「いくら」とひとくちにいっても品質はピンキリ。ということは、味もピンキリなわけで……。今回は、飛び跳ねるほど美味しい、それこそいくらのように目んたまが丸く飛び出るほど美味しい極上の「いくら」をご紹介しましょう。

三陸の小さな町に
知る人ぞ知る名店あり!


中村家いくら
釜石の酒の水揚げは8月末から年始だが、銀毛鮭が獲れるのは11月末まで。ちなみに銀毛鮭とはシロザケのこと。
岩手県釜石市。ここに1軒の知る人ぞ知る名店があります。その名を『中村家』。あの料理の鉄人、道場六三郎氏や、関西料理人の雄、神田川俊郎氏とも親交が深く、そのふたりが一目置いている店といえばわかりやすいでしょうか。その味はまさに全国レベル。その味をひとたび体験すれば、誰もが「なぜ、こんな小さな港町に?」と首をかしげるに違いありません。

もともと釜石市は鉄の町として有名。安政4年には日本初の洋式高炉が完成し、新日本製鐵釜石製鉄所の全盛期には(昭和38年頃)、県下第二位という人口を誇る町でした。しかし昭和63年には製鉄の火が落とされ、人口も減少。釜石は観光地でもなければ、けっして賑やかな町でもありません。

故郷の海の豊かさを再発見。
兄弟料理人が受け継ぐ名店


中村家いくら主人
中村家いくら主人
釜石で父が興した店を継ぐまでに、兄(写真上)は新橋・第一ホテルなどでの修業を経てフランスへ渡った経歴も。弟(写真下)も同じく一度は故郷を離れて東京で日本料理の腕を磨いていた。
そんな町になぜ店を開いたのかといえば、それは「三陸の海の豊かさを東京で再発見したから」。実はこの中村家は兄・中村勝泰さんと弟・島村隆さんの2人の料理人が板場に立つ店なのですが、その2人は口を揃えてこういいます。

「東京で修業すればするほど、三陸の海の豊かさに気が付きました。ある日、築地に凄い魚が揚がった、というので見に行ったのです。そしたら、なんてことはない。子供の時によく見ていた『おおめ鱒』でした。東京でいう『鮭児(けいじ)』です。そんな経験を繰り返すうちに、故郷で店を盛り立てていくことが自分たちの使命なのではないかと思うようになったのです」

そんな中村家の名物が銀毛鮭の「いくら」。夏には「がぜ(うに)おにぎり」、「雲丹と鮑の海草蒸し焼き」、通年通しては「三陸海宝漬」などの名物料理がありますが、とくに大評判なのが「いくら」なのです。


次のページでは中村家のいくらが他のいくらと「何が違うのか?」、その決定的違いをご紹介します。