サンタより、北極から愛を込めて 『Father Christmas Letters』
J.R.R.Tolkien著『Father Christmas Letters 』(Houghton Mifflin) |
トルーキンは何と23年間もサンタクロースのふりをして子どもたちに手紙を書き続けました。内容も非常に創造的で、工夫が凝らされており、素晴らしいものでした。
彼が初めてサンタクロースとして手紙を書き始めたのは1920年、長男のジョンが3歳の冬。その後、マイケル、クリストファー、プリシラの4人の子供の父親になった彼は、1943年まで毎年子供たちに手紙を送り続けます。
手紙の内容はファンタジー小説そのものです。イラスト付きで説明されるサンタの家は、高い崖の上に建てられたドームで、星やライトに照らされてとても幻想的。お手伝い係のポーラーベアはドジでおっちょこちょいで、毎年問題ばかり起こします。それをぼやく手紙の端っこには、「サンタだって寝てばっかり!」とポーラーベアの落書きがあったりします。
1932年の手紙には、ポーラーベアが洞窟に迷い込んだ事件が書かれています。その洞窟には悪賢いゴブリンが住んでいたり、彼らの天敵であるノームがいたり……『ロードオブザリング』のワンシーンを彷彿とさせるお話が展開しています。
I haven't heard from John this year. I suppose he is growing too big...
(今年はジョンから手紙がないね。もう大きくなっちゃったからかな。)
こんな一文もあったりして、子供の成長を寂しく思う気持ちは万国共通なんだなと感じます。子供に宛てた手紙なので、分かりやすい英語です。
タイトルの Father Christmas とは、英語でサンタクロースのこと。サンタクロースにはたくさんの呼び名があり、手紙の中にも Father Nicholas Christmas や Nicholas Christmasが使われています。