「いくら」といっても大違い。
正真正銘、銀毛鮭いくら。
産卵60日以上前の鮭を「銀毛鮭」を呼ぶ。このころの鮭が持つ卵こそが、絶妙の食感! |
ひとことでいうなら「コクと風味」。以前、私が編集長を務める雑誌「自遊人」編集部では各地で「名品」といわれるいくらを50品ほど取り寄せて味比べをしたことがあるのですが、中村家のいくらはそのなかでもダントツの味。粒のなかから飛び出る卵の味と香りが抜群で、卵の皮膜がほとんど口に残らず溶けてしまうのも特徴です。
「鮭は鮭でも味は千差万別。産卵が近づくと身はもちろんですが、卵が固くなって味がなくなっていきます」
鮭は産卵60日以上前のものを「銀毛鮭」、産卵30日前~5日前のものを「ブナ鮭」「アキアジ」などと呼ぶのですが、いくらとして美味しいのは圧倒的に産卵60日以上前の「銀毛鮭」。まだ沖を泳ぐ鮭の卵は適度な張りがありつつもやわらかく、味も濃厚なのです。ちなみにいくらって表面の皮膜は固いものだと思っていませんか? 固いのは「ブナ鮭」「アキアジ」と呼ばれるものの卵。産卵が近づけば近づくほど固くなるので、当然ながら市場価値も低く、価格も安いのです。でも中村家で使用するのは絶対に「銀毛鮭」のみ。しかもいくら作りはすべて手作業です。
素材はもちろん、料理人の腕前も肝心!
職人技だからこそ生み出せる旨さ
「銀毛鮭のいくらは、皮膜にすっぽり覆われて、腹を開けるまで粒がきれいに保たれている。それを冷やした指で押し出すようにばらしていくんだけど、ほかのものと比べて柔らかく潰れやすいから、気が抜けないんだよ」 素材の味を最大限に生かすには、料理人のワザも不可欠なのだ。 |
作業は手早く、誰でも簡単なように見えます。でも実際に自分の手で銀毛鮭の腹子をしごいてみれば、やわらかくデリケートな卵は潰れてとろけてしまいます。名人芸とはこういうものなのです。
さらにびっくりするのが色と艶、そして味。通常、味付けいくらには発色剤や保存料など、多くの添加物が使われていますが、このいくらは品質が高いため、発色剤は不要。化学調味料もいっさい使っていません。品質の低いいくらは卵の味が薄いため、旨みを出すために化学調味料を添加しているものがほとんど。一般的に販売されている商品のラベルを見るとそこには「調味料(アミノ酸等)」とありますが、それが化学調味料なのです。
「そんなもの使わなくても、本当に品質の高いいくらなら、十分すぎるほど旨みがあるんだよ」
口に含むと、適度な張りを感じる皮がぷちゅっとやわらかく破けて、旨みいっぱいの濃厚な汁がトロッっと溢れます。あ~幸せ。
さて、次のページではいよいよこの「銀毛鮭いくら」の価格、そしてとっておきの情報を紹介しましょう。