無形文化遺産ってなんだ?
無形文化遺産保護条約では、無形文化遺産とは「慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるものをいう」と定義されており、次の5つの分野を定めている。・口承による伝統及び表現
・芸能
・社会的慣習、儀式及び祭礼行事
・自然及び万物に関する知識及び慣習
・伝統工芸技術
これらについて、「人類の無形文化遺産の保護に対する普遍的な意思及び共通の関心を認識し、 社会(特に原住民の社会)、集団及び場合により個人が無形文化遺産の創出、保護、維持及び再現に重要な役割を果たすことにより、文化の多様性及び人類の創造性を高めることに役立っていることを認識し」(無形文化遺産保護条約前文より抜粋)て、条約を採択するものとしている。
ただし、上記に該当する無形文化遺産ならなんでもよいというわけではなくて、「無形文化遺産の保護に関する条約」というとおり、保護に値し、保護しなければ消滅の危機にあるような物件が対象となる。ちなみに日本からは能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎の3つの伝統芸能が傑作宣言をされている。
無形文化遺産保護条約の意義
歌舞伎のイラスト |
原因はいくつか考えられるが、発展途上国にとって保護や管理体制を整えるのは資金面や治安維持の点から簡単ではないことや、ヨーロッパの石の文化のように文明を形にして残すという発想があまりなかったことから歴史ある文化遺産がもともと少ないことなどがあげられる。
大地とともに生きてきた文化にとって大切なのは人間が造る建築物などではなく、この大地であり、太陽であり、雨であり、他の生き物であって、それは祈りや祭礼、慣習などの形で残され、主に口承によって伝えられた。つねに自然と戦ってきた西アジアの砂漠発の文明とは根本的に発想が異なるのだろう。
この世界には様々な人がいて、様々な考え方がある。もしこの世界にひとつしか考え方や価値観がなかったら、人間は心を持つこともなく、ただの反射機械でよかっただろう。そういう意味で無形文化遺産を保護することは、人間を守ることにもつながるとてつもなく大きな意義を持つ。
自分たちの文化を守るという意味で、無形文化遺産保護条約はアフリカをはじめとする先進国以外の国の支持が非常に強く、現にこれまで3回発表されてきた傑作の宣言にも途上国の無形文化遺産が数多く並んでいる。彼らにとって、今後無形文化遺産保護条約は世界遺産以上に重要な意味を持つことになりそうだ。
無形文化遺産とは何か? これを考えることは、「人間とは何か?」を考えるのと同じとても重要な意味を持つ。ぜひみなさんもこれらの無形遺文化産に触れて、人間について考えてもらいたい。
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