味覚の秋。松茸や栗、そしてお米。山や里の幸も豊富ですが、海の幸も美味しいシーズンがやってきました。今回は、日本海の海の幸を求め、石川・金沢へ美食の旅。「旨い! 安い! 新鮮!」が信条の「市場食堂」をご紹介します。
美味しい「市場ごはん」の前にまずは「市場」のマメ知識
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金沢港地方卸売市場のセリ風景。金沢港所属の船が水揚げする魚を中心に、石川県中の魚を扱う地方市場。“朝ゼリ”“夜ゼリ”のうち、賑やかなのは夜ゼリで、競り落とされた魚はすぐさま各地の中央市場へと運ばれる。残念ながら一般の見学は不可。 |
今回のテーマは「市場ごはん」、「市場食堂」。せっかくなので、まずは「市場」について少しご説明しよう。卸売市場とひとくちに言っても「産地市場」と「消費地市場」の2つがあることをご存じだろうか。「産地市場」とは主に漁協や漁連が開設するもので、生産者(漁業者)から委託された魚を産地の仲卸業者へセリ等で販売する。一方、「消費地市場」とは、産地市場で競り落とされた魚が持ち込まれる市場で(主に大都市の中央市場)、消費地の仲卸業者へ販売される。ということで、ひとくちに市場食堂と言っても、「産地市場」と「消費地市場」では食べられる魚が違う。その地で揚がった魚を食べたければ産地市場に、全国の旬の魚を食べたければ大都市の中央市場にでかけるのが正解というわけだ。
地の魚がズラリ。これぞ市場食堂の醍醐味。
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「刺身盛り合わせ」1,000円。包丁のたち具合、盛りつけ。とても市場食堂の主が作ったとは思えない美しさ。この日は(取材は8月中旬)、スズキ、カジキの昆布締め、インドマグロ、ヤリイカ、ガンドの5種。実は取材時は、底曳き網漁が禁漁中。一年でいちばん魚がない時期だったが、それでもこれだけ揃う。「9月からはもっと石川らしい魚を使いますよ」。 |
さて、今回ご紹介するのは、『金沢港地方卸売市場』。こちらは「産地市場」で、金沢港に揚がった魚に加え、輪島(わじま)、七尾(ななお)など能登(のと)方面からの魚が集まる。そして、今回の主役。その市場にある食堂が『金沢港船員厚生食堂(かなざわこうせんいんこうせいしょくどう)』だ。こちらで食べられる魚も地の魚中心。ホワイトボードにはガンド(ブリの幼魚)、スズキ、ヤリイカなど、地の魚の名前が並ぶ。しかも、さすがは食文化レベルの高い金沢である。写真の刺身盛りを見れば一目瞭然、その包丁さばきは市場食堂とは思えないレベルの高さだ。
次のページで、『金沢港船員厚生食堂』の魅力をさらに詳しくご紹介します。