT47-XP770の場合は、明暗のコンビネーションがコントロールされていてバランスがよく、人物がしっかりと描写されています。液晶方式とプラズマ方式の長所を併せ持つ画質といったら褒めすぎでしょうか。
単なる「超薄型」でなく、価値創造に果敢に挑戦するUTシリーズ。テレビの新しい佇まいが日常の景色を変える |
初の47V大型大画面ということで、せっかくUTシリーズで新境地を拓いたのに、画質の粗い製品になったら困るな、という思いを抱いて視聴に臨みましたが、全くの杞憂でした。むしろ、日立のテレビの中で最も映像のバランスがよく丁寧に作られたテレビがUT47-XP770でした。しかも、超薄型で録画機能まで付いています。ポストオリンピックのこの秋、付加価値創造という新展開を迎えた薄型テレビのトップバッターに相応しい優秀製品と言えるでしょう。
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